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ヘルスケアの未来

圧倒的勝者が存在しないシニア×ヘルスケア市場の先駆者へ

ハルメク・ベンチャーズ株式会社

群雄割拠のシニアマーケットで勝つ秘訣は「シニア向けのノウハウ」

「今、日本のシニアマーケットで圧勝している企業は、ほぼ存在しない。そこに私たちがヘルスケア領域で乗り込んでいく」。そう宣言するのは、ハルメク・ベンチャーズ株式会社の松尾尚英執行役員だ。

総人口の約半数が50歳以上のシニアで占められているという、世界的に見ても稀有な超高齢化社会を迎えている日本。6,000万人近いユーザーを抱える巨大なシニアマーケットを狙って、ヘルスケアをはじめ、保険や食品、ECなど、さまざまな業種・業界が参入を果たしている。「それでも、このマーケットで勝つことは難しい」と松尾氏が語る理由は、シニアの実態を把握している企業が存在していないからだという。

同社は、50歳以上のシニア女性を対象にした定期購読誌『いきいき』を通じてシニア女性を会員化し、通販物販を主軸にビジネスを展開している「いきいき株式会社」の100%子会社として2014年12月に誕生したベンチャー企業だ。

定期購読誌『いきいき』の購読者と通販の利用者をあわせたアクティブ会員数は約40万人と日本最大規模を誇っており、日々のビジネスや顧客との接点から得られた知見が、群雄割拠のシニアマーケットを席巻する武器になっているという。

データとリアルの乖離に、自分たちが戦える道がある

「例えば、総務省からは『インターネットの利用率は50代で9割、60代で7割程度』という統計情報が発表されていますが、どのように利用しているかというと、簡単なメールチェックやニュース閲覧、メッセンジャーアプリ程度で、クレジットカード情報を入力してECで買い物をしているかというとそうではありません。事実、『いきいき』の通販売上の受注経路を調べてみると、インターネット経由の注文はまだまだシェアが低く、ほとんどが郵送や電話によるもの。コールセンターのスタッフと会話しながら購入する商品を決めるお客様も珍しくありません。こうした、データとリアルの乖離を把握しているかどうかで事業戦略は大きく変わってきます」

同社はこうした知見をもとに、「シニア×ヘルスケア」という成長領域で事業を手がけている。その一つが、自宅でがんのリスクを簡単にチェックできる郵送型検査キット「おうちで簡単がんチェック」の企画、販売だ。

シニアファーストを徹底的に追求できる強さ

厚生労働省の調査によると、シニア女性の65%はがんの検査をしておらず、その大部分の理由が「忙しい」「場所が遠い」といった理由であることが分かった。そこで郵送型の血液検査に着目したという。

「自分で採血するのは難しいのではという声もありましたが、検証の結果、やり方そのものは難しくないと分かってきました。そこで、手順を分かりやすく伝えるために、取扱説明書を工夫しようと、ゼロから私が作りなおすことにしたのです。イラストやフォントの大きさなどを工夫し、発売前にモニターチェックも実施。結果的に、取扱説明書はもともとあったものから2倍の大きさになりました」

検査が正しくできているかどうかの指標の一つに「失敗率」がある。同社が取扱説明書を制作したキットは、平均60代の方の利用にもかかわらず、30代の方の利用よりも失敗率が大きく下がった。キットの反響も大きく、月間1,000件を超える申し込みがあったという。シニア女性の健康ニーズの強さを実感するとともに、「自分たちの強みはここだ」と再確認できた瞬間だった。

シニア女性のプラットフォームを生かし、健康寿命を延ばす

日本国内におけるヘルスケアに関する大きな話題の一つが、増大する医療費や社会保険料の負担増加に関するものだ。これに対して松尾氏は「今後は日本にセルフメディケーションの考え方が浸透していくでしょう」と語る。

セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てする」という考え方であり、世界保健機関(WHO)も提唱しているものだ。ここ数年注目を浴びる「健康寿命」というキーワードにも関連する。

「日本は世界一の長寿国ながら、平均寿命と健康寿命の差が大きい国でもあります。日本のシニア女性は、12.7年も健康ではない期間があるとされており、介護、通院の金銭的・身体的・精神的負担も大きくなり、国としての保障も膨れ上がる。一方、アメリカは社会保険の仕組みも異なり、医療費の自己負担が大きいため、セルフメディケーションの考え方がごく自然に定着しており、平均寿命と健康寿命の乖離は8年程度と日本より約5年も少ない。そうした文化を日本に根付かせ、シニア女性の健康向上の役に立つことが、私たちの役割の一つだと考えています」

既に国内外の企業から協業の相談が数多く寄せられており、今後は検査領域から健康増進や医療支援領域、市場としては認知症関連市場まで広げていくという。「我々は『いきいき』というプラットフォームを基盤に、シニア女性の声に耳を傾けながら、ヘルスケアサービスを創造していきます。ニーズは多様化しており、日々検討する事業の方向性も変化しています。いい意味で数年先がまったく想像できない。でもそれが面白い」と松尾氏は笑う。

なお、同社は事業責任者がスピンオフして会社をつくる「プロ経営者育成」の仕組みを持っている。社会に対する貢献と、個人のキャリアの自己実現。2つのモチベーションエンジンで、事業を推進している。

「超高齢化社会のパイオニアである日本で鍛え上げた、シニア向けヘルスケアのビジネスモデルは、必ず海外で通用します。強い日本をシニア×ヘルスケアの領域で取り戻したい」。ヘルスケア領域における巨大なシニアマーケットへの挑戦は、無限の可能性に満ちているといえそうだ。

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