探そう、まだ見ぬ未来を。

ビジネスモデルの未来

世界中の知見をつなぐ、イノベーションの起爆剤となる

株式会社ビザスク

数十万人の知見が集まるデータベースを目指して

株式会社ビザスクは、端羽英子代表取締役CEOが2012年に起こしたスポットコンサルティング事業を行うベンチャーだ。「スポットコンサルティング」とは、ビジネス領域において、何かのテーマで「聞きたい」「知りたい」「相談したい」といったニーズを持つ人に対して実施する、1時間からのコンサルティング業務を指す。対応するのは同社サービスに登録しているアドバイザーで、現役の企業人やリタイアしたシニアの企業OB/OG、あるいは独立コンサルタントなど、さまざまな人が登録しており、日々多くのマッチングが生まれている。

ビザスクのサービスは2種類あり、1つはWEBマッチングによる「ビザスク」。登録されているアドバイザーのデータベースを検索し、ニーズに合致すると思われるアドバイザーを自身で選べるというものだ。電話や対面会議などで、1時間から相談できるようになっている。

もう1つはフルサポート・マッチング「VQ」。こちらは、専任のアカウントマネジャーが、クライアントごとに課題をヒアリングし、最適なアドバイザーを提案するコンシェルジュサービス。法人クライアント向けのサービスだ。必要に応じて「ビザスク」に登録していないアドバイザーをさまざまな方法を使って見つけ出し、口説くことまでもがサービスに含まれている。

スポットコンサルタントにおいては、多様な相談事に対応するため、アドバイザーの充実が何よりも重要だ。現在ビザスクには1万6,000人のアドバイザー登録がある。およそ7割がフルタイムの仕事を持つ人で、年齢は35~45歳が中心。2割は企業OB/OGなどのシニア。そして、残りの1割が独立してビジネスを運営している経営者やフリーランスなどだ。

「所属してきた企業も世代も異なる、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちが、自らのキャリアの中で得た知見を提供しようと登録してくださっています。今はまだ直接ユーザー登録をされる人は少なく、既存ユーザーの紹介やWeb広告でビザスクを知る人が多いのが現状です。一方で、講演会やマスメディアでビザスクを知り、関心を持つ人も徐々に増えつつありますね」と、端羽氏は語る。

登録者は、自身の知見が後進の役に立ち、またそれによって自身も新鮮な経験をし、成長できる。無論報酬を得るメリットもある。また、社会貢献の目的で取り組む人や副業禁止の企業に勤務する人のために、ビザスクでは報酬を寄付できるシステムも設けている。

自身の体験が「知見をシェアする」ビジネスのヒントに

20代前半で1児の母となった端羽氏は、かねてから「キャリアと育児の両立」には関心があったという。場所や時間に縛られない働き方はないか、自分のキャリアの強みを生かすにはどうしたらいいか、と考えていた。

「自分のキャリアの中でいずれは起業するんだろうな、という意識はありましたね。かつて在籍したファンドの上司から『仕事はできる。けれどもリーダーシップが君には足りない』と面と向かって言われたことがあって(笑)。それならリーダーシップを発揮せざるを得ない状況を自分で作り出そうと思っていたんです。でも、当時考えていたビジネスアイデアは、現在のスポットコンサルティングとはまったく違うものでした」

いよいよ起業しよう、という段階に入った頃、友人の紹介で急成長を続けるインターネットカンパニーの役員から話を聞く機会があった。温めていたビジネスアイデアや将来の展望を語るが、結果は散々。1時間近く、ひたすらダメ出しを受けたという。「ダメ出しを受け続けた最後の最後に『私、この1時間にならお金払える』とひらめいたのです。私にとってその時間はそれだけ価値あるものでしたし、実際に経験した人からの話を聞きたいと思う人は大勢いるに違いない、と確信したのです」

「聞きたい」個人へ、「アドバイスする」個人をつなぐ。そこで「知見をシェアする」のコンセプトが見えた。そして2012年3月にビザスクの前身walkntalkを設立し、同年12月に始動。2013年7月には経済産業省「多様な『人活』支援サービス創出事業」に採択され、一気に注目を集める存在となる。

知見を生かせば、みんな90歳まで働ける

ビザスクの登録者には現在の業務内容や待遇に満足しており、転職市場には出ることのない人材も多いという。そして、それこそがビザスクの大きな強みにもつながっている。

例えば、長い歴史を持つ日系メーカーなどは、新卒採用が今も主軸となっており、組織内で培われた経験やノウハウが外部に出ることはあまりないのが現状だ。しかし、新卒から大手企業で働いてきた人も、「1時間の相談に乗るだけ」という気軽さがあるため登録してくれるという。登録する側にとってみても、「自分の経験が果たして他の企業で生かせるのか」という市場価値を測るバロメーターの役割を果たしてくれるメリットがあるわけだ。

他にも専門的知見を眠らせているリタイアリー(定年退職者)も、「自分の知見が誰かの役に立つならば」とサービスに共感して利用してくれるケースが多いという。「一度サービスをご利用いただけた登録者から『ありがとう』という言葉が届くことも珍しくありません。自分の知見がこんなにも誰かに喜ばれるなんて、という気付きから、ビザスクのファンになってくる人も多くいらっしゃいます」

こうした知見のシェアが広く一般的にあれば、世の中の働き方を大きく変えることもできるかもしれない、と端羽氏は言う。

「家庭の都合などでたくさん働けない方でも、キャリアを生かせるスポットコンサルティングの案件があれば、空いた時間で働くことができる。定年を迎えた方でも、年齢と経験を重ねるごとに知見は深まるわけですから、知見のシェアがより一般的になることで生涯現役を果たしやすくなるかもしれない。定年退職後にアドバイザーとして他者と知見をシェアし、報酬を得るという働き方も出てくるでしょう。組織を離れても、90歳まで働くことがもっと自由に、やりやすくなる世の中が実現できれば」と端羽氏は語る。

ビザスクのスポットコンサルティングは「女性活躍」や「1億総活躍」というキーワードにも合致する。会社に帰属する従来型の働き方が中心の今の社会がすぐに変わることはなくても、5年後10年後はこのビジネスモデルが常識になっているかもしれない。

よそに学ぼう、優れたところはまねしよう

ビザスクは創業からわずか3年で「働きたいベンチャーランキング」で堂々1位に輝いている(Morning pitch Expo in トーマツベンチャーサミット2015「大企業で働く3000人に聞いた『働きたいベンチャーランキング』」)。2014年に1回目の資金調達を実施し、2015年7月のさらなる資金調達によって、十分に人材強化できる環境が整った。にもかかわらず、社員数は2016年6月現在でフルタイム18名だけ。リモートスタッフや学生インターンなどを含めても30名程度と決して大規模ではない。

「採用スピードを速めたい一方で、今後のビザスクのコアになる人材を迎え入れるわけですから、慎重に採用活動は進めています。ビジネスを推進する上で困ったことがあれば、私たち自らスポットコンサルティングを依頼するなどして乗り切っていますね(笑)」

現在、コンシェルジュサービスの1割強が海外進出や取引に関わるクロスボーダーの案件なので、機が熟せばシンガポールか香港に拠点を出すつもりだ。その「機」は「海外事業を立ち上げられる人が見つかったらすぐにでも」と端羽氏は言う。

知見のデータベース化とマッチングの高度な仕組み化を実現し、スポットコンサルティングの普及を推進するビザスク。その名は数年後、日本だけでなく、世界中の知見をつなぐデータベースとして、世界の「共通言語」となっているのかもしれない。

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