探そう、まだ見ぬ未来を。

FinTechの未来

「2023年、ショッピングは劇的な変化を迎える」。Paidyが引き寄せた2人が語る、購入体験の新機軸

株式会社エクスチェンジコーポレーション

「Paidy」というサービスを耳にしたことがあるだろうか。クレジットカードも事前の登録も必要ない。電話番号とメールアドレスのみでカンタンに買い物ができるようになる決済サービスだ。現金決済やクレジット決済等、既存の決済手段を利用してきた世代のなかには、「Paidy」の持つ新しさに多少の違和感を覚える人もいるだろう。だが、ミレニアル層を中心にこの新しい購入体験が広がりを見せている。その「Paidy」を提供するのが、株式会社エクスチェンジコーポレーションだ。

2014年10月にローンチされた「Paidy」は、楽天が提供するフリマアプリのFRILや、海外ファッション通販サイトであるBUYMAでも決済機能の1つとして導入されており、購買というアクションに新風を吹き込みつつある。そのエクスチェンジコーポレーションに2017年9月から2名の新しい仲間が加わった。

1人は橋本知周氏(トップ写真右)。10月1日付けで執行役員・営業本部長に就任した橋本氏は、楽天、ディー・エヌ・エー、PayPalなどを渡り歩いてきた人物だ。そしてもう1人、開発本部長に就任した和泉健氏は(トップ写真左)ゴールドマン・サックスで16年にわたり決済、リスク管理、ポートフォリオマネジメントに携わったエンジニアリング経験を持つ。彼らは「Paidy」のどこに可能性を感じたのか。そして、輝かしい実績を持った人材を引き付けるFinTechの未来、変化への胎動とは何か。2人の胸中に迫る。

電話番号とメールアドレスだけでモノを購入できるという新体験

Paidyは前述したとおり、電話番号とメールアドレスのみで商品の購入を可能にしているサービスだ。請求は翌月にまとめて届き、使用金額の条件はあるが分割払いも可能だ。ZOZOTOWNが打ち出した「ツケ払いサービス」と似ているようで異なる、その大きな違いが複数のオンラインショップで購入したとしても集約されて支払うことができるという点である。都度手数料を支払う必要がなく、自分が何をいつ購入したかをまとめて閲覧できるため、購入後の感覚はクレジットカードに近いかもしれない。

消費者からすれば「便利でいいよね」というサービスだが、裏側の仕組みはそうたやすいものではない。オンラインショッピング、決済分野に豊富な知見を持つ橋本氏ですら、「一朝一夕で考えられる仕組みではない」と語るほどのテクノロジーとロジックをPaidyは秘めているという。 Paidyでは事前審査などを必要としない分、決済可能か否かをリアルタイムで判断、分析する機械学習を土台とした分散型システムを搭載している。

システムとしては複雑なエンジニアリングを必要とし、「日本人エンジニアでこの領域に強い人は少ない」と和泉氏は言う。また、橋本氏も「グローバルサービスを展開する楽天、PayPalを経験したが、Paidyの開発レベルはまったく引けをとらない」と語る。現在、Paidyを運営するエンジニアの総数は13名、データサイエンティストが4名という布陣だが、そのほとんどは外国籍のエンジニアで構成されており、英語でのディスカッションが中心。国際色豊かな人材が肩を並べ、新しい仕組みづくりに熱中している。橋本氏、和泉氏の両名が同社に強い魅力を感じたのも、Paidyが日本国内にとどまらず、新しい決済サービス、ひいては新しいビジネスモデルの根幹を担えるだけのポテンシャルを秘めていると感じたからだという。ビジネスデベロップメントを手がける橋本氏はこう語る。

「この10年だけ切り取って見ても、eコマースには大きな変遷の波があったと感じています。eコマースはもともとBtoBで多用されていたものから、ECサイトなどのBtoCへ。そして、現在はメルカリをはじめとする個人から個人へ、つまりCtoCへと広がりを見せています。同様に、決済手法に関しても対面でのクレジットカード決済からインターネット決済、そして電子マネーでの決済と新しい決済方法が生み出されてきました。そのなかでPaidyは、大手カード会社をはじめ、誰もが成し得なかった新しい購入体験に挑戦していると感じました」

現在、インターネットでモノを購入する際、現金の引き落としやクレジットカードでの決済など、事前登録が必要なものが大多数を占めている。しかし、同社が着目したのはクレジットカード以外の領域であり、「ここはいまだブルーオーシャンだと捉えている」と橋本氏は語る。 Paidyはクレジットカードと同様のユーザビリティで決済が可能であり、カードを必要としない。この体験がユーザーの購買意欲を促進することにつながると感じているという。

「過去、私が入社した企業のなかで、現在の事業規模が最も小さいのはエクスチェンジコーポレーションであることは間違いありません。ただし、5年後を見据えると一番飛躍する可能性を秘めていると感じました」と橋本氏は語る。

また、和泉氏はPaidyのキャッチコピーである「買いたいを、カンタンに」という言葉から2つの魅力を感じ、転職を決めたという。

「まず、コマース環境はデスクトップからモバイル、ソーシャルへと急速な変化を続けてきました。これは消費者が買いたいと思った瞬間から購入までのプロセスを簡単、スピーディーにその場で完結する必要性がより高くなったためと言えますが、Paidyは事前登録なしというUXでの圧倒的優位性がありました。そして次に魅力を感じたのは、そのUXの優位性を保ちながらも、不正利用を防ぐための審査技術の高さです。長く金融領域に携わってきた私から見ても、認証と信用を十分に審査しながら簡単なUXを保つのは非常に難しい。クレジットカードの場合、多くは過去の履歴をベースにしているので、事前の本人確認や信用審査とサービスを利用できるまでにタイムラグがありますが、Paidyは携帯電話番号とメールアドレスの最小限の入力を基に、決済ごとにさまざまなデータを照合し機械学習させ、瞬時に不正利用リスク評価のアルゴリズムを適用することで、UXの優位性を保っています」

テクノロジーが購入意欲を刺激し、適切に抑制してくれる

Paidyを利用する際、入力するデータは電話番号とメールアドレスのみだ。氏名や年齢、性別、現住所などの情報は必要とせず、「携帯電話を保有しているユーザーである」という最低限の信用情報しか存在しない。その裏側ではリアルタイムで決済情報を取得し、信用情報を機械学習させているというシステムがある。Paidyの使用頻度に応じてユーザーが利用できる額は変化し、最適な金額が算出されるという仕組みになる。まさに、個人の信用度が、決済可能額として数値化されるというものだ。

現在はファッション系ECサイトなどでの利用が中心となっているPaidyだが、今後、新しい業態・領域への進出も積極的に狙っていくという。現在Paidyが持つデータとリスク管理技術を発展させ、他の金融サービスも融合することで、さまざまな購入体験がよりカジュアルにかつ安全に実現できて、今後は人々の「お金を払う」という行為にも変化が及ぶだろう、と和泉氏は考えている。

「今後は物販だけでなく、高額決済や分割、レンディングといった金融サービスを提供することも検討しています。さまざまな金融サービスを安心、安全かつカジュアルに利用できれば『お金を払う』ことに対して、メンタル面での負荷が低くなると思いますし、Paidyが持つ情報を用いれば、コンシェルジェ的な情報も提供することができると思います。例えば、一般的な価格が5万円の商品に対して、購入者が今すぐ決済をしたときの価値、来月まで待って分割決済をしたときの価値、または数カ月待って通常の翌月払いをしたときの価値を計算して提示し、購入のオプションの違いによる現在価値の違いを提示したり、過去の購入体験を分析することで、『これ以上の購入は分割決済をすることをおすすめします』と提案するといったことも可能になると思います。また、過去に同様の商品をローンにて購入していたら『○カ月前に似たような商品を購入して、まだ返済が残っていますが、本当に購入しますか?』とアラートを表示するようになれば安心感が高まり、翌月払いや分割払いへの抵抗は少なくなり、新たな購入体験をよりカジュアルに提供できると思います」

一方、橋本氏はPaidyがより広く普及することで、「買う」という行為そのものがもっと増えていくはずだと考えている。

「人間はもともと物々交換で価値の往来をはじめ、その流れから貨幣制度が生まれました。そしてここ数十年の間に『今、この時間にお金が手元にないけど買いたい』という欲求を満たすためにクレジットカードが誕生しました。似たような概念でいうと、ツケの文化もありましたね。銀行からの融資などもこれに近しいでしょう。これらはすべて信用という土台の上に成り立っていましたが、それをよりカジュアルにしたものがPaidyだと捉えています。今、この瞬間は手持ちがないけれども買いたいという衝動に応えられるサービス。それでいて、独自のアルゴリズムにより、過剰な購入はテクノロジーで抑制できる。Paidyは衝動買いのハードルを下げつつ、暮らしが破綻しないように線引きもしてくれる。人の信用というものに価値をもたらしてくれるサービスに成り得ると考えています」

クレジットカードが過去の遺産となる時代が来るかもしれない

最後に、Paidyの将来性に引かれた2名に対して「5年後、Paidyがどれほど普及しているか」と質問を投げかけてみた。橋本氏の考えはこうだ。

「私は世の中すごく変わっていると思っているんです。2016年、1年間だけで訪日外国人による旅行消費総額は3兆円を超えていると観光庁が算出しています。これから2020年までは訪日外国人による消費が増えますし、日本が注目を集めることで、eコマースの市場もさらに盛り上がっているでしょう。問題はその後ですよね。私は少しずつ海外色が薄れていくのではないかと予見しています。それまでに日本という国の中で、日本人がきちんと消費活動を行うという仕組みを作っておかなければ先細りがさらに加速する。そうした仕組みが整った世界を作ることが大事です。それまでにPaidyが若者を中心に根付いていれば、5年後には現金やクレジットカードを用いることなく、Paidyがペイメントの領域ではトップランナーになっていると信じています。10年後ともなれば、クレジットカードという存在そのものがポケベルのような昔話のように語られているかもしれません」

続いて、和泉氏はエンジニアとしての視点から「信用経済の発展」という文脈で話題を展開してくれた。

「Paidyは価値と信用の再定義ができるのではないかと考えています。その裏にはブロックチェーンによって価値と信用の裏付けが中央から分散型に変化することもありますが、それと同時に、さまざまな価値と信用の売り手と買い手が現れ、既存金融機関を通らずとも、さらに直接的で瞬感的な、個別の信用経済のニーズが高まると考えます。当然、個人から個人へと信用を移す仕組みは、もっとカジュアルに出てくるでしょう。そうした未来が生まれていくなかで、Paidyは個人の信用を個別決済ごとに瞬時に審査し学習するプラットフォームを既に築いていることから、今後の信用経済を再定義するリーダーシップを取れると確信しています。われわれのプラットフォームは、既存の包括的で中央的な『決済』ではなく、価値と信用の個別評価を瞬時に行うので、『決済』に代わる何か良いネーミングでサービスを再定義したいと考えています」

決済サービスから「人の信用と価値を作るプラットフォーム」へ。和泉氏が考える未来も壮大だ。2人が語った未来は、どのように実現されていくのか。購入体験の新機軸は、これからのPaidyが普及した未来によって紡がれるのかもしれない。

LATEST POST