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ビジネスモデルの未来

「ドローン×映像」でロボティクス領域の地平を切り開く

株式会社ブイキューブロボティクス・ジャパン

ドローン(小型無人機)事業への期待が、あらゆる分野で高まっている。特にドローン×映像ソリューションの分野で独自性を発揮しているのが、株式会社ブイキューブロボティクス・ジャパンだ。Web会議・テレビ会議の大手である株式会社ブイキューブの社内事業から誕生し2015年に分社化した同社は、2016年1月に出村太晋氏が社長に就任。ベンチャーキャピタルから資本を入れるなどして、経営面でも独立経営も果たしている。

「僕らが実現したいのはロボティクスがソリューションとして当たり前に使われている社会です。ロボティクス領域が立ち上がるのはドローンからだと思っておりますので、まずは強みを持っている『映像コミュニケーション技術×ドローン』から取り掛かっています」

そう語る出村氏の言葉通り、ドローンはロボティクス領域のなかでも個人利用から商用利用まで、さまざまな用途で利用され始めている。国や自治体も積極的にドローンの活用を検討、推奨しており、業界にはまさに「追い風が吹いている」状態だという。

設備点検、警備・監視、災害対策にドローンを活用

幅広いドローンの活用の中で、ブイキューブロボティクス・ジャパンの領域は、設備点検、警備・監視、災害対策の3分野を中心に進めている。 例えば、神戸市と取り組んでいる実証実験のひとつが、山間部の道路わきでよく見かける崖崩れ防止のネット、ブロックの補強のための点検をドローンで代用するものだ。

見たい部分をクローズアップして撮影し、「土砂がどのくらいたまっているか」「ひびが入っていないか」「危険な兆候が他に見られないか」といった項目をチェック。普段は現場で点検を行う土木の専門家たちがオフィスの会議室に集まり、ドローンからリアルタイムで届く現場の画像を見て点検項目に沿ってチェックしていく……そんな働き方が遠隔地からでもできるかを模索している。

人間が点検作業を行うとき、危険が伴う場所は数多い。災害時の状況把握もしかりだ。高性能のズーム機能を備えたカメラや、温度を測定できるサーマルカメラ、夜間撮影が可能な赤外線カメラなど、用途に合わせたカメラを積み替えることで、対応できる範囲も広がる。ドローン活用が進めば業務の迅速化、効率化が進み、コスト削減も期待できるというわけだ。さらには、これまでの現場での作業中には見ることが不可能だった、空中撮影ならではの全体をそのままパノラマ状に引いた映像も撮影できるという。「単なるコストカットという側面だけではなく、今までは判別できなかった、より精緻な検査も十分に実現できるはず」と出村氏も胸を張る。

全自動ドローンシステムを独占販売。新たなドローンの使い方を模索

単にブームに乗ってドローンを買ってみたものの、活用しきれていない企業も多いという。ブイキューブロボティクス・ジャパンは、こうした企業に対して、ドローン活用のコンサルティングも行う。用途に応じて、どんな機種を選び、どんなカメラを搭載するかを提案し、使いこなすシステムを提案し構築する。ドローンが落下等により破損してしまう可能性もゼロではないため、それに備えた保険も加える。

出村氏は「ドローンのハードウェア(機体)はスマートフォンのようなもの」と語る。スマホの便利さの本質はアプリケーションだ。機体そのものは定期的にアップグレードされ価格競争も起きるが、ドローンもスマホのように、これから「使い方改革」的なものが起きていく、と出村氏は予測する。

「本体とドローンのアプリケーションには相性があります。例えばドローンにカメラを搭載したいとき、その選び方によって得られる情報のクオリティーが全く違ってきます。さらにそのカメラの設定をどうするか、オペレーションの立場で言えば、使う角度次第で、得られる情報はかなり変わってきます。これからは、そういったノウハウも含めた情報の質を追求する時代になります」

機体そのものよりも、ドローンに関連したサービスの市場の拡大を予測する専門家は多い。ハードウェアを手掛ける企業がソフトにも進出する流れも起き始めている。

「搭載したカメラをどの角度に向けるのかということも含めて、僕らはお客様の目的に合わせたソフトを提供しています。 案件ひとつひとつにきめ細かいサービスを、スピーディーに作っていかなければなりません。ソリューションという意味で、僕らは競合他社に比べて、かなり先行していると思います」

昨年秋には、シンガポールの企業であるH3 Dynamicsと業務用ドローンにおける戦略的パートナー提携を締結し、全自動ドローンシステム「DRONEBOX(ドローンボックス)」の国内独占販売を開始している。DRONEBOXを使うと、例えば「毎日午後3時に同じ場所で撮影する」という指示を一度送るだけで毎日定時にボックスの箱が開いてドローンが飛び立つようになる。仕事を終えてドローンはボックスに戻り、着陸した後は自動充電され、撮影した映像データは自動送信される。ボックスの外には太陽光パネルも付いており、外部電源がなくとも稼働可能だ。

「さらに、複数拠点で撮った映像をクラウド上で統合し、統合したデータを解析して、情報を得ることもできます。私たちは、DRONEBOXをコアにしてそこから技術を発達させていこうとしています」

また、DRONEBOXが箱型であることには、大きな意味がある。格納のとき箱は閉じており、機体にとっては屋根がある状態だ。またボックス自体に天候センサーが付いており、定刻になっても大雨や強風の場合、フタは開かない。DRONEBOXはまた、高性能なコンピューターでもある。IoTとして使う場合は、箱の中で一次解析を済ませたものをクラウドに送り、そこで二次解析を行える。箱の中で解析することで、送信データをサイズダウンできるメリットもある。

「元々は石油のパイプラインのようなものを点検するために砂漠に設置し、定時になったらドローンが飛び立って点検をするということを想定して開発されました。ただ太陽光パネルだけに発電を頼ると、ドローンを飛ばす回数も、送信情報にも制限が出てきます。理想的な設置場所は、今のところネットワークがあって電源もあるところの方が望ましいのです」

地域活性化にドローンを生かす道筋

ブイキューブロボティクス・ジャパンは、事業会社以外に、多くの自治体とも共同でプロジェクトを進めている。

「東日本大震災の後、太平洋側の自治体は災害に対する危機意識が非常に高くなりました。僕らはそのなかでも特に三重県、仙台市と取り組みを進めています」

三重県は南海トラフ地震が起きた場合に、津波の影響が予想される地域だ。ドローン活用で、人を派遣せずに津波被害に対応する方法を検討しているほか、ドローン活用は観光まで幅広い7つのテーマに及ぶ。

被災経験を持つ仙台市の場合は、実体験に基づいたテーマがあるため、使えるソリューションも求められてくる。2017年11月に開催される「世界防災フォーラム(仮称)」の場でもあるため、取り組みは世界に向けて発信することができる。地震や津波といった自然災害が多い「災害大国」である日本が災害対策にドローンを活用する事例を世界に届けることには大きな意義がある。

「仙台市で2016年11月、津波を想定した情報発信の実験を行いました。東日本大震災のとき、避難を呼びかけていた職員が被災してしまったことを教訓に、ドローンに大きなスピーカーを付けてそこから避難情報を発信することにしました。上空50メートルに飛ばすと半径300メートルくらいまで音が伝わることが実験で分かってきました。ほかにも遠隔操作の実験として、冬に雪山遭難を想定した訓練を実施。スピーカーと赤外線カメラを搭載したドローンを自動操縦で飛行させ、届いた画像で状況を把握しながら声かけを行うなど有効性が確認されました。一方で、災害が発生している現場でドローンを飛ばすことは危険も伴います。そうした要素も踏まえて、最適な運用方法は何かを模索している段階です」

ドローンについては多くの法規制はあるが、仙台市は国家戦略特区であり、自由度が高くドローンを扱えるというメリットがある。「雪山の飛行も本来は『目視外飛行』になるため、通常はできません。規制はありますが、どううまく付き合っていくかを考え、提言していくことが大切です。他にも地方では害獣対策や農作物の育成状況の確認、農薬散布などのニーズがあります。地方ほど、ドローン×映像の活用例は多くあるかもしれません」

「世界初」「日本初」に足跡を残す

今このタイミングでロボティクス分野に挑戦する醍醐味(だいごみ)は、どこにあるのだろうか。

「僕自身が社長を引き受けた理由でもありますが、全く新しいものを生み出す機会にはなかなか巡り合えません。僕らの手がける、ドローンの完全自動運用が商用化されるとそれは世界初になる。実証実験をやることで『日本初』とか『世界初』という試みに、僕らの名前を残していけるわけです」

ロボティクス分野は、社会の構造そのものを変える可能性を持っています。今までになかったことを成し遂げる、全く新しい市場、新しいサービスを作るチャンスには事欠かないというのが出村氏の考えだ。

「やりたいこと、試してみたいことは常に山ほどあります。ただ、新しいものが多すぎて何が最適解なのかは試してみないと分からない。だからこそ、企画する人間も開発する人間も、とにかくスピーディーであることが、この分野に挑戦するうえで重要な点だと感じています。推進力があり、どこまで前のめりになれるか。当社に限って言えば上司の言うこともほとんど聞かなくていいです(笑)。それ以上に信念を持って、突き進んでくれる人がいいですね」

今は公にできないものの、これまでの知見やノウハウを集約した、新しいドローンサービスも展開予定だというブイキューブロボティクス・ジャパン。まだ見ぬ市場を切り開く挑戦者として、さらに活躍の場は広がっていきそうだ。

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