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FinTechの未来

電子決済「後進国」の日本に、新たな波を起こすAnyPay

AnyPay株式会社

海外で見た電子決済の普及ぶりが創業のきっかけに

日本は世界有数の先進国だ。そのことに異論を差し挟む人は少ないだろうが、早くから技術やサービスが発達してきたが故に、数十年前のインフラや常識を疑うことなく使い続け、グローバルの最先端から外れているケースも多く存在する。特に顕著だといえるのがFinTechであり、今回取り上げる「電子決済」はFinTechの代表格だ。

「代表の木村(=木村新司代表取締役社長)がシンガポールに移住した際、日本との大きな違いとして驚いたのが電子決済の浸透ぶりだったといいます」。そう語るのは、AnyPay株式会社の大野紗和子COOだ。

「シンガポールに限らず、中国やアメリカなどでも電子決済は広く普及していて、個人対個人での電子決済もスタンダードなものになっています。一方日本では、クレジットカードや電子マネーの利用ができる店が近年増えていますが、海外に比べると電子決済は遅れをとっているように感じます。個人間の電子決済についても同様です。特に中国では、スマートフォンが爆発的に普及したことで、スマートフォンを基軸とした電子決済プラットフォームが一気に発展しました。中国では財布を持たずに外出する人も当たり前にいます」

「ガラケー」と呼ばれ、根強い人気で使われてきた携帯電話が、この数年でスマートフォンに取って代わられたように、現金やカードでの支払いという私たちのライフスタイルにもそろそろ大きな変化がやってくると大野氏は語る。

「皆さん、それぞれに小さな違和感は抱えているはずなんです。特徴的なのは、ATMでお金を引き出すときでしょうか。給料日になればATMに長蛇の列ができ、長い時間待って手数料を支払い、口座から自分の給与を受け取る。ここで生じる時間とお金の無駄を省くことができれば素晴らしいことです。慣れ親しんだ習慣を変えることは難しいでしょう。でも、それができる可能性を感じて、私はAnyPayで働くことを決めました」

AnyPayとpaymo、2つのサービスで独自の経済圏を築く

AnyPay株式会社は現在、「AnyPay」と「paymo」という2つのサービスを運営している。AnyPayはECサイトのない小規模な事業者の方にも、簡便にクレジットカード決済が導入できる電子決済サービス、そしてpaymoは個人間の割り勘に特化した、同じく電子決済サービスだ。

「AnyPayはレッスン料金の支払いや、結婚式の2次会参加費、いらなくなった服やグッズの個人販売など、さまざまなシーンでの利用を想定しています。1分もあれば登録完了できるという手軽さがあることが特徴です。paymoは、飲み会やランチ、女子会などの割り勘の請求・支払いができるアプリです。AnyPayと同様、登録は簡単でダウンロードをすればすぐに利用ができます。2つとも便利なサービスですが、日本では、まだまだスマートフォンで支払うという文化が浸透していません。まずは皆さんに抵抗なく使ってもらえるよう、サービスや利用シーンを知ってもらうということ、そしてより便利なサービスにするため、使えるシーンも増やしていこうとしています」

AnyPayは2016年9月にリリースされた。事業者、個人それぞれが利用できる決済サービスとして着実に広がりを見せているという。続いて2017年1月にpaymoがリリースされた。それぞれ役割は違うが、「根底にある思想は完全につながっている」と大野氏は言う。

「将来的には、このAnyPayとpaymoがシナジーを生む経済圏をつくり出していきたいというのが、私たちのビジョンです。paymoで割り勘している方が、同じIDでAnyPayで商品を購入したりですね。煩わしい現金のやり取りが不要となり、スムーズになります。一度便利な体験をしてしまえば、ベネフィットを感じてもらえる自信はあります」

ベンチマークにしているのは中国のWeChat PayやAlipayだという。いずれも中国における生活インフラとしての地位を確立した、巨大プラットフォームだ。

「電子決済サービスそのものは決して珍しくありません。だからこそ、より早くユーザーネットワークを築くことが勝負だと思っています。Gunosyを立ち上げ、一気に普及させた木村の知見と手腕は大きな武器だと感じていますし、この組織であれば成し遂げられると考えています」

BCGからGoogleを経て、スタートアップに飛び込んだ理由

「支払いの文化を変えたい」と語る大野氏だが、FinTechスタートアップで働こうと決めていたわけではないという。新卒でBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)に入社し、経営コンサルタントとして活躍した後、Googleのアナリストに。事業戦略・マーケティング領域を基軸としたキャリアを築いてきたなかで「木村と出会い、AnyPayへの参画を決めました」と言う。

「大手企業を2社経験し、『次は創業期のスタートアップに』と考えていました。FinTechに絞っていたわけではありませんが、満たされていないニーズを解消できるサービスや事業をやりたいという気持ちは強く、AnyPayは方向性と一致しました。また、コンサルタント時代に関わっていた海外のリテールバンキングのプロジェクトから、『支払いはその国の文化に深く関わるもの』という実感があり、紙のお金をスマートフォンに替えるという、新しい支払い文化を作っていけることに魅力を感じました」

各種メディアからの注目も集め、積極的なWebマーケティング施策を展開している同社だが、取材時(2017年2月時点)では社員数はわずか12名という少数精鋭ぶりだ。COOという役職についても「サービスや会社のためになることは、何でもやる立場と考えています」と大野氏は笑う。

「少人数のチームですが、手がけるサービス規模や目指す世界観は大手企業に負けていません。機能開発、リリースのスピード感も、引けを取らないと思いますし、役職や立場に関係なく、全員がプロダクトに意見を出し、全員で改善していくというカルチャーがあり、とにかく仕事は楽しめていますね」

集まっているメンバーのバックグラウンドはさまざまだが、共通しているのは「非効率を変えていきたい」という思いだという。世の中がより便利に、機能的になることで、人間はより新しい価値を生み出せるはずだとAnyPayの社員は考えていると大野氏は話す。

「紙幣でのやり取りが電子決済化されると、無機質で味気なくなると思われてしまうかもしれませんが、私たちはそうではないと考えています。今までやっていたことがより便利に、簡単になるのは当然として、私たちはそこに新しい体験、付加価値を生み出していきたいと考えています」

「わりかんを思い出に」というpaymoのキャッチコピーは、まさにそれを体現しているといえる。煩わしい計算や集金をさっと片付け、paymoで割り勘した後にスタンプで感謝の気持ちを気軽に伝える。「1年前のこの日はみんなでこんなものを食べたね、といったメッセージが出てもいいかもしれません」と、大野氏は笑う。

AnyPayについても、直接対面でしか売れなかったものが、AnyPayを通じて世界中どこからでも購入できるようになれば、それは電子決済という役割を超えた付加価値につながる。電子決済でなければできないことを増やしていきたい。それがAnyPayの目指す未来だという。

「人の理想的な状態というのは、あらゆるストレスから開放された状態だと思っています。現金を持っているか逐一確認することも、気まずい支払いの催促をすることも、私たちにとっては知らず知らずストレスになっている。だからこそ、AnyPayでやっていることは確かな価値を提供できると考えていて、理想形を現実にしていくためにも、この環境でどんどん新しいことにチャレンジしていきたいです」

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