探そう、まだ見ぬ未来を。

クルマの未来

運転の楽しさを感じられる自動運転を

株式会社本田技術研究所 四輪R&Dセンター

あいまいな情報を処理できる、人間のように振る舞う自動運転技術

私たちの生活に不可欠なクルマの自動運転技術は、現在どの辺りまで研究開発が進んでいるのだろう。株式会社本田技術研究所 四輪R&Dセンターを訪ねた。同研究所はHondaの四輪研究開発を担っている組織だ。ここで自動運転に関わる研究リサーチ部門を統括する屋敷哲也主任研究員は言う。

「自動運転に関わるさまざまな技術の研究開発はかなり進んでいます。私たちが手がけた自動運転車も、アメリカの公道を走るなどの実証実験で確かな成果をあげました。とはいえ一般のお客様が完全自動運転車を使えるようになるにはまだ少し時間がかかると思います。たとえば自動で止まる安全運転支援システムといっても、カメラにせよセンサーにせよ、現在の自動ブレーキシステムでは100m先を見ることは困難です。クルマを運転した経験をお持ちの方ならお分かりの通り、人は信号でもかなり遠くから見ているものですから、もっと遠方の情報を把握できるセンシング技術が必要です。さらに、人は複数の情報から周囲環境を理解し、潜在的なリスクを予測しながらクルマを運転しているので、その辺りの研究も進めていかなければいけません」

本田技術研究所ではミリ波レーダーや制御システムを、1990年代から開発し始めていたという。そうした技術研究の積み重ねを経て登場した、市販車への搭載を実現したHondaインテリジェントドライバーサポートシステム[HiDS](車間制御・車線維持支援機能付きクルーズコントロール)は、当時話題を呼び、それが契機となってメーカー、サプライヤー、研究機関の自動運転に関係する研究は一気に活発化した。法規制の問題などは多く残っているものの、着実に、自動運転が私たちの生活においてより身近なものになりつつあるといえるだろう。

世界中の人が使うプロダクトだからこそ

自動運転に必要となる技術には、今までクルマには使われていなかった技術が多く活用されている。膨大なテストデータの演算処理などにおける、ビッグデータ解析や機械学習アルゴリズムといった技術もその一つだ。同様に、これまでクルマから縁遠かった企業も自動運転の実現にチャレンジを始めている。クルマのプロダクションレベルは未知数であるものの、Googleが自動運転領域への進出を表明したのは、その顕著な例だといえる。

本田技術研究所でも画像認識や機械学習システムの研究開発を進めているが、二足歩行ロボット「ASIMO」に代表される、ロボティクス分野で培ってきたノウハウも生かされているという。一方で、IT系ベンチャーなどとは異なり、クルマの場合はそう簡単に新技術を取り入れられないというジレンマも存在しているという。

「例えば半導体一つにしても、クルマで使うものは安全性を考慮し、何年も使用され、信頼できる性能を確認されたものでないと導入するのが難しい。その上でHondaならではの新しい価値を追求し続ける。それが世界中の人が使うプロダクトであるクルマを扱う難しさであり、醍醐味でもあります」

当然、生産コストは見合うか、グローバルに生産できるか、クルマにふさわしいデザインが可能かなどといった条件もある。現在の自動運転実験車には、トランクに非常にかさばる機器が積まれているが、それを小さくしなければ製品として使えるものにはならない。

「今はサイズ面での制約があったとしても5年後には実利用が可能なほど、各製品やパーツが小さく、安価になっているかもしれない。将来、どのような製品、技術がクルマに組み込まれるか、応用できるかは予測が難しいので、あらゆる可能性を想定し、使える情報を探してアンテナを張っています」

自由に能力を発揮して、世界で主導権を取るチャンスがある

創業者、本田宗一郎の志を原点とした「ホンダイズム」、年齢や職位にとらわれず腹を割って議論する文化「ワイガヤ」など、Hondaの企業風土はモノづくりに携わる人間にとって、他社とは一線を画す魅力がある。

「外から見たHondaの印象に、『自由にやらせてくれる会社』というものがあると思いますが、なんでも好き勝手にやっていいというものではありません。自由にやれるのは間違いないのですが、自由にやるためにはそれだけの責任を意識してほしい。それを覚悟したうえで、やりたいことがあったらどんどん言いなさいと勧めています」と屋敷氏。

「クルマは『楽しく移動できる空間を提供する』ことがいちばん大きな使命と考えるのがHondaです。クルマを自動で走らせる技術を開発しながら、人とどうインタラクションさせていくかは難しいところ。『自動運転といえども運転の楽しさを絶対に損なうな。むしろ高めてくれ』と常に言っています。そういった意味では、単に最先端だけを追求したい人には、当社は不向きかもしれません。ただ、この使命に共感し、クルマの未来を変えてみたいと思い、さらに高い技術をお持ちであれば、新しく来られた方でもすぐに能力を発揮して主導権を取り、世界と戦う機会があります。われわれと共に未来をつくってくれることをぜひ期待したいですね」

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