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ロボットの未来

来たるべきIoT社会が作るビジネスチャンスとは

株式会社アールジーン 代表取締役 IoT NEWS 代表 小泉耕二

IoT(Internet of Things)という言葉は、ここ1、2年でグッと身近なものになった。センサーと通信機能をもったモノが、インターネットを介してつながり活用されるわけだが、ここでいう「モノ」とは、パソコンやスマートフォン、デジタル機器に限らず、目に見えるあらゆる「コト」が対象になる。それだけにIoTを一言で「こういうもの」とは言い表し難い。あらゆる産業のあり方を変え、私たちのライフスタイルそのものを根本から覆す可能性を多分に秘めている。情報感度の高い人ほどIoTの動向に意識を向けているが、そうしたニーズに応えるべく、世界に情報を発信し続けているのがIoT専門Webサイト「IoT NEWS」だ。サイトを運営する株式会社アールジーンの代表取締役である小泉耕二氏に、来たるべきIoT社会と、ビジネスチャンスの可能性について伺った。

今ある市場、価値観を覆す、IoT の最新情報を発信

――これまでにどのようなプロジェクトを手がけられてきたのですか?

20代はグローバル・コンサルティングファームでERPやCRM、SCM関連のエンタープライズ系のプロジェクトに参画したり、フィーチャーフォンの時代から15年以上にわたってリアルとバーチャルの作り出す世界を研究し続けたりしています。また、電子決済や2次元バーコード、おさいふケータイといったモバイル系のサービスを立ち上げるなど、さまざまな情報システムに携わってきました。その流れをくんで10年前に設立したのが、ITビジネスのコンサルティングファームである、アールジーンです。

――IoT専門Webサイト「IoT NEWS」を2015年5月に開設されましたが、IoTに注目されたきっかけはなんですか?

5年程前からiPhoneなどのスマートフォンが爆発的に普及して低消費電力のセンサーや長時間利用可能な電池などが安く手に入るようになってきました。さらに、GoogleやFacebookなどクラウドサービス事業者が、これまでではありえない数のトラフィックをさばき、人工知能も駆使したサービスを展開するようになってきました。つまり、今までコンセプトはあったけれど実現できなかったコトが、IoTで実現できる。今までにない画期的なビジネスモデルが展開できると感じたのです。

IoTには、センシング(センサーによるモノからの情報取得)、クラウド、AI(人工知能)の複数のサービスが絡みあいます。これまでのビジネスコンサルティングなどの経験から、これらの全体像を多角的に捉え、情報収集、分析を重ねていくなかで、IoTが作り出す社会全体をコンサルティングする必要があると感じていきました。

2016年に入り、ますます注目度が高まるIoTの未来予想図

――実際にIoT NEWSの手応えはどうですか?

立ち上げ当初は「IoTはバズワードだ」と言われておりました。明確な定義が定まっておらず、人によって思い浮かべる内容がバラバラの単なる流行語だ、と。十数年前に華々しく登場し、いつの間にか聞かれなくなった「ユビキタス」に近いものがあると思われていたのでしょう。

実際、IoTの利用用途は当初、非常に限られると思われていました。IoTに注目しているのは、M2M(Machine to Machine)の概念とあわせ、工場などの改善をかなり具体的に考えている人か、「家にもしAIロボットがいたら」というような近未来に思いをはせる人か……そんな両極端しか関心を示さないだろうと、周囲の反応は冷ややかだった時期もありますね。

――そんな状況下から、現在は月間数十万のPVを記録するまでに成長したわけですね。IoT NEWSのファンが増えてきた、と実感できたのはいつごろからですか?

2015年末からです。ただ、それも偶然ではなく市場の動きなどを鑑みて、「そのころから伸びるだろう」と予想はしていました。2015年末に、翌年の社会をにぎわすキーワードとして「IoT」が取り上げられ、社会全体がIoTを注目するようになってきました。そこから一気にPVも伸びましたね。今はまだ「IoTって何?」という人が多いですが、2年後にはインターネット、モバイル、クラウドを発展的に捉えた、波としてIoTのマーケットが広がるのではないかと読んでいます。

――これまでにどんな事例が注目を集めましたか?

評価の高かった日本の有名な事例として、建設機械メーカーのコマツの事例があります。無人制御が可能なコマツの建設機械は非常に優秀ですが、例えばブルドーザー単体の正確性や機動性をいくら高めても、土地を整地するために土を運ぶトラックがボトルネックになると全体としての効率化は図れません。ブルドーザーは、整地するための土がなければ、無用の長物となってしまうからです。

そこでコマツは何をしたか。まず、ドローンを使って地表を測り、人が測量するよりも短時間で精度の高い3次元データをクラウドにアップロード。設計CADデータとのギャップを分析することで、どこにどれだけの量の土を、どうやって運ぶか、どこの土をどれだけ削るか、といった情報を即座に導き出せるようにしたのです。

情報が瞬時に導き出せるなら、トラックにどれだけ土を載せて運べば良いかも正確に分かり、ボトルネックは解消されます。これ以外にもさまざまな工夫を行うことよって、土木建築にかかる工期全体が短縮される、「スマートコンストラクション」というサービスも開始しています。

――とても興味深い事例ですね。

そうなのです。ただ、興味をもったからといって、みなさん大抵の方は土木建築業をされているわけではないですよね?

「モノのインターネット化」というと、多くの人たちは最初「すごいとは思うけれども、自分たちのビジネスとは関係ない」と関心を示さないことが、「IoTあるある」として語られます(笑)。しかし、実はここに潜む重要なポイントを見逃すか見逃さないかが、ビジネスチャンスの分岐点となるのです。

IoTにビジネスの抜本的解決の糸口あり

――IoT NEWSでは多彩なニュースソースがアップされていて、自分のいる業界や職種の参考になる事例も見つかりそうです。

IoTはあらゆるものが対象ですから、異業界・異業種のオピニオン記事も概念化して捉えられれば、携わっているビジネスの問題解決に応用することが可能です。コマツの事例では、(1)ドローンが地表をセンシングし、(2)CADデータとのギャップを正確に測定、(3)ブルドーザーやトラックを必要に応じて動かし、(4)工期全体を圧縮することで人手不足を解消するということが実現できました。

ここで、例えば、コマツの事例を概念化することで介護ビジネスに置き換えて考えることもできるのです。在宅介護で各家庭を効率良く巡回するために、(1)介護住宅にセンサーを配置し、サービス利用者の情報を取得、数値化する、(2)元のスケジュールと比較して、「この家は1日に2回訪問する」「このお宅は夕方に1回だけ」とルートや訪問回数を適切に組み直すことで、(3)実際に訪問するヘルパーの稼働を調整する。その結果、(4)1日では回りきれなかった件数を回れるようになったり、少ない人数で対応したりすることができる、ということが可能になるでしょう。

――掲載されている記事に「すごい」と感心するだけでなく、応用できる要素を見つけられるかが鍵ですね。

そうです。この場合、コマツの事例も介護ビジネスも、共通課題に人材不足があります。そこに気づき、有名な事例を概念化し、自分のビジネスに適用することで、新たなビジネスモデルが展開できます。IoT NEWSでも、その点を明快にした情報提供を心がけています。

国も大手もスタートアップも、IoTになだれ込む時代に

――IoTには行政も前向きだと聞いています。

経済産業省や総務省もIoT促進に向けて動き出しています。北米の取り組みは特に活発で、ドイツを中心とするEUの動きからも目が離せません。すでにグローバルなサプライチェーンやCRMの構築が一気に加速しています。

――国内外の大手企業のIoTの動向について教えてください。

GEをはじめとする製造業が大きく動いています。国内ですと、トヨタ自動車が新規の生産設備にIoTを全面採用すると発表しました。巨大なロジスティクスを誇るアメリカ通販大手アマゾン・ドット・コムは、ロジスティクス面もIoTで進化させているのですが、それだけでなく、コンシューマー向けに人工知能搭載スピーカー「Amazon Echo」(日本未発売)を発売して大ヒットしています。

まさに家ナカのIoTのハブとなる一台で、配車サービスアプリのUber(ウーバー)やスウェーデンの音楽ストリーミングサービスSpotify(スポーティファイ)など、さまざまなサービスがすでにAmazon Echoに対応しており「タクシーを呼んで」「音楽を流して」と声をかけるだけで済みます。グーグルも「Google Home」を年内に発売を予定しており、スマートホーム市場は盛り上がってきているといえます。Teslaに代表されるようなコネクテッドカーや、自動運転カーもかなりの盛り上がりを見せていて、まさにオールジャンル、といった様相です。

――それだけ大手企業が参入を続けているとなると、これからスタートアップが参入できる余地はないのでしょうか?

そんなことはありません。今は自分が作ったサービスを他社のサービスに簡単に接続することができる時代です。さまざまな企業を巻き込んだ「生態系」がこれからどんどん生まれていきます。

資金調達の面でも、クラウドファンディングもありますし、人工知能も低額で借りられる時代です。初期投資があまりなくても、これまでにないビジネスをつくり出せる素地があります。スタートアップこそIoTをもっと活用してチャンスをつかんでほしいです。

――IoTは世の中の仕組みを大きく変える勢いがありそうです。小泉さんの目から見た「こんなところにまで影響が」というポイントはありますか?

IoTがさらに進化し、クルマの完全自動運転が実現すれば、面白いことになりますよ。例えば「自宅から1時間クルマに乗って港区の職場に出勤。クルマは無人で自宅に戻り、退社1時間前にクルマを呼び出して帰宅する」といったことが可能になります。こうなれば駅近に住み、毎日満員電車に揺られながら出勤する必要性がなくなりますよね。そうなると不動産価値そのものが変わります。

郊外に住んだほうが豊かな生活が送れるという人が増えるでしょう。こうなると、クルマも何人かで共有しているかもしれません。一人1台のクルマを購入するというより、1台のクルマを大勢が必要な時にシェアするほうが、乗り捨てた場所の近くでクルマを使いたい人に次は使ってもらうというなど、エネルギー的にも無駄が少なくなります。

一方で、よく言われることですが、自動運転カーが事故を起こした場合の補償は誰がするのか?といった問題もあることは事実です。

このようにIoTは夢や希望を多く含んでいますが、その分リスクや解決すべき問題点もたくさんあります。セキュリティー対策などは必須ですし、現時点では想像もつかないようなトラブルもきっと起こるでしょう。でも歴史を振り返れば、人はいろんな問題を解決して今があります。IoTもさまざまな問題を解決しながら発展していくでしょうし、テクノロジーの進展が追い風となっていくと思うのです。そんなIoTの渦中で、IoT社会の発展に貢献していきたいです。

【プロフィール】
株式会社アールジーン 代表取締役
IoT NEWS 代表
小泉耕二

1973年生まれ。大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)、Cap gemini Ernst & Young(現クニエ)、テックファーム株式会社を経て、2005年に株式会社アールジーンを設立。IoT専門Webサイト「IoT NEWS」の代表を務め、IoTカンファレンスをはじめとした各種セミナーへの登壇、IoTのリサーチレポート作成、コンサルティングなどを通じて、IoTビジネスに関する企業支援を行っている。著書に「2時間でわかる図解IoTビジネス入門」(あさ出版)がある。

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