探そう、まだ見ぬ未来を。

ロボットの未来

筋電技術で義体オリンピック「サイバスロン」に参戦

株式会社メルティンMMI

自分の手のように動く筋電義手

最先端の技術が生かされた義手や義足、車いす、パワードスーツなどを装備・装着し、かつてないパフォーマンスを繰り広げるスポーツ大会「サイバスロン」。2016年10月、スイスで第1回が開催される本イベントの主役は、障がいを抱えたスポーツ選手たちだ。いわば、人とモノが融合した、ロボット技術あるいはサイボーグ技術のスポーツ競技会。この大会に日本から出場するベンチャーがある。そのうちの1社が、株式会社メルティンMMIだ。

メルティンMMIは、思うように動く、精巧な筋電義手の製品化を進めている。筋電義手とは、人が筋肉を動かすときに流れる微弱な電気信号「筋電」で動作制御する義手だ。現在製品化されている筋電義手は、手を握る、開くだけの筋電しか認識できないため使い方が難しく、マスターするまで少なくとも1カ月くらいかかる。

メルティンMMIは、脳の司令を受けて筋が出力した筋電を皮膚表面(義手の場合の多くは前腕の皮膚表面)に取り付けたセンサーで検出し、その筋電の特徴を利用者ごとに抽出することで義手の指の動きに結び付けた。筋電は手が動くより早くキャッチできるため、手を動作させる信号を脳が出してから実際に義手を動かすまでの時間差は0.2秒ほどになる。使うための操作が直感的なので子供でも使える。

これを可能にしたのは、筋電の波形を検出する画期的な技術。この技術を開発したのは、「個人適応型生体信号被動機器制御システム及びその制御方法」の特許を持つ、電気通信大学の横井浩史教授である。

2016年の製品化に向けて

大学ベンチャー、メルティンMMIができたのは2013年。本社は東京都渋谷区にある。2016年の筋電義手製品化に向け、メルティンMMIが現在急ピッチで進めているのは、筋電センサーのワイヤレス化と小型化だ。

「ワイヤレスで小型の筋電センサーは、リストバンド感覚で使え、利便性向上とコストダウンにもつながります」。こう語るのは、メルティンMMIの粕谷昌宏取締役執行役員 COO。粕谷氏は横井研究室博士課程4年生でもある。

粕谷氏は早稲田大学の修士課程を終えようとしていたころに横井研究室を訪ね、筋電技術を利用する医療用ロボットの開発に取り組みたいと横井氏に相談した。そこでちょうど研究の実用化を願っていた横井氏の希望と一致し、起業に結び付いたのだ。

人の身体機能を拡張する

今、粕谷氏は医療用にこだわらず、機械によって人の身体機能を拡張する筋電ロボットも考えている。障がい者のためだけの義手ではなく、健常者も便利に使える義手があったらいいという発想のもと、右腕、左腕に次ぐ、腰に装着して第三の腕と扱える放電義手を試作した。第三の腕という発想は、はんだ付けをする際、右手で基板を持ち、左手ではんだごてを持っても、片手の支えだけでは基板をきちんと固定できないことから思いついたという。

筋電センサーは筋肉があればどこに取り付けてもよく、心臓の筋電(心電)から、交感神経が働いている、副交感神経が働いている、といった精神状態も計測できるという。また、筋電センサーを皮膚表面に取り付けるのではなく、使うものに取り付ける試みも行っている。たとえば、クルマの運転席のハンドルとシートに筋電センサーを取り付け、運転者が発する筋電をハンドルやシートから認識する。それを運転支援システムや運行管理センターに直結させるなど、実用化も検討されているという。

「犬は人の数十倍も痛みをがまんするそうです。筋電センサーを付けてやれば犬の痛みをわかってやれるのではないか。こうした身近なところにニーズがある気がします」と語るのは、筋電義手の製作を請け負っている株式会社クラフトワークスからメルティンMMI設立に参加した、石井利明取締役企画戦略責任者 CSOだ。

筋電技術は義手の既成概念も変える

メルティンMMIは、世界中に熱狂的なファンを抱え、「ジャパニメーション」の代名詞ともなっている作品「攻殻機動隊」の「REALIZE PROJECT」など、先端技術のイベントにも積極的に参加した。「義手は障がいを抱えている人の“補助具”」というイメージを覆し、新たな可能性を切りひらくプロダクトであることを発信し続けている。

2015年7月には「サイバスロン」のリハーサルイベントにも参加した。そこで大会出場選手や研究者、技術者が一緒になって大会をつくっていく雰囲気と、そこで戦わせる議論に、粕谷氏は手ごたえを感じたという。

「テクノロジーをあえて使わないのも変だと思うんです。あの場では、全員が大会をより良いものにしようとする熱量と、互いの技術や理念を尊重し合い、さらに高みを目指そうという熱量がぶつかり合っていました。こういう仲間が増え続ければ、ロボット技術、サイボーグ技術の可能性はますます広がる。そうして、いつか『健常者』『障がい者』という言葉がこの世からなくなればいいなとも思います」。メルティンMMIは人とモノの新たな関係を生み出そうとしている。

powered by BIZREAC

現在募集中の職種

本記事でご紹介した企業では次の職種を募集しております。
詳細は会員制転職サイト「ビズリーチ」をご確認ください。

LATEST POST