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ロボットの未来

物流業界に知性をもたらす革新的クラウド型プラットホーム

GROUND株式会社

目指すのは「インテリジェントロジスティクス」の創造

物流量の増大、サービス利用者のニーズ多様化、人件費の高騰、採用難……いま、物流の現場ではさまざまな課題が山積みとなっている。その抜本的な解決を目指し、新たな物流プラットホームを構築しようと立ち上がったのが宮田啓友代表取締役社長、その人だ。

宮田氏は2015年4月、GROUND株式会社を設立。同社が掲げる「インテリジェントロジスティクス」の創造を目指し、最先端のテクノロジーを駆使したソリューションを提案している。インテリジェントロジスティクスとは、シームレスなクラウド型物流プラットホームを表現した言葉だ。これまで「IT化が遅れている」とされることもあった物流業界に、ロボットやAIといったハードウエアとソフトウエアの技術を取り入れ、厳しい状況に直面した現場に革新を起こしていく。

その代表的なサービスのひとつが、自動搬送ロボット「Butler(バトラー)」の展開だ。資本業務提携を行っているインドのロボットベンチャー企業GreyOrange Pte Ltd.が開発したロボットで、倉庫内の作業員が動くことなく商品の棚入れとピッキング作業が行える仕組みとなっている。米アマゾン・ドット・コムが2014年の夏から導入を開始した自動搬送ロボット「Kiva(キバ)」をほうふつとさせるが、「ButlerはKivaを超えるポテンシャルを秘めています」と宮田氏は語る。

機械化が進むアメリカ、人手に頼りっぱなしの日本

宮田氏はデロイト トーマツ コンサルティング(現:アビームコンサルティング株式会社)やアスクル株式会社、楽天株式会社などで、国内外の大手流通業を中心とした数々のロジスティクス・サプライチェーン改革のプロジェクトやeコマース事業に従事してきた。それらの経験の中で感じた日本の物流業界が抱えている大きな問題が、起業の契機となっているという。

「海外の物流に携わり、日本の物流は人手に頼りすぎているオペレーションであると感じました。アメリカは2011年ごろから倉庫内でのロボット化が始まっていて、日本ならば100人で作業するところを10人程度でまかなっているんですね。

日本では急速に少子高齢化が進み、1997年の生産労働人口が8,700万人だったのに対し、2015年は8,000万人、2030年には6,700万人まで減る試算が出ています。生産労働人口は人口全体に対し15歳〜64歳の人口層を指すもので、2015年から2030年の間で1,300万人が減少することになります。1,300万人というと東京都の人口とほぼ同じ。しかも物流業界の人手不足は年々深刻化しています。

そのような状況の反面、eコマース市場は一層成長していくでしょうし、それにより物流センターに求められる機能や役割もますます高まっていく。とすれば、倉庫にITやロボットなどの新しいテクノロジーを取り入れ、ニーズに応えるようなプラットホームを築いていかないと、産業が成り立たなくなる危険性があるんです」と、宮田氏は語気を強める。

自動搬送ロボット「Butler」は物流業界の救世主となるか

宮田氏が創り上げていくのは、ひとつの企業内で閉ざされたロジスティクスと真逆の、多種多様な企業に提供するオープンな物流プラットホームだ。「スマートフォンにおけるAndroidと発想は近いですね」と宮田氏は語る。アマゾン・ドット・コムのような大企業であれば自社で技術開発や運用を行える資金力があるが、eコマース事業を展開するすべての企業で同じことができるかというと、答えは「否」だ。

「当社のソリューションを導入していただければ、自社で物流システムを開発する必要も、物流のハードウエアを調達する必要もないんです。われわれがそれらを丸ごと請け負い、世界各国の特出した事業会社と業務提携をして最先端のソリューションを提供します。それを利用していただくことで、物流における課題は解決され、効率的な運営ができるようになる。その仕組みがインテリジェントロジスティクスなんですね」

その要となるのがButlerの存在であろう。ハード部分の機能面ではKivaと同様だが、優位性があるのはソフトの面。機械学習のアルゴリズムが実装されており、出荷時間を最短化すべく常にオーダーピッキングを計算、売れ具合に応じてラックを作業者の手前に持ってきたり奥に下げたりと、人間の指示なしに自動的に動く。ロボット掃除機「ルンバ」を大ぶりにしたようなルックスで、秒速は1.2m、最大500kgの商材を積んだラックを持ち上げられる。複数のButlerが限られたスペースを縦横無尽に動き回る様は、まさに圧巻だ。

さらに特徴的なのがクラウド型である点。インターネットがつながる限り、どこからでもアクセスできるため、Butlerが置かれた倉庫から離れた場所でセットアップ、操作、ラックのレイアウト変更なども行え、「東京のオフィスで世界中のButlerを管理する」ということも可能となる。

これにより物流センターにサーバーを設置する必要がなくなり、センターごとに指示を出すコントロールセンターを置かなくてもよくなる。業務効率化を加速させ、人的リソースも削減できる。物流業界が内包する課題の多くを、このButlerが解決する可能性を秘めているのだ。

ロボットシステムの展開は、歩みをさらに加速させる

アパレル系EC会社で第1号案件が稼働する2016年8月を皮切りに、「年内に複数案件が立ち上がる予定だ」という宮田氏。ファッション、コスメ、医療機器など少量多品種を扱う事業に、Butlerは特に有効だ。

Butlerを導入することで、棚入れとピッキング作業の生産性は5〜10倍向上するとされる。例えば人間が1時間にピッキングできる洋服は約50枚であるが、Butlerならば約500枚。これは50名の人員が10名になることを意味し、結果的に人件費のコスト削減にも結びつく。

「いま求められている“物流センターの24時間稼働”にも、Butlerは威力を発揮します。なぜならEC事業者はスピード勝負になってきていて、どれだけ早くお客様にお届けできるのかが重要視されている。人手を中心とした物流運営だと、人員の調達やコストの面においても深夜作業が現実的ではありません。一方で注文のピークはビジネスタイムが終了した後の21時から25時。Butlerがあれば夜間のオーダーに対する深夜作業を翌朝までためこまず、朝までにピッキングを終えて朝イチで配送できるようになります」

2016年5月にはオフィス家具・産業機器製造大手の株式会社岡村製作所と資本業務提携を締結。同社が扱うロボットストレージシステム「AutoStore(オートストア)」とButlerを組み合わせ、日本の物流現場に最先端の物流ロボットシステムの展開を加速していく。

「物流の現場は今後10年でIoT化、IT化が急速に進み、ロボットやAIを中心とした技術が当たり前になっているはず。だからこそエンジニアリング能力のある人材が、より求められると思います」と話す宮田氏の口調は熱を帯びている。GROUNDの設立はIT化、クラウド化が推し進められつつある物流業界の転換期、その絶好のタイミングだったといえる。多様化する物流領域において、どのようなイノベーティブなサービスを提供する土台を構築していけるか、非常に楽しみだ。

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