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ドローンの未来

ドローン×リモートセンシングで農業を持続可能なものに

株式会社スカイマティクス

世の中が求めているのは“ドローンという技術”ではない

「空の産業革命」とも呼ばれ、社会に大きな変革をもたらすと言われているドローン。日本でも2015年の航空法改正で飛行ルールが定められ、産業用途での活用が始まりつつある。空撮だけでなく、農業や建設、物流、災害対策など、幅広い分野から期待が集まっている。すでに日本でもさまざまな企業がドローンビジネスに参入している。ドローンそのものの製造は中国やインドといった国々にシェアを奪われているが、ソフトウエアやセンシング技術においては日本が先をゆくという見方も多い。国も成長戦略の一つに位置づけ、仙台市や千葉市のようにドローンを活用した先進的な取り組みを始める自治体も現れた。ただ各地でさまざまなプロジェクトが進行しているものの、その多くはまだ実証実験レベルである。

そのような状況のなか、農業分野でドローンを活用したサービスをすでにリリースし、一歩先んじているのが株式会社スカイマティクスだ。同社は、三菱商事株式会社と株式会社日立製作所の出資により、2016年の10月に設立されており、同じく三菱商事と日立製作所が出資し、衛星画像販売や地理空間情報サービスなど衛星を活用したビジネスを展開する日本スペースイメージング株式会社の弟分的会社である。

「ドローンは衛星と違って安価で誰でも利用できます。またセンサーを簡単に変えることができたり、近距離からの高精度なデータがとれたり、雨の日でも利用できたりするなど、衛星にはないさまざまな利点があります。そのようなドローンを活用することで、今までにないリモートセンシングサービスを提供できるのではないかと考えました」

渡邉善太郎代表取締役COOは、会社設立の意図をそう語る。リモートセンシングとは衛星やドローンなどで遠隔から対象を測定する技術全体を指すものだ。スカイマティクスは、リモートセンシングによって得たデータを活用することで、産業界が抱えるさまざまな課題の解決を目指す会社であり「ドローンはあくまでそのための手段だ」ととらえている。

「お客様が欲しいのは、ドローンという技術そのものではありません。企業が目指しているのは、業務の効率化やコスト削減など、自社が抱える課題の解決です。今、ドローン業界は非常に盛り上がっていますが、どちらかというとハード寄りのビジネスに偏っている気がします。ドローンという製品を構成する要素技術は確かに素晴らしいのですが、お客様が単にそれを購入しただけではうまく使いこなせず、必ずしも自分たちの課題解決につながるとは限りません。私どもは、誰もが簡単にドローンを使って自身の課題を解決できるよう、ハードウエア、アプリケーション、そしてクラウドサービスをパッケージにしたサービスを提供しています」

スカイマティクスの最大の強みは、日本スペースイメージング等で培ってきた画像処理・解析技術を核に、ドローンやAI、IoTなどを融合させ、データ収集から解析、データの有効活用までを、クラウドサービスによってワンストップで提供できるところにある。衛星という超高度から得られたデータと、ドローンによって得られた地上数十メートルからのデータという違いはあれ、それらを活用した事業課題解決を目指すというスタンスは変わらないのだ。

ドローンで集めたデータを解析し農業の生産性を上げる

同社の葉色解析サービス「いろは」は、タブレット端末のアプリを使い、クラウド上で誰でも簡単に撮影計画の設定、飛行状況の確認、葉色の診断ができるというもの。ドローンは設定した飛行経路を自律飛行するので、特別な操作技能は必要なく、誰でもすぐに扱うことができる。画像とともに害虫発生地点、作業内容などの情報を入力し、それらを人工知能で解析することで、より効果的な生育管理ができるようになるという。

また、農薬散布サービス「はかせ」は散布の計画、飛行状況の確認、散布実績の管理を、タブレットを使ってクラウド上で簡単にできるようにしたものだ。こちらのドローンは自律飛行ではないが、あらかじめ設定したフライトプランに従った飛行をサポートする機能があるので、ドローン操作に不慣れな人でも安心して利用できる。とくに段々畑や斜面にある果樹園、中山間地域など、人が農薬をかかえて散布するのが難しい場所で特に力を発揮するという。日本の国土のうち、約60%が山地であることを考えれば、ドローンによる農薬散布が容易となることで、人的コストの面などから敬遠されがちだった山岳地帯も農業用地として活用しやすくなるかもしれない。

将来的には「いろは」で害虫発生地点など農薬散布が必要な場所を確認し、「はかせ」で効率的に適量の農薬を散布するまでを、自動的に行えるようにする予定だという。またクラウド上に蓄積されていく情報をビッグデータとして活用する、データプラットフォーム事業も展開する。

「ユーザーが農薬を散布すると、どこでどういう農薬をどれくらいの風速のときにまいたかが、自動的に記録され、クラウド上に情報がたまっていきます。それらを分析することで、より有効な農薬散布の方法も見いだせるでしょう。そのデータは新しい農薬を開発する際にも役立ちます」

こうしたデータは個人で活用できるだけでなく、地域や国全体としての膨大なデータを蓄積し、解析することで、国全体の農業の効率化、生産性向上に大きく貢献できるようになる、というのが渡邉氏の予想だ。

「これまでの属人的だった農業をデジタル化することで、農業は劇的に変わります。これから就労者が減っていくなか、デジタル化を進めていかないかぎり、農業は産業として成り立たなくなっていきます。今後はドローンやAI、クラウドサービスを使った農業は当たり前になるでしょう」

日本の農業は今、高齢化による人材不足、また農業従事者が長年培ってきた知見が伝承されない、といった問題を抱えている。「いろは」や「はかせ」は、そのような問題を解決し、日本の農業を持続可能なものにするためのソリューションなのだ。「いろは」や「はかせ」で使うドローンは、高性能な産業用ドローンで定評のある株式会社プロドローンに開発を依頼している。

「いろは」や「はかせ」は個人の農家でも導入できるが、費用負担を軽減するためグループでシェアするプランも用意されている。ドローン活用の裾野を広げるためにも、空撮会社やJA、成果物の卸業者などと連携をとりつつ、さまざまな可能性を模索していきたいという。

技術と技術を組み合わせて新たな付加価値を生む

スカイマティクスがソリューションを提供するのは、農業分野だけではない。鉱山や建設現場での作業の進捗管理、RFID(Radio Frequency IDentification)を使った資材管理、老朽化設備の点検、橋や道路の診断など、幅広い分野でのサービス展開を行う。

「画像解析を核とした私どものリモートセンシング技術は、あらゆる分野に応用できます。なかでも注目されているのが、ドローンRFIDによる資材管理です。倉庫や建設現場に点在する資材にRFIDタグを貼り付け、アンテナとリーダーを搭載したドローンを飛ばしてその情報を読み取り、地図上にマッピングするのです。それによって、どこに何があるかがひと目でわかり、在庫管理を飛躍的に効率化できます」

物流、建設現場、プラント現場で在庫管理に費やしているコストは全世界で数兆円規模と言われており、そのコスト削減効果は非常に大きなものになる。また鉱山や建設現場の作業進捗管理を自動化するドローン測量は、海外からのニーズも非常に高いという。

このように今後、さまざまな分野、また世界へとビジネスを広げていくうえで、同社が世界中にネットワークをもつ商社の子会社であることは、大きなメリットとなるだろう。ちなみに渡邊氏はスカイマティクスのCOOに就任する前は、三菱商事、日本スペースイメージングで衛星を使ったビジネスモデル開発に10年以上携わっていたという。

「機械工学科出身ということもあり、どの技術を使ってどういうビジネスモデルをつくることが社会の課題解決に貢献できるかを、ひたすら考えてきました。私どもは自社サービスを展開するにあたり、他社によい技術があれば、積極的に提携して活用する、いわゆるオープンイノベーション戦略をとっています。商社の子会社ということもあり、ある会社の技術とある会社の技術を組み合わせて、単独の会社ではできない付加価値の高いサービスを実現するようなことも得意だといえます」

最近はエンジニアが創業し、「自分たちの技術によって世界で勝負したい」と考えるスタートアップも多いだけに、スカイマティクスのような柔軟な技術との向き合い方ができる企業が増えることで、業界内のハブが増え、より多くのシナジーが発揮されるようになるかもしれない。

「もちろん技術は大事です。それ以上に大事なのが、それをいかに活用するか、ということなのです。そういった意味では、我々の社会はまだドローンを本当に活用しきれていません。ドローンを空飛ぶロボットととらえれば、それこそ可能性は無限にあります」

スカイマティクスという社名は、Sky(空)とinfomatics(情報)とX(無限)をかけあわせたものだという。「空から無限の情報を世の中に届けたい」との理念のもと、同社はこれからも、さらなる高みを目指し、挑戦を続けていく。

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