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ロボットの未来

ロボットも家族の一員として喜びや感動をもたらす存在に

ロボットスタート株式会社

企業をサポートすることで普及を加速

今、コミュニケーションロボット市場が盛り上がりを見せている。音声認識・音声合成・顔認識技術の向上や、AI技術の発展を背景に、人と会話をしたり、かわいらしい動きで人々を和ませてくれたりするコミュニケーションロボットが、大手企業とベンチャー企業、それぞれから続々と登場している。その口火を切る形になったのは、2015年にソフトバンクから発売されたPepperだろう。ショッピングモールや銀行の窓口、IT企業のオフィスエントランスなどでそのようなロボットを見かける機会も増えてきた。今後は医療や介護現場、海外からの観光客に向けた観光案内などでの活用にも期待が高まっている。
 
2014年12月に創業したロボットスタート株式会社は、そんなコミュニケーションロボットに特化したコンサルティング、メディア運営、プラットフォーム・アプリ開発などの事業を展開している。同社調査によると、「2020年には国内世帯へのコミュニケーションロボットの出荷台数は265万台、国内市場規模は2,400億円に達する」という。2020年時点の日本国内の世帯数が約5,300万と推計されているため、約5%の世帯にはコミュニケーションロボットがいるという計算だ。

「アルデバランのNAOやソフトバンクのPepperの登場で、これからは一家に一台、家庭にロボットが入ってくる時代が来ると確信しました。最初は家庭用ロボット向けの広告配信システム事業を構想したのですが、ロボットの普及はすぐに進みませんでした。ロボットを広告配信メディアとして使うほどの普及台数にはまだまだという状況でした。そのため、まず家庭用ロボットの普及を加速させるべくロボット企業の支援をしようと考えたんです」と、ロボットスタートの北構武憲取締役副社長は語る。

コミュニケーションロボット業界は新しい分野だけに、マーケットの発展のためにやるべきことは無数にある。しかし、当然ながらロボットメーカー一社一社のリソースは限られている。「そこでメーカーでは手が回らない部分を全面的に支援するのがわれわれの仕事」と北構氏は言う。

事業の柱は、ロボットの開発や販売を行うメーカー向けのコンサルティングだ。最近のコミュニケーションロボットの多くは、アプリの開発キットであるSDK(Software Development Kit)が公開されており、自由にカスタマイズすることが可能だ。ロボットメーカーにとっても、自社ロボットを製作して終わりではなく、ロボット内で動作するアプリを作成してくれる優秀なデベロッパーの確保が重要な課題となっている。ロボットスタートは多くのロボットアプリデベロッパーとのネットワークを活用し、そのメーカーに適したデベロッパーの紹介や、アプリの提案を強みとしているという。

またロボットのアプリ開発者、プログラミングができる人材を増やすため、SDKのワークショップを企画・運営している。カリキュラムや教材をつくるだけでなく、ロボットスタートのエンジニアが自ら講師を務める場合もある。シャープ株式会社が発売している「ロボホン」、その開発パートナー認定制度の企画や運営も同社が行っているという。

「最近は自社業務に最適化したアプリを開発し、ロボットを使ったサービスを提供することが可能になりました。そのためさまざまな企業が新規事業としてロボットの活用を検討しており、そのような相談が増えています。例えば、Pepperを導入した都市銀行から、より有効な活用法を相談され、ハッカソンを提案して運営したり、ユニークな例ではロボットに着せるユニフォームの開発のお手伝いなどもしたりしています」

ロボットの目新しさだけでなく、アプリが勝負を決める時代に

「これまでにもロボットブームは何度もやって来ましたが、今回がこれまでと一番違うのは、ロボット自体がインターネットと常時接続され、さまざまな処理、そして挙動をクラウド経由でも可能になったことです。クラウド型の人工知能サービスも進化しつつあります」

そのため「今後のコミュニケーションロボットの普及の鍵を握るのはアプリ」だと北構氏は言う。

「iPhoneが出たばかりのころはキラーアプリが存在せず、一般の人はスマートフォンの必要性をさほど感じていませんでした。ところが多くの企業がアプリ開発に参入し、アプリの数が増えていくなかで、パズル&ドラゴンズ(パズドラ)やLINEのようなキラーアプリが誕生しました。その結果、スマートフォンは今では生活必需品といえるツールになっています。ロボットも同じです。今は何に使われるのか、必要性がよくわからなくても、いずれ必ずキラーアプリが現れ、一家に一台の必需品になると確信しています」

現在、ロボットアプリの開発に参入する企業は急増し、クラウドサービスも急ピッチで進化している。ロボットスタートの強みは、ロボット情報に特化したWebメディア「ロボスタ」を運営しており、数多くの関連企業とネットワークをもっているため、変化の激しい業界の最新情報が集まり、蓄積されていることだ。定期的に発表している「コミュニケーションロボット業界マップ」は、ロボットビジネスに関心をもつ企業や人にとって羅針盤ともいえるツールとなっている。

そんな同社が今、最も注目しているのがAI音声アシスタント搭載のスマートスピーカーだという。これらをロボットととらえることに違和感をもつ人もいるかもしれないが、音声によってクラウドサービスをコントロールするこれらのデバイスは、現在のコミュニケーションロボットと構造的に類似している部分が多い。現在、この分野はAmazon EchoやGoogle Homeだけでなく国内外で新製品が続々と発表され、非常に盛り上がっているという。

「ただ現在の主流となるAI音声アシスタントは、残念ながらほとんどがアメリカの企業によるものです。日本語対応されるまで日本語の音声でサービスが使えないことは、日本のロボット産業にとって大きな課題です。一方で鉄腕アトムやドラえもんに子供の頃から親しみ、ロボットに愛着をもっている国民性は日本の一番の強みです。日本製のロボットは見た目がかわいくて、愛着形成に長けているのが特徴です。家庭にロボットが入り込んでいくうえでは、家族の一員と思ってもらえることが大切です。そのようなロボットをつくることに関しては、日本の企業はとても長けています」

ロボットスタートではこれまでに蓄積してきた知見を生かし、人材育成の分野にも力を入れている。その一つが、デジタルハリウッド株式会社と共同で行うサービスロボットの教育プログラムだ。業界の第一線で活躍する講師の話が聞けるこのプログラムには企業の新規ビジネス担当者などが多数参加し、「日本のサービスロボット市場の現状を効率よく把握できる」と好評だという。

ロボットはいよいよ学問からエンターテインメントへ

「ロボット業界の発展のために必要で、今ないものはすべて担う」。そんな方針で既成概念にとらわれず、常に新しさを追求し続けているロボットスタート。そのオフィスには国内外60体以上のロボットが展示されており、まるで遊び場のようだ。「これだけ国内外のいろいろなロボットと触れあえる場はまずないでしょう。はたからは遊んでいるようにしか見えないかもしれません(笑)」と語るのは、同社でロボットエバンジェリストの肩書をもつ西田寛輔氏。

西田氏はソフトバンクロボティクス株式会社が主催する公式アプリコンテストで2大会連続ファイナリストに選出された実力者であり、国内外のさまざまなロボットのSDKや開発環境の評価、認定試験に関わる業務に携わっている。日本ではまだあまり知られていない海外のロボットや発売前のロボットを実際に使用して、体験記事を「ロボスタ」に書くなど、ロボットの普及、啓発活動にも取り組む。アプリだけでなくロボットそのものも自ら開発し、ヒトとロボットによる音楽ユニットで活動する、ハイパーメディア・ロボット・クリエイターとしての顔も持ち合わせている。

「ロボットの楽しさや可能性をみなさんに伝えることも僕の大事な仕事です。昔はロボットといえば機械工学的なものでしたが、僕らがやっているのはエンターテインメントやコミュニケーション、つまり遊びや体験です。もともと僕はスマートフォンアプリの開発マネジャーをしていたのですが、今の仕事もスマートフォンのゲームやアプリをつくる感覚と似ているかもしれませんね。」

スマートフォンも、音楽を外へ持ち出せるようにした携帯型音楽プレーヤーも、新たなムーブメントの原点には、未来を見据えた先駆者の存在が不可欠だが、まさにロボットスタートはそれを体現しているように感じられる。『ロボットが家族の一員として、人々に喜びや楽しみ、感動をもたらす存在になる』。ロボットスタートのオフィスを訪れると、そんな新しいロボットムーブメントがすでに始まりつつあることを実感できるだろう。

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