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VR/ARの未来

「新しいスポーツ市場を生み出す」。ARスタートアップmeleapのCEO福田浩士氏が語る未来予想図

株式会社meleap

「サッカーの市場規模は世界全体で数十兆円にもおよぶ。僕たちmeleapはその規模の新しい市場開拓を考えています」

こう力強く語るのは、ARスタートアップ、株式会社meleap福田浩士CEOだ。福田氏は東京大学大学院を修了後、リクルートへ就職。その後、2014年1月に身体を拡張することをテーマに掲げてmeleapを設立し、テクノスポーツ第1弾となる「HADO」を開発。国内外で新スポーツ市場の創出に向け邁進している。

現在、HADOは日本国内だけでなく、アメリカ、フランス、中国、シンガポールなど世界各国から注目を集めている。2016年に続き2017年の冬にも「HADO WORLD CUP 2017」が開催され、福田氏が描いたビジョンを現実にする最初の一歩を踏み出したといえる状況だ。「新しいスポーツ産業を立ち上げる」。福田氏が掲げたこのビジョン、生活に溶け込むARの源泉となったものは何か。HADOはどのように普及しているのか。その秘密を解き明かすため、meleapのオフィスを訪ねた。

新技術が生み出す新しいスポーツ市場、それが「テクノスポーツ」

21世紀を代表する、次世代のスポーツになる。HADOにはそう予感させるインパクトがある。HADOはAR用ヘッドマウントディスプレーに腕の動きを検知するアームセンサーを装着し、体を動かしながら技を繰り出すテクノスポーツだ。福田氏は「アナログスポーツ、モータースポーツの次に、テクノスポーツの時代が来る」と語る。

余談だが「テクノスポーツ」とは同社が生み出した造語である。「ゲーム開発会社と勘違いされたくない」という発想からも、同社が描いているビジョンはゲームではなく、あくまでも新スポーツの創出であることが分かる。

では、なぜテクノスポーツという新市場創出に踏み切ろうと考えたのだろうか。

「幼少期から『身体の拡張』に興味を持っていました。超能力を使いたい、自由に空を飛び回りたい、と人間の身体の可能性について想像を膨らませていました」

普通に考えればばかげた発想かもしれないが、AR、AI、ロボティクスなど技術は急速に進化している。「この技術を活用することで今まで世界中の人が夢見た憧れを実現できるはずだと考えました。HADOも『かめはめ波』を撃ちたいという思いからアイデアを考え、形にしたものです。そして、これを単なる体験やゲームで終わらせるのではなく、競技として成長させることで、生活に根付く文化にしていきます」

自動車が生まれ、モータースポーツができたように、新しい技術で必ず新しいスポーツ産業が生まれてくるはず。それを「テクノスポーツ」と名付け、市場を切り開いていく。

前述したとおり、HADOは現在、アメリカやフランス、中国、シンガポールなど国内の枠を飛び出した展開を見せている。設立間もないスタートアップの製品に世界中が飛びつく格好だ。この背景にはエンターテインメント施設側の思惑が関連していると福田氏は読み解く。

「エンターテインメント施設は、常に新鮮さを探しています。HADOについても、先方から問い合わせが来るケースが大半です。これまでのエンターテインメントとは一線を画す、新しいユーザー体験に興味を持っていただけているという自負があります」

常に新しいものを発掘し、提供するのが施設側の戦略ならば、過去に類を見ないテクノスポーツに興味を持つことも合点がいく。HADOは大人から子どもまで一緒に、かつ直感的にプレーできる点が強みだという。海外進出の第一歩となった上海ジョイポリスについても、meleap側からアクションを起こしたというわけではなく、KDDIが主催したアクセラレータプログラム「KDDI ∞ Labo」を通じて声がかかったのだとか。ただし、国内と海外では商習慣が異なる。この点については試行錯誤をした結果、国・地域別の戦略を見いだしつつある。

「例えば、アメリカはクオリティー重視。高単価であっても、本当に面白ければ導入されますし、ユーザーは遊んでくれます。一方で、中国は低価格化が鍵を握ります。PDCAを回しながら価格帯を変えたりすることで、おのおのの地域にあわせた戦略を持ち、世界的な普及に向けて動いていますね」

既存の市場に乗っかるのではなく、新しいエコシステムを自ら立ち上げる

福田氏の話を聞いていて1つの疑問が浮かんだ。ここ最近「VR元年」というキーワードを耳にすることも多く、VRを主軸においたアミューズメントスペースが次々とオープンしている。既存のアトラクションと組み合わせるだけでなく、人気IPとコラボしたVRゲームにも注目が集まっている。ただし、ARを主戦場に戦うHADOに近しいコンテンツはいまだ登場していない。世界展開も望める可能性を秘めている場になぜ、各社は足踏みをするのだろうか。

「技術難度ももちろん高いのですが、なにより『市場がない』という点が大きいと思います。『Pokemon GO』のようにスマートフォンでもARは使えますが、HADOとは体験の質が全く異なります。体を動かして空間を使う。生活に溶け込むようなARのプラットフォームはこれまでに存在していません。そのため、参入する企業が少ないのだと思います」

そう遠くない将来、日常にARが溶け込んでいく。VRと異なり、あらゆる空間をそのまま利用できるARには、どこでも楽しめるという強力な利点がある。ここにテクノスポーツとeスポーツとの違いもあるという。

「テクノスポーツは従来のスポーツと違い、あらゆる人が参加できる可能性が高いと考えています。ずば抜けた身体能力や反射神経がなくとも、老若男女が楽しめる。複雑なルールはなく、見れば直感的に理解できる。プレーヤー・観客の圧倒的リーチ数がテクノスポーツの強みだといえるでしょう。僕たちは『ARKit』などのプラットフォームがない時代からARを研究開発し続けてきて、明確に見えているビジョンがあります。『Oculus Rift』や『PlayStation(R) VR』といったVR/AR市場の巨人たちがつくり出したプラットフォームを軸に考えるのではなく、新しい市場を創出するのが僕たちの狙いです」

これまでにない市場をつくる。そのためには、ビジネス・技術的難度はもちろん、根気強く継続するタフさが重要だ。「正直、やろうとする人は少ないですよね」と笑顔を見せながら語る福田氏はこう付け加えた。

「大きなマーケットの一部を取りに行くという考え方は一般的ですし、勝算も立てやすいと思います。例えば、サッカー観戦にVRをかけ合わせて、まるでピッチにいるような視点で観戦できるようにすることは実現性が高いでしょう。ですが、サッカーという巨大なマーケットそのものを新しく立ち上げようという人は多くありません。テクノスポーツという領域において、サッカーと同等か、それ以上のマーケットを創出する。僕のビジョンはそういったことなんです」

日常に溶け込むAR。2017年現在では、限られた場所でしか練習できないテクノスポーツだが、いずれは街中や自宅、学校、会社など場所を選ばずに競い合うことができる未来が訪れるのかもしれない。

「HADO」だけではなく、新しい「テクノスポーツ」の開発にも着手している同社は、テクノスポーツの祭典を開催しても面白いかもしれないと考えている。それもmeleapのコーポレートビジョンである「ヒザがガクガク震えるほどの面白さを創造する」を目指す第一歩だ。

「スポーツには見るものを夢中にさせるエネルギーがあります。私たちはテクノスポーツという新しい切り口で、魂を揺さぶるような感動、希望を世界中に届けます」。新しい市場をつくる。そんな熱い思いが福田氏からはあふれている。

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