探そう、まだ見ぬ未来を。

ロボットの未来

世界的研究者が切り開く、人とロボットが協働する社会

ライフロボティクス株式会社

ロボットアームの概念を覆す、安全柵不要の協働ロボット「CORO」

ベルトコンベアに流れる化粧品を、なめらかに伸びるロボットアームがピックする。コンパクトな設置スペースのなか、ムダのない動きで後方のケースへ並べていく。その隣で「一見何の変哲もない動きに見えますが、だからこそ人のそばで稼働できるんです」と笑うのはライフロボティクス株式会社の尹祐根(ゆん・うぐん)代表取締役だ。同氏とロボットの間に、工場でよく見かける安全柵はない。

尹氏の隣で作業をこなすのは、ライフロボティクス社が開発した協働ロボット「CORO」。協働ロボット(コ・ロボット)とは、人間の近くで作業を支援し人間と協力して働くロボットのことだ。「Redefine」のもと従来の概念にとらわれず、本来コ・ロボットとはどうあるべきかを徹底的に追求した結果、答えは従来のロボットアームの延長上ではなく、大きな課題とされてきた肘の回転関節をなくした全く新しいロボットであるはず、との結論に至った。そこで、独自の特許技術である伸縮する機構(トランスパンダーテクノロジー)を世界で初めて開発した。そして、ロボットアーム全体の複雑な動きをなくすことで、世界で最もシンプルな動作を実現した。

これによりロボットの動きを容易に理解することも、簡単なティーチングも可能となった。コ・ロボットの本質を追求することで、従来のロボット導入現場に必須だった安全柵を設置することなく、人とロボットが安全に協働できるようになった。

さらにロボットの占有面積を大幅に減らすことにも成功し、人間一人が使用するのと同程度のスペースがあれば設置可能に。ロボットのためのスペースを設けるのではなく人間の作業現場でロボットが共に働く、文字通り「協働」できる環境を実現したのだ。

協働ロボット開発は、国家存続に関わる重要事項

協働ロボットの開発をめぐって、欧米では既に激しい競争が繰り広げられている。そこに日本から名乗りを上げたのが、国立研究開発法人・産業技術総合研究所で約20年にわたりロボットアームを研究する尹氏率いるライフロボティクス社だった。

しかし2007年の創業当時、「協働ロボット」は最先端の概念。国内で成功したビジネスモデルがなかったこともあり、同社のビジョンを説明して回っても共感を得るのは非常に難しかったという。それでも尹氏が協働ロボットの開発にこだわったのには理由がある。

「日本は人口が減るにつれ、労働力人口も減っています。『労働力確保のために移民を受け入れればいいじゃないか』という声もありますが、おそらく厳しいでしょう。労働力人口が減るということは、経済も衰退するということ。人口減少と共に経済規模が縮小し、円が安くなれば、移民側からも日本は『稼げない、うま味のない国』となってしまう。つまり、移民を受け入れる以前の問題として、移民に選んでもらうことすらできなくなります。また、『人件費が安い国でものづくりすればいい』という時代もいずれ終わるでしょう。近年だけでも、より安価な人件費が確保できる土地を求めて、中国から東南アジアなどへと製造拠点が移転されていますが、移転先の急速な人件費上昇によりその流れももうすぐ限界に近づくのです。つまり、人件費が安い国で製造するというビジネスモデルの崩壊により、先進国など人件費が高い国でも生産コストをペイできる全く新しい生産システムを構築しなければならないんです」

日本を筆頭に労働者不足が問題となってきた国々で高い人件費を払いながらも、利益を創出できるものづくりの「システム」を構築する。こうした理想的な生産システムを最初につくり上げることができれば、日本が経済的に大きく浮上できることは疑いない。そして尹氏は、この「生産システム」は人間とともに働くことのできる協働ロボットでしか成し得ないものだと確信している。「これはもはや国家の存続に関わるレベルの重要事項なんです。日本の将来のために、絶対にやり遂げなくてはならない」と、語調を強める。

「協働ロボット開発は基礎研究だけでも10年、20年と長い年月を要する、参入障壁が非常に高い分野です。また、既存の産業用ロボットの技術を転換しようにも、協働ロボットとはそもそもの発想が異なる部分も多く、過去の知見やノウハウは通用しない部分も大きいのです。しかし、私には東北大学や産業技術総合研究所で長年にわたりロボット開発に取り組んできた実績があります。宇宙ロボットの遠隔操作から、技術試験衛星搭載のロボットアーム、原子力プラントメンテナンスロボット、福島原発向けの高所調査用ロボット、そして介護・福祉用ロボットアームまで、積み重ねてきた技術と経験は、開発の難しい協働ロボットにこそ生きると確信しました。そして何より、人類の歴史上初めて人口が減少していくことで多くの困難な問題に直面していく日本において、50年後、100年後の子どもたちが今以上の繁栄を享受し、豊かな生活を送るためにやり遂げなくてはならないと思いました」

決意を胸に地道な研究開発を重ねた尹氏とライフロボティクス社は2015年、ついに国際ロボット展で「CORO」を華々しくデビューさせ、一躍コ・ロボット界の寵児に。そして、2016年には1回目の大型資金調達を実現した。

ロボットとの協働で、人間が付加価値の高い仕事に専念できる未来を

資金調達を実施し、将来のさらなる飛躍を見据えるライフロボティクス社。尹氏は、協働ロボットがつくり出す未来について、どのような展望を描いているのか。尹氏は「ロボットがごく当たりまえに人と混じって働いている世界をつくりたい」と語る。

「COROをはじめ、協働ロボットはあくまで道具です。いまの世界で例えればそれこそパソコンのような、ありふれた道具にしたい。そして、つらい単純作業はロボットに任せ、人間はより付加価値が高く人に適した仕事に専念できる環境を実現したい、と考えています。例えば、私も昔、食品工場でひたすら製品にトッピングを載せるアルバイトを経験しました。こうした繰返し単純作業はロボットに任せ、器用な手先動作だけでなくさらなる技術の向上が必要な作業や柔軟な判断を求められる作業など、本来人間が担うべき作業に貴重な労働力人口を振り分けるべきです。介護なども同様で、掃除・洗濯などはバックヤードでロボットが、人間同士のコミュニケーションが求められる介護される人との会話は人間が、と担当する領域を分け、人間ならではの触れ合いの創造に貢献できればいいですね」

協働ロボットの市場規模は現在150億円。2025年にはこの市場規模は100倍の1兆5,000億円にのぼると予測されている。急速な市場拡大のなかで、ライフロボティクス社が目指す方向は明確だ。

「私たちの歩みは始まったばかりです。これからも多くの困難が待ち構えています。しかし、人手不足にあえいでいる世界中のあらゆる業種を支えるため、社員・顧客・関係者すべての人たちと一致団結して人間とロボットが共存するシステム・サービスを確立する。日本発、世界で唯一の技術を手にした協働ロボット専業メーカーとして、ライフロボティクスは、人間を支える道具である協働ロボットの本質を見極め、人間が本来持つ創造力を最大限に引き出す存在として王道を進まなければなりません。私たちの志から誕生していく製品によって、これからの日本の繁栄を支えていこうと強く決意しています」

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