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ヘルスケアの未来

【イベントレポート/前編】「人生をITでサポートする ヘルスケア・医療のこれから」
「スポーツ」「救命」「生命保険」の観点から見る、ヘルスケアの現在地と未来

BizReach Frontier編集部レポート

人生をITでサポートする

健康、そして命というテーマに関して、無関係でいられる人はいないだろう。この世界に生きる全ての人がこの問題の当事者であるからこそ、ヘルスケア業界に寄せられる関心と期待は、いつの時代も大きい。

近年、ヘルスケアの領域において、ウエアラブルデバイスやビッグデータ解析といったテクノロジーの導入が飛躍的に進んでおり、私たちの命と健康を守るための新たなイノベーションの創出が期待されている。

今回は、2018年9月13日(木)に開催されたMIJS(Made In Japan Software & Service)コンソーシアム主催のイベント「meetALIVE Vol.4『人生をITでサポートする ヘルスケア・医療のこれから』」の模様を、前編と後編に分けてレポートする。

【今回のパネリスト】
・NPO法人スポーツセーフティージャパン 佐保 豊氏
・Coaido株式会社 玄正 慎氏
・メットライフ生命保険株式会社 宮本 繁人氏

計60分の今回のセッション、前半では3名のパネリストによって、自社の取り組みと将来のビジョンについて約10分間のプレゼンテーションが行われ、各分野における最新のヘルステックの動向と今後の可能性が共有された。後半では、新城健一氏(株式会社ホオバル/取締役)をモデレーターとして迎え、「ヘルスケアの未来」をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。

今回の〈前編〉の記事では、佐保豊氏、玄正慎氏のプレゼンテーション内容を紹介する。〈後編〉の記事では、宮本繁人氏のプレゼンテーション内容、および、「ヘルスケアの未来」をテーマにしたパネルディスカッションの模様を紹介する。

佐保氏、玄正氏、宮本氏の活動領域は、「スポーツ」「救命」「生命保険」とそれぞれ異なるが、「人生をITでサポートする」という志は同じだ。

そして、今回のパネルディスカッションを通して3つの組織の共通点が浮かび上がった。それは、「新しいイノベーションの創出のため、コラボレーションする仲間を求めている」ということだ。命、健康をサポートするためには、24時間、365日の生活を全て包括しなければならない。1社のみのデバイスやサービスだけでは、そうした仕組みを実現できないのだ。

3名のプレゼンテーションやディスカッションに触れることで、企業同士、もしくは企業と個人の新たなコラボレーションを生み出していく必要性を感じてほしい。

デジタルの力で、スポーツ現場の事故を予防

・佐保豊氏(NPO法人スポーツセーフティージャパン 代表理事/写真左)

今回、佐保氏は、「スポーツ」の観点からヘルスケアの未来について語った。

アスレティックトレーナーとして、国内外のトッププロスポーツの世界で経験を積んできた佐保氏は、リスクへの認識がシビアなアメリカのスポーツ現場を数多く見てきたという。それに対して、佐保氏の目から見た日本のスポーツ現場は、まだまだスポーツに関するリスクの認識が低く、また、ケガや熱中症の対処法などにおいて、正しい知識が浸透しているとはいえない状況だった。

そうした状況に問題意識を持った佐保氏は、2007年に、スポーツ現場の安全を守ることを目的として、NPO法人スポーツセーフティージャパンを設立。事故を予防して、万が一起きてしまったときにも適切に対処できる安全なスポーツ環境を実現するために、正しい知識とスキルを身に付けるための教育プログラムを組み、スポーツ少年団からプロチームまで、スポーツに関わる全ての人や団体を対象に、年間120回以上のセミナーを行っている。

そして佐保氏は、デジタルの力によって、より安全なスポーツ環境を実現できると考えているという。

「アメリカのスポーツ界では既に、さまざまなテクノロジーやデータが、事故の予防や、ケガや病気の対処のために活用されています。日本のスポーツ界では、まだその仕組みが整っていませんが、私たちも、いつ、どこで、どんな状況で、ケガや事故が起こったのかを、IT企業と連携してデータとして蓄積させ、緊急時の迅速な対応や、プレーヤーの体調管理につなげていきたいと考えています。また、過去の事故状況を分析して事前に対策を講じることで、守ることのできる命や健康があると信じています」

スポーツを安全に行える環境を、よりスマートに実現していくために、佐保氏の率いるスポーツセーフティージャパンは、これからも新しい可能性を模索し続けていく。

スマホ・IoT・ロボティクスで実現する救命革命

・玄正慎氏(Coaido株式会社 代表取締役CEO)

テクノロジーの力によって、新しい「救命」の仕組みの実現を目指す玄正氏。

玄正氏が代表を務めるCoaido株式会社では、「スマホではじまる、新しい119」をテーマとした無料アプリ「Coaido 119」を提供している。このアプリをインストールしておけば、急病発生時、ボタン一つで、周囲の医療有資格者、救命講習受講者に通知して助けを求めることができる。同時に119番通報で救急車を呼びながら、近くの自動体外式除細動器(AED)設置施設に自動で電話での一斉連絡を行い知らせる仕組み「AEDエリアコール」も連動する。

このサービスが生まれたきっかけは、玄正氏が、電車の中で乗客が急病で倒れるという現場に遭遇したことだった。その体験をもとに、当時参加していたハッカソンで、SOSを発信できる緊急情報共有アプリを発案して優勝。玄正氏自身には、医療分野のバックグラウンドはなかったが、これを機に救急救命の問題の深刻さに向き合い、事業化することを決意したという。

玄正氏が「Coaido 119」を通して目指しているのは、いち早く現場に医療有資格者、救命講習受講者が駆けつけられる仕組みの実現だ。日本において、病院外で心臓突然死に見舞われる人は、年間7万人を超え、その数は交通事故による死者数の約18倍にも上る。突然の心停止においてその命を救うために、迅速に心臓マッサージを行い、AEDによる電気ショックが行える社会を作ろうとしている。

「私たちは、AEDを提供しているセコム株式会社と協力することで、このアプリを広く普及させていこうとしています。そして、行政とも連携しながら、人口密度日本一の豊島区での重点実装を行いつつ、全国への普及を目指しています」

さらに玄正氏は、新しいテクノロジーとの連携についても積極的に取り組んでいる。

「将来的には、AIカメラ、ウエアラブルデバイス、スマートホームといったIoTでのセンシングと「Coaido 119」を連携させることで、救うことのできる命を増やしていきたいです。また、地方にはAEDが少なくすぐに届かないという問題を解決するために、航空宇宙工学サービス企業スウィフト・エックスアイ株式会社と連携して、自律制御ドローンによるAED自動搬送サービスの実現に向けて実証実験を終えています」

テクノロジーの力で「救急救命」の仕組みを変えていくための挑戦は、着実に進化している。

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〈後編〉の記事では、宮本繁人氏(メットライフ生命保険株式会社)のプレゼンテーション内容、および、「ヘルスケアの未来」をテーマにしたパネルディスカッションの模様を紹介する。

【イベントレポート/後編】「人生をITでサポートする ヘルスケア・医療のこれから」 「スポーツ」「救命」「生命保険」の観点から見る、ヘルスケアの現在地と未来

取材・文:松本侃士(BizReach Frontier編集部)
撮影:武市真拓(集合写真家)

(記事掲載:2018年10月12日)

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