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クルマの未来

自動運転、物流支援ロボットCarriRo、ドローンの「三兎」を追う

株式会社ZMP

人間の「眼」と「頭」を技術で再現し、市場を変革する

「クルマの自動運転、物流支援ロボットCarriRo(キャリロ)、自律型無人航空機(ドローン)。この3つの事業をバランスよく行うことが、当社の当面の方針です。この3本の柱となる事業に共通するのはカメラ・センサーと人工知能の技術。これらの技術から派生するサービスは、今後ますます価値あるユーザー体験を提供できる可能性を秘めていると思っています」。そう力強く断言するのは、株式会社ZMPの谷口恒代表取締役社長だ。

ZMPは、ロボット分野で最先端を走ってきた企業だ。2001年に科学技術振興機構(JST)から技術移転を受けて人型ロボットを開発する世界初のベンチャーとして、二足歩行ロボット「PINO」の製作からスタート。2007年には、二輪型の家庭用自律移動音楽ロボット「miuro(ミューロ)」を発売。丸っこい愛らしい姿で室内を動き回る音楽プレーヤーとして話題をさらった。

2004年「nuvo(ヌーボー)」を販売し、2007年の「miuro(ミューロ)」の開発を経て、「自律移動」の大きな可能性に気がつく。自律移動技術の研究開発を行い、洗練させて、もっと身近に役立つITサービスへの展開に取り組もうと考え、自動運転や物流ロボットの進化・発展に傾注するようになる。

中でも切実な社会的ニーズを感じているのが自動運転技術だ。高齢者ばかりの過疎化する地方で、人手を必要としない自動運転を可能にしたクルマが走行する未来を実現するために、ZMPは積極果敢なチャレンジを続けている。

2008年からはロボット技術を搭載した自動運転技術開発プラットフォーム「RoboCar(ロボカー)」シリーズの開発を開始。「クルマの自動運転は、基本的な操作に関してはコンピュータ制御ができる段階にもう来ています。私たちはより汎用的な自動運転を実現するため、人間の『眼』にあたるカメラ・センサーと、『頭』にあたる人工知能をコア技術として研究開発しています」

2009年、ZMPは10分の1スケールモデルのRoboCarの自動運転を成功させ、2012年にはプリウスのRoboCar化にも成功、注目を集めた。現在、大手自動車メーカー等に向けたカメラ・センサー技術や人工知能技術の提供は、ZMPの中核事業の一つだ。そしてここで生まれた「眼」と「頭」は、異なる製品にも展開され始めている。

物流支援ロボットの先に見据えるのは宅配支援ロボット

クルマの自動運転技術が実用化に至るまでには法律、道路整備、社会慣習など、乗り越えなくてはならない問題が山積している。そこで谷口氏が目を付けたのは、私有地内を走行する車両だ。工場敷地内や倉庫内の物流であれば法改正などを待たず、すぐにサービス化できる。そんな着眼点から生まれた物流支援ロボットが「CarriRo(キャリロ)」だ。

自律移動ロボット技術により使用者の負荷を軽減するCarriRoは、1台目の台車を押して運んでいくと、2台目、3台目が自動的に追従してくる「かるがも走行」を実現した。形状はふつうの台車とほぼ変わらず、スーパーマーケットのバックヤードから店頭への品出しを行うような狭いスペースでもラクに使える。2016年夏の販売開始を予定するCarriRoだが、既に製造・物流業界からの引き合いが相次いでいるという。

「自律して移動するCarriRoがいずれ公道も走れるようになれば、荷物の無人配送が可能になります。スマートフォンで『今、持ってきて』と連絡したら、ロック機能のある宅配用ボックスを搭載したCarriRoが自宅前までやってきて、メールで商品が届いたことを通知してくれる。依頼主は宅配用ボックスにスマートフォンをかざせばロックが解除され、品物が受け取れるという仕組みを想定しています。お客様は好きな時間に安全に荷物を受け取れるようになる。また、それ以上に重要なのは宅配業の人手不足解消につなげられるという点です。例えば、「かるがも走行」で一人の配達員が一度に2つ、3つと荷物が運べれば数倍の配達が一度に実現できます。また、女性の一人暮らしの場合、『本当に宅配業者かどうか』を見極めるために、わざと居留守を使うケースもあると聞きますが、身の安全を確保するためとはいえ、何度も荷物を運ぶ業者の側に立てば、負担が大きいと言わざるを得ません。それならば、ロボットがそうしたロスをなくし、宅配業者の負担を減らすことができればいい。宅配ロボットにはそんな可能性もあるわけです」

合弁企業を設立し、ますます期待が膨らむドローンビジネス

ドローンによるサービスについては、多様な産業分野での展開を見込み、2015年にソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社と合弁でエアロセンス株式会社を設立。谷口氏はエアロセンスの代表取締役も務めている。ドローンのビジネス活用には、さまざまな可能性がある。

その可能性に注目している業界の一つが建築業界だ。建設現場で作業中の建築物を上空のドローンから撮影し、その画像を設計図と重ね合わせることで、規定の長さや太さの杭(くい)が定位置まで打ち込まれた証拠が残せる。「住の安全」「手抜き工事」に対する不安を払拭できる、一つの手段となるだろう。あるいは盛り土が必要な傾斜地の体積を撮影と同時に計算して、必要な盛り土の量を算出することも可能だ。

また、農業に使用する可能性も考えられる。実った稲の水分量を上空のドローンによって計測し、その計測値から析出した田んぼごとの稲刈りの適期を提供するというものだ。ここにはZMPが誇る技術のすべてが詰め込まれている。ドローンに搭載するのは「眼」となるカメラ・センサーであり、得られた情報は人工知能によって迅速に処理される。

さらに、ドローン自体も「離着陸を含めて、すべて機械による自動制御を実現したい」と谷口氏は語る。ZMPでは、自社製カメラには「RoboVision(ロボビジョン)」、人工知能には「IZAC(アイザック)」というブランド名を冠している。

「広範囲に用途のあるところをとらえて、ハードウェアとソフトウェアの両方を設計したサービスを提供している企業は、世界でもZMPくらいしかない。3本の柱となる事業は経営的なリスク分散を考えて始めたことですが、その方が楽しいし、技術力も高まる。何より新しいことにチャレンジし続けられる。いいことずくめですよ。私はわざわざ競合他社と同じ土俵に立ち、横並びの技術開発競争をするつもりはありません。それより、実用化できるITのサービス提供をしたい。ただそれだけなんです。物流業、小売業、医療や介護などの業界はどこも人手不足です。そこにロボットが参入できれば、人手不足も、これらの業界で働く人たちの満足度も大きく変わる。ロボット技術を生かすべき場所はたくさんあるんです。それらを網羅しきるまで、とにかくチャレンジし続けますよ」

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