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FinTechの未来

「現金払いよりお得」キャッシュレス文化を日本に——「Origami Pay」が提唱する未来のエコシステム

株式会社Origami

キャッシュレス化が進む世界

北欧諸国を中心にキャッシュレス化の波が止まらない。2017年、スウェーデン、ノルウェー、デンマークの3国は、GDPに対する現金の使用比率が5%を下回った。また、日本の近隣である中国や韓国、インドなどでも急激なキャッシュレスへの動きが加速していることが、多くのメディアで報じられている。

「キャッシュレス」は「FinTech」同様にバズワード的に扱われることもあるが、世界の潮流を見るに、今後日本でもますますキャッシュレス化が進む方向にあるのは間違いない。

ただし、街の至る所にATMが存在し、高度な偽造防止技術が施された貨幣に慣れ親しんでいる日本では、キャッシュレス化を急速に進めるメリットがあまり感じられないという声も根強くある。

「実は、キャッシュレスという言葉の裏には『現金を持ち歩かなくてよいから楽』という以上のメリットが数多く存在していますが、まだまだ広く認知されているとは言い難いのが実情です。私たちは、誰もがキャッシュレスを自然に受け入れていく世界観を育てていきたいと考えています」

そう語るのは、株式会社Origamiでコーポレート開発ディレクターを務めるマックス・マッキー氏、そしてマーケティングディレクターの古見幸生氏だ。同社が提供しているスマホ決済サービス「Origami Pay」は、その思想を実現するためにリリースされた一手だ。

インターネットを使用した店舗決済を可能とした「Origami Pay」は、サービス開始からわずか12カ月で約2万店舗に導入(予定も含む)されている。導入企業にはコンビニエンスストア、アパレルブランドなどが並び、2017年日経優秀製品・サービス賞では「日経MJ賞」の最優秀賞を受賞するなど注目を集めている。

「Origami Pay」の普及が急速に進む理由とは何か。スマートフォン一つあれば、現金払いやカード決済よりもお得に買い物が楽しめる「キャッシュレス・エコシステム」とも言うべき世界を着実につくりあげてきた、Origamiの狙いと展望に迫った。

現金で支払うよりも「Origami Pay」の方がお得になる理由

スマートフォン決済サービスを展開し、急速にシェアを伸ばしている「Origami Pay」だが、同社の始まりは決済サービスではなくECサービスだった。マッキー氏はこう語る。

「Origamiの創業時から、決済分野に挑戦するという軸はありましたが、そのための実績と信頼を獲得するために、ソーシャルコマースから着手しました」

スマートフォンのなかに、自分だけのセレクトショップを立ち上げることができる「ソーシャルコマースサービス」として誕生したのが「Origami」だ。自分の趣味や嗜好(しこう)に近い友人や知人、お気に入りのブランドなどから好みの商品がレコメンドされ、スマホアプリ上で決済まで行えるという仕組みが導入されている。

「Origami Pay」は、そうしたスマートフォンでの決済をO2O(Online to Offline)、つまりオンライン上だけでなく実店舗でも同様に利用できるようにしている。アプリにクレジットカードの情報を事前登録しておけば、対象店舗で利用可能だ。「業種や事業者ごとに利用率は異なりますが、なかには売り上げの半分近くを「Origami Pay」での決済が占めているという事例も出てきています」と古見氏は自信をのぞかせる。

理由は至ってシンプル。「現金やクレジットカードで購入するよりも値引きされて、お得に買える」という分かりやすい購入体験があるためだ。

ただし、ここで1つの疑問が浮かぶ人もいるだろう。なぜ、現金払いやカード払いよりも安く購入できるのか、という点だ。その理由について、マッキー氏は「現金やクレジットカードを扱うなかで生じるコストを圧縮できるためです」と語る。

SkypeやFacebook Messengerなどが普及する以前は、誰かと通話する際にはインターネットではなく、電話回線を利用するケースがほとんどだった。

カード決済についても同じ原理で、これまでは専用のカードリーダーや専用線などのインフラコスト(手数料)として、売り上げの数%が店舗側に請求されている。「Origami Pay」は、インターネットによりインフラコストが下がったその差額分を割り引いた提供が可能になった。専用のPOSシステムを導入せずとも、ユーザーが持つスマートフォンと、店舗側にiPadなどの端末さえあれば「Origami Pay」は初期投資なしで利用できる。これは店舗側にとっても大きなメリットとなっている。

キャッシュレス決済を導入することの店舗側のメリットはまだあり、特に、「現金を取り扱うなかで生じるコストの圧縮ができること」と古見氏は説明する。

「サービス業の経験がある方であればご存じかと思いますが、現金を扱っていると閉店後に『レジ締め』といった作業が発生します。当日の売り上げとレジ内に残ったお金がそろっているかを確認する作業ですね。釣り銭の金額が間違っていれば、それだけで確認作業に追われ、人的コストがかかる。その点、『Origami Pay』であればそのような間違いは起こらず、余計な手間暇を掛ける必要はありません」

また、店舗側には『Origami Pay』ユーザーの購入履歴なども蓄積される。オンライン上であれば「このECサイトにいつログインし、どの商品を閲覧していたか」が分かるものの、オフラインではそうした情報を収集することがこれまで困難だった。しかし「Origami Pay」を使ってもらうことで、購入履歴や頻度などの情報も把握できる。店舗からすると、自分たちのファンになってくれる可能性がより高い人たちをより的確に狙ったマーケティング施策を打ちやすくなる。マッキー氏はこう補足する。

「店舗に足を運びながら、ECサイトで商品を購入するように「Origami Pay」で決済する。オンラインとオフラインの境目を曖昧にするような仕組みが浸透すれば、再来店を促すポイント還元や会員カードの発行といった施策ではなく、より分かりやすく、割引された価格でお買い物を楽しめるようになります」

消費者側、企業・店舗側にOrigami Payを使うとお得だと認知がさらに広がれば、多くのメリットを享受できるチャンスが生まれる。まさにキャッシュレス化によるエコシステムの誕生だ。

Origamiは、消費者・事業者とともに、三者がwin-win-winとなる仕掛けをつくることで、「Origami Pay」のシェア拡大を推進している。

日本で浸透できたキャッシュレスの仕組みは、世界でもきっと通用する

キャッシュレス文化が生まれることによる恩恵はさまざまな場面で存在する。一方で、日本は先進国の1つであり、長年構築してきた金融インフラの影響もあってか、冒頭にあげた国々と比較するとキャッシュレス決済の利用率はまだまだ低いのが現状だ。だが、古見氏はこうした状況にも極めて前向きだ。

「キャッシュレス決済の普及度という点だけでみれば、日本は後れをとっているように映るかもしれません。ですが、それは『日本では金融領域において法律や条例がきちんと整備されている』という証拠でもあります。実際、「Origami Pay」の技術的な領域についてはかなり前から形にできていました。その上で商用化までに大きな期間が空いたのは、高品質なサービスに仕上げたかったという思いが何より強かったからです」

マッキー氏もこの言葉に同意し、「まだ世界にはパーフェクトと言えるスマートフォン決済サービスは存在しない」と自論を語る。弁護士資格も有するマッキー氏は、政府機関や銀行などと「Origami Pay」の仕様について協議してきた。これまでにない発想のサービスだからこそ、毎日が手探り状態であったという。

「ユーザー保護の手厚い日本で生まれた決済サービスであれば、世界に誇れる品質になるのは間違いありません。社名を「Origami」としているのも、日本を代表する文化に乗せて世界中で普及するサービスをつくりたい、という康井(康井義貴代表取締役社長)の決意の表れです。そうしたビジョンに引かれ、キャッシュレス文化では日本のはるか先を行く国出身のエンジニアたちも、Origamiに参画してくれています」

「決済」という領域から、日本の社会構造を変革する

現金で支払う文化が今なお根強く残る日本。これは何より日本という国がいち早く社会構造を構築してきた先進国であり、成熟している国だという証しでもある。ATMの普及度の高さ、諸外国と比較した際の治安の良さなどがその一例だ。このように長年かけて積み重ねてきた商習慣や価値観を一変させるのは容易なことではなく、積み重ねてきたものが誤っているわけでもない。キャッシュレス決済という商習慣が、新しいエコサイクルを作ることができると、古見氏ははっきりとした口調で言う。

「接客業であれば、レジ締めや両替などに労力を割くのではなく、よりCRMのような本質的な業務に集中できる環境を作れるはず。現金のやりとりが行われているあらゆる現場の作業時間は圧縮され、ミスは減ります。消費者も、家計簿などつけずとも履歴が分かり、新商品や割引情報が必要なタイミングで受け取れます。このように、この分野にはまだまだできることがたくさんあり、今すごく面白いと思います」

当然、この分野に着目し、参入を果たしているプレーヤーも少なくない。まさに群雄割拠という様相を呈しているが、「Origamiは、自分たちだけがもうかればいい、という発想は一切ない。あくまでもニュートラルな立場でいたい」とマッキー氏は言う。

「決済という領域で、スタートアップながら多くの実績を生み出してきた自負はあります。その上で、まだまだ挑戦し続けないといけないことはたくさんある。その原動力は、間違いなくフラットな社風のなかで活躍してきた社員たちです。Origamiにとってはまだまだ勝負の時期が続きます。そうした大きな変化が続く状況を楽しめる方に、ぜひ来てほしいですね」

総額で20億円を超える資金調達に加え、2018年2月にはオフィス移転、増床を果たしたOrigami。「決済」という領域から、日本の社会構造を変革するポテンシャルを秘めた同社が、世界を席巻するサービスを生み出す日も近いのかもしれない。

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