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宇宙開発の未来

宇宙を身近なインフラに変える「AxelGlobe」とは

株式会社アクセルスペース

超小型衛星の可能性に魅せられて起業

「民間企業として世界で初めて、商用超小型衛星の打ち上げに成功」。2013年11月、東京大学・東京工業大学発のベンチャー企業、株式会社アクセルスペースは、こうして宇宙開発の歴史にその名が刻まれることになった。近年の宇宙開発競争の激化にあって、この「世界初」。極めて高い注目度を誇る企業に成長した同社だが、「私が宇宙に興味を持つようになったのは、偶然なんです」と、同社を設立した中村友哉代表取締役は笑う。

「宇宙のことを意識するようになったのは、大学内の『学生が手作りで超小型衛星を打ち上げる』というプロジェクトの存在を知ったときでした。人工衛星と聞くと、トップエンジニアが何百名と集まって作り上げるというイメージがありましたから、それを学生だけで打ち上げまでできるというのは、単純に面白そうに映ったんです」

衛星作りのプロジェクトは年単位。ハード、ソフト両面での作り込みが発生し、膨大な労力を注ぎ込まなくてはならないが、その分、衛星が打ち上がった瞬間のうれしさは大きかった。「地上から打ち上げたものが空に上がり、宇宙という手に届かないところまで行く。その感覚の虜になってしまったんです」。衛星の持つ可能性に魅せられた中村氏は、学生時代に合計3機の衛星を製造することになる。その一方で、当時の超小型衛星が教育や技術研究の範疇を出ない実情に不満を感じていた。

「調べてみると、世界のどこを見ても、超小型衛星をビジネスにしようとしているところがなかったんです。NASA(米国航空宇宙局)やJAXA(宇宙航空研究開発機構)が手掛ける大型の人工衛星と比べれば、超小型衛星はコストが約100分の1の数億円程度に抑えられる。カメラなども高性能化が進んでいて、これはビジネスになるはずだと確信していました。超小型衛星を軸にしたビジネスを始めたい。その一心で、起業することにしました」

ビジネスの行き詰まりから生まれた「AxelGlobe」構想

中村氏ら創業メンバーは「最初のクライアントが決まったら起業する」と決め、顧客開拓を開始。そして2008年、気象情報サービスを提供している株式会社ウェザーニューズから衛星プロジェクトを受託。2013年11月、約10kgの超小型衛星の打ち上げに成功した。

「ウェザーニューズからの要望は『北極海を航行する船が、流氷などを避けて安全に航海できるための情報サービスが欲しい』というものでした。ただ、大型衛星を活用すると写真1枚でも膨大な金額が必要になるし、都度航空機を飛ばすのも非効率。それならば自前で超小型衛星を持ち、北極海近郊を撮影する方がいいのでは、という提案を受け入れてもらえました」

だがその後、ウェザーニューズに続く企業はなかなか現れなかった。理由は2つ。多くの企業が超小型衛星のコンセプトには興味を持ってくれるものの、それをどう使えばいいのかを見いだせないこと。そして、大型衛星と比べて圧倒的に安いとはいえ、数億円というコストとリスクに見合うリターンが得られないと見なす企業が多かったことだ。「正直、ここまで行き詰まるとは思っていなかった部分もあります」と、中村氏は振り返る。

そこでアクセルスペースは事業の方向性を大幅に変更。企業に衛星の購入を促すのではなく、自社で人工衛星を大量に打ち上げ、そこから得られる膨大なデータやネットワークを活用・販売するビジネスへとかじを切った。これが、2015年12月に発表した、地球観測画像データのプラットフォーム「AxelGlobe」構想につながっている。

宇宙をごく身近なインフラに。アクセルスペースの挑戦

AxelGlobeに使用される人工衛星は、大きさ約60cm四方、重量80kgほど。2017年から順次打ち上げ、最終的に低軌道を周回する50機の観測衛星群を形成。衛星が取得する画像データやその画像から抽出した情報を官公庁や民間企業に販売する。これがAxelGlobe構想だ。2015年9月には約19億円の資金調達を完了するなど、その準備は着々と整いつつある。

「自前で超小型衛星を保有することが過大なリスクであるのなら、そのリスクは私たちが取る。その上で、さまざまなビジネスに衛星を活用してほしいという願いを込めて、このAxelGlobeをスタートしました。これにより、地球上の全陸地の約半分、人間が経済活動を行っている地域ほぼ全てを毎日撮影し、データを蓄積できるようになります。さらに、航空写真や気象データなどと組み合わせ、オープンプラットフォームとしての機能を持たせていく予定です」

衛星データのビジネス活用を推進し、宇宙空間を新たなビジネスインフラに変える。言い換えれば、「宇宙を特別なものではなく、ごく身近なものに変えていくこと」が、これからのアクセルスペースの挑戦となる。例えば、広大な敷地を持つ農家に対して、作物の生育状況を衛星写真で伝えられるようになれば、結果的に農作物の値段が下がるなど、私たちの生活にもプラスの影響が出るといったことも考えられるだろう。その一方で、人工衛星から金属の玉を射出して、人工的な流れ星を作り出すといったロマンあふれる計画もあるという。その可能性はまさに無限大だ。

「航空宇宙分野はアメリカが先行しているイメージがありますが、超小型衛星という分野においては、既に打ち上げ実績も挙げている当社が頭一つ抜けているという自負があります。これまでは軍事利用やロマンの対象でしかなかった宇宙を有用なインフラに変え、さまざまな情報やデータを安価に提供する私たちのビジネスモデルには多くの可能性があると考えています。かつてのインターネット黎明期のように、今はさまざまな企業がしのぎを削っている段階ですが、この市場を勝ち取ってみせたいですね」

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