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クルマの未来

安全性と利便性を両立した、近未来感あふれる運転支援デバイス

株式会社Pyrenee

国内最大級のオリジナルハードウエアコンテストで優秀賞を受賞

昨今の自動車業界におけるトレンドといえば、真っ先に挙げられるのが「自動運転」だ。現在、国内外の自動車メーカー各社は、自動運転の実用化を目指し、開発競争にしのぎを削っている。その一方で、2016年12月には、自動運転車の開発をリードしていたグーグルが自社開発の凍結を発表するなど、期待とは裏腹に、実用化への道のりはいまだ遠いのが現実だ。

加えて、自動ブレーキシステムを中心とした、運転をアシストするテクノロジーの進展も見逃すことができない。クルマの未来は、「自動運転」という究極の姿を示しつつ、実現可能なさまざまなテクノロジーを積み上げながら進化を続けている。

こうした中、意欲的かつ独創的な運転支援デバイスの開発で注目を集めているスタートアップが、株式会社Pyreneeだ。同社が開発し、2018年の発売を目指している運転支援デバイス「Pyrenee Drive」は、カメラとセンサーを搭載した透過スクリーン付きの後付けユニット。走行時、「Pyrenee Drive」が自分の車の周囲を行き交う車や歩行者などを認識し、距離や位置、速度などを検知して、衝突などの危険がある場合、ドライバーに警告を発する。

このデバイスの画期的な点は、ユニットをダッシュボードの上にセットするだけで、すぐに使用できることだ。特別な取り付け工事も不要で、あらゆるメーカーの車に搭載することができる。さらに、このデバイスにスマートフォンを接続することで、カーナビやアプリなどのさまざまな機能を透過スクリーン上に表示し、それを音声で操作することも可能にしている。

運転の安全性をサポートしながら、利便性も兼ね備え、しかも近未来感あふれる、エッジの効いたUIが目を引くPyrenee Driveは、国内最大級のオリジナルハードウエアコンテスト「GUGEN2015」で優秀賞を受賞。その発売に、ドライバーや関連企業各社の期待と関心が集まっている。

Pyrenee Drive の普及で、世界の自動車事故の半減を目指す

株式会社Pyrenee創業者の三野龍太CEOは、Pyrenee Drive開発の目的を「自動車事故を半分に減らすこと」だと話す。

三野氏によると、交通事故の原因のおよそ8割はドライバーの不注意であり、これは世界共通だという。そこで、ドライバーに事故のリスクを適切に知らせる支援デバイスPyrenee Driveが普及すれば、交通事故の発生を大幅に減らすことができるというのが、三野氏のビジョンだ。

「私は、人の命を守る製品やデバイスをつくることを目的として、この会社をつくりました。そして、実際に人の命を守る効果があることはもちろんですが、それに加えて『使っていて楽しい』と思えることも非常に大切だと感じています。『この両方を兼ね備えた製品をどうやってつくっていくか』は常に考えていますね。どんなに実用的に優れていて、交通事故が防げたとしても、それだけでは実際に購入して使ってみようという人は少ないかもしれません。それでは多くの人を事故から守ることはできませんので、まずは実際に使ってもらうことが大事だと考えています。便利で楽しく、しかもいざというときはしっかりと安全を守るという製品を開発しなければならないのです」

Pyrenee Driveは、衝突回避のために前方にある物体までの距離を認識。自車が進路上の物体と、3秒以内にぶつかると判断した場合に警告を発するという高い精度を実現している。一方で、スマートフォンとの接続による利便性の高さや、透過スクリーンを用いたインターフェースは、ドライバーに「使ってみたい」と思わせるデバイスとしての魅力にあふれている。さらに、現状では販売予定価格を4万円以下に抑えようとしているのも、「多くの人に使ってもらわないと、安全を守ることができない」という、同社の信念の表れなのだ。

また、Pyrenee Driveでは、集められたデータがクラウド上にアップロードされるようになっている。これにより、実際の交通状況、警告が発せられたシチュエーションなどを集めて学習し、さらに精度の高いプログラムにアップデートして、再びデバイスに戻していくことができる。つまり、ユーザーが増えれば増えるほど、使われれば使われるほど、より精度の高いプログラムになっていくのである。三野氏は、これらのデータを自動運転や運転支援デバイスを開発する他社にも提供することで、自動車業界全体の安全技術の向上にも資していきたいと語っている。

完全自動運転への過渡期である今、運転支援デバイスが担う役割

自動車の運転支援デバイス開発に意欲的に取り組む三野氏は、現在のトレンドである車の自動運転や、それにともなう車の安全性について、どのように見ているのだろうか。

「例えば、ある外資系コンサルティングファームの予測では、30年後もまだ8割の車は人間が運転しているとされています。自動車メーカーの開発者の皆さんと話をしていても、完全な自動運転の実現はまだかなり先だという意見が一般的です。一方で、運転支援デバイスの中でも、自動ブレーキの技術は急速に進歩しており、それを搭載している車の数も急激に増えています。しかし、いまだに自動ブレーキは完全なものではなく、タイミングによってはブレーキが間に合わなかったり、カメラやセンサーの状況によっては早い段階で危険に気づくのが難しかったり、という課題があります」

ここで三野氏が強調するのが、仮に自動ブレーキによる制動が完璧でなかったとしても「ハンドルを少しでも切れば、致命的な衝突を避けることができる」ということだ。しかし、このような緊急時のハンドル操作が自動運転として実用化されるのはしばらく先のことである。しかも、こうした緊急回避によって、避けた先に人がいる場合などの二次的な事故が起こる可能性もある。その際、誰が責任を負うのかといった法律的な課題も生じる。人による運転と自動運転の過渡期といえる今こそ、Pyrenee Driveのような運転支援デバイスの役割が大きくなるというわけだ。

■プロフィール
株式会社Pyrenee
創業者・CEO 三野龍太
1978年生まれ。東京都出身。建築工具メーカー退職後、雑貨メーカーを設立。「人の命を守り、しかも使って楽しい製品」という思いから、2016年にPyreneeを創業。まったく新しい運転支援デバイス「Pyrenee Drive」を開発し、2018年の世界発売を目指す。

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