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宇宙開発の未来

宇宙をキャンバスに人工流星で描く壮大なエンターテインメントを実現

株式会社ALE

数千万人が同時に楽しめる新しいエンターテインメント

流れ星が、私たちにとってぐっと身近な存在になる日は、そう遠くないのかもしれない。大規模な流星群が発生するときしか見られなかった流れ星を、いよいよ人の手で作り上げることがもう間もなく実現するのだという。

夜空に自由自在に流れ星が瞬き、数千万人を超える人々が同時に楽しめる天体ショー。その名も「Sky Canvas」。宇宙を舞台とした、この流れ星による新しいエンターテインメントを生み出すべくまい進しているのが、株式会社ALEだ。宇宙空間に飛ばした衛星から流星源を放出し、人工的に流れ星を作り出す装置と仕組みの開発を行っている。

たとえば、広い範囲で見られることを生かした、お台場・みなとみらい・江の島で同時刻に同じ流れ星を見ながらの野外フェス。限られた人で楽しみたければ、幾隻も洋上に並べた客船から見る流星ショー。さらには、空を使った壮大なプロポーズにも使えるかもしれない。そんな可能性が広がる宇宙の使い方が、もはや射程圏内といえるところまで来ているのだ。

これまで宇宙の使い方といえば、通信や写真撮影、GPSなど極めて限定的なものだった。社会インフラとしての重要な機能は果たしつつも、一般から見ればまだまだ「SF」の対象だといえる。ここにもし人工的に流れ星を作り出せる衛星を飛ばすことができれば、宇宙は人々にとってより近しい存在になるかもしれない。

そして、同社が他の宇宙企業と一線を画しているのは、目指しているのが単なる宇宙技術の革新ではなく、人々に「楽しみ」をもたらすエンターテインメントの実現にあるところだ。「宇宙エンターテインメント」という事業形態は、日本はもちろん、世界的に見ても似たような企業は存在しないという。

エンターテインメントの追求と科学の発展がリンクする

宇宙開発×エンターテインメント。岡島礼奈代表取締役社長は、この独自の視点を持ったきっかけについてこう語る。

「天然の流れ星は、宇宙空間にあるチリが、大気圏に突入するときに燃焼しプラズマ発光することで発生します。天文学科の学生だったころに友人と一緒にしし座流星群を見たことがきっかけで、これを人工的に再現できるんじゃないかという思いを抱きました。天文学にも役に立ち、多くの人々が楽しめる流れ星というエンターテインメントが実現できたら……。そのためには、研究者の研究プロジェクトではなく、ビジネス化を意識したプロジェクトにした方がよいと考えました」

学生時代にも起業経験があった岡島氏にとって、会社を起こすことに躊躇はなかった。2009年にプロジェクトを開始、2011年に株式会社化して実験や研究開発を進めてきた。だが、当初はとにかく苦労の連続だったという。「『流れ星をビジネスにしたい』とお話ししても、最初は変な顔をされたり、相手にすらされなかったりしました」

それでも大学の研究者や技術者の協力を得ながら、研究が進んでいくに連れ、天文学に通じる人たちの間で話題となり、メディアに露出する機会なども増えてきたことで、少しずつ周囲から寄せられる反応も変わってきたという。技術的にも2014年の第3回発光実験では、都会からでも肉眼ではっきり見えるほどの明るさを実現できた。そこから事業化のアクセルを踏み込み、現在は2018年のサービス開始に向けて、人工衛星の開発や宇宙空間への打ち上げ準備が進んでいるところだという。

さらに、この人工流星の開発が、科学の発展にもつながるはずと、岡島氏は語る。「人工流星が実現すれば、自然発生の流星の仕組み解明が進みます。人工流星が数多くできるようになれば、天然の流星の成分分析が一気に容易になります。流星を構成する要素が分かれば、その流星がいつ、どのように発生したかも予測できる。小惑星探査機『はやぶさ』が小惑星イトカワからサンプルを採取し地球に持ち帰ってきたことは記憶に新しいですが、あのように直接サンプルを取得せずとも見えてくるデータが一気に増えることになります。少し大げさにいうと、太陽系のなりたちが分かるかもしれません」

天然の流星の源である小惑星帯がいつごろ形成されたものなのかが分かるだけでなく、そこからもし有機物が見つかるようなことになれば、生命のもと、そして人類の起源を解き明かすことにつながる可能性もあるという。収益をあげてビジネスとして自走しながら、科学の発展にも寄与できる。そんな両輪の社会貢献ができるのがALEの宇宙エンターテインメントビジネスだ。

人工流星が実現すれば宇宙空間はもっと自由になる

岡島氏いわく、「Sky Canvas」には、宇宙技術者だけでなく、アーティストや作曲家などが積極的に関わっており、今までにないエンターテインメントのアイデアがどんどん生まれているという。加えて、それらを実現させるのに必要なさまざまな業種の企業にも関心を持っていただけているという。こうした状況を岡島氏は、「宇宙を『楽しむ』ベクトルを広げる好機」と考えている。

「インターネットが私たちの生活に欠かせないものとなったのは、それが実用的な通信手段だったからだけではなく、『楽しむ』というベクトルも加わったからだと思います。これまではJAXAやNASAといった、特別な機関が接点を持つことばかりだった宇宙に、実用目的の民間企業だけではなく、私たちのようなエンターテインメント企業も進出するようになれば、インターネットと同様の事象が宇宙にも起こると考えているんです。『楽しむ』というベクトルがここから一気に広がるんじゃないか。そんなワクワクする予感があるんです」

近年、宇宙開発には、多くの民間企業が参入、投資の資金も流入し、多くの人に「インターネットの黎明(れいめい)期に近い」といわれている。だが、人工流星プロジェクト実現のための事業推進を担う野上大介取締役は、今の宇宙開発には足りないものがあるという。「インターネットが爆発的に発達したのは、さまざまな試行錯誤ができる場があったからでした。宇宙は、もっとさまざまな使い方に挑戦してよい場所なんだということ。このことが、人工流星を流そうという私たちの試行錯誤を通じて伝われば、『流れ星を流せるなら、こんなことにも挑戦したい』という人が増えるはず。そうなれば、結果的に、宇宙を活用したイノベーションも起きやすくなるのではないでしょうか」

これまで、人工流星を考える人はいても、実現させた企業はなかった。ALEの人工流星は、実現までどのような道のりをたどるのだろうか。

「これまでの宇宙開発は、技術面・安全面での目標の達成を最優先にしていたので、期限があいまいなことも多かったと思います。でも、私たちはエンターテインメントを提供する企業ですから、スケジュールも同様に重視しています。技術、期限、安全性など、すべてのバランスをとらなければならないところが難しさでもあり、楽しさでもあるんです」

宇宙という空間が公共のものであり、アクセスできる人も限られるが故に、これまで宇宙に携わる人たちは期限よりも確実な成果を重視してきた。しかし、そうした慎重な姿勢は「宇宙関連技術の進化スピードを停滞させる要因だったのでは」という意見もある。ALEは、宇宙開発の進化に影響を与える存在となる可能性も秘めている。

私たちが数年後に見上げる夜空は、無数の流れ星で彩られているかもしれない。株式会社ALEが見据えるのは、そこから始まるさらなる宇宙の可能性なのだ。

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