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ビジネスモデルの未来

人気YouTuberが多数所属するプロダクションが切り開くネットビジネスの新たな可能性

UUUM株式会社

YouTuberの活躍がビジネスの糸口に

国内外の多種多様なカテゴリの動画が集まる「YouTube」。2005年にアメリカで設立され、サービスをスタートして以降、動画共有サイトの代表格として成長を遂げてきた。それに伴い台頭してきたのが、オリジナリティーあふれる動画の投稿によってインターネット界で人気を博す「YouTuber」である。日本でもHIKAKINやはじめしゃちょーなど、影響力のあるYouTuberが続々と登場。そんな彼らのマネジメントを担うのがUUUM(ウーム)株式会社だ。

「鎌田和樹代表取締役とHIKAKINはもともと友人として交流がありました。インフルエンサーとしての注目度が高まり、企業からの仕事の依頼が増えていくHIKAKINとの付き合いのなかで、YouTuberが内包するポテンシャルを感じ、彼らをサポートする事業を始めようと思ったのがUUUM設立の契機です」と渡辺崇取締役CFOは語る。

当初はYouTuberを媒介としてモノを販売するビジネスを行っていたが、業績は伸び悩んだという。一方でさまざまな企業から「動画で商品を紹介してほしい」という依頼が増えてきたため、YouTuberの活動を支援するビジネスに転換。それにあわせて、2013年11月にONSALE株式会社からUUUM株式会社に商号を変更した。

良質なコンテンツ制作に重要な「仲介役」の存在

インターネット上では名が知れているとはいえ、YouTuberも一般人。企業とのやりとりは慣れていないがゆえ、スムーズに事が進まないことも多い。そこでUUUMが間に立つことで、YouTuberのアイデアと企業の要望の擦り合わせがうまくいき、良質なコンテンツが誕生する。まさに「Win-Win」の関係だ。

渡辺氏は当時を振り返り「YouTuber、僕たちは『クリエイター』と呼んでいますが、そのクリエイター個人が抱えている課題を解決し、動画づくりに専念できる環境を整えようというのが一番の目的です。それがクリエイターのニーズとマッチしていたのでしょう。現在、HIKAKIN、はじめしゃちょー、SEIKIN、瀬戸弘司などのトップクリエイターを含む約2,000人のクリエイターをサポートしています。創業時は鎌田が地道にトップクリエイターに声をかけていたようです」と語る。

UUUMに所属しているYouTuberの活動の場は、大きく広がっている。企業とのタイアップはもちろん、イベント出演、グッズの販売、本の出版、アプリのリリースなど、さまざまなフィールドで大きな活躍をみせている。

高田順司執行役員は「動画のみならず、ファンといろいろな接点を持ちたいと話すクリエイターは多い。だからといって、彼らのほとんどは、芸能人のようにテレビに出たいと思っているわけではありません。それよりも『自分の思いを表現したい』という気持ちが強い。おのおのが撮影する動画の世界のなかで自分のクリエイティビティを存分に発揮したいと考えています。さまざまな制約が存在するテレビではなく、YouTubeという自由度の高い場所を舞台にしている点で、一般的な芸能プロダクションに所属している方々とはメンタリティが大きく異なるのでしょう」と、「YouTuber」と「タレント」の境界について分析する。

クリエイターは台本、演者、撮影、編集など、すべてを自らの手で行う。クリエイティブのすべてを自分で完結できる、その名の通り「クリエイター」だ。そうしてつくられた動画やキャラクターに引きつけられた、高い熱量を持ったファンが増えているという。

「クリエイターは人気を自身でつくりあげている部分があるので、一人一人が一つの“チャンネル”のような存在です。それに対してわれわれUUUMは、MCN(マルチチャンネル ネットワーク)の業態で、『HIKAKIN』や『はじめしゃちょー』というチャンネルを束ねている、いわばケーブルテレビのような存在ですね」

能動的なメディアだからこそ、App Store総合1位を生みだせる

UUUMでは、所属するYouTuberに対してマネジメントや動画制作、企業からのオファーを提供するクリエイターサポート事業と、YouTuberの感性を生かしたプロモーションプランを提供するインフルエンサーマーケティング事業に加え、2015年よりオリジナルのカジュアルゲームや、コミュニティアプリの提供・運営を行うゲーム、メディア事業に着手した。

「YouTubeの視聴者とモバイルゲームの相性は抜群です。特に短時間でプレーでき、操作もシンプルなカジュアルゲームは、YouTubeの実況コンテンツとしても最適。はじめしゃちょーが主人公の『はじめ兄さん』というアプリは、プロモーションを一切行うことなく、動画のアップやTwitterでのシェアといった彼の持つ情報発信力だけで、App Storeの総合1位を獲得できました。ゲームの面白さを知ったうえでダウンロードされている方が多いので、継続して長期間楽しまれているのが特徴です」という高田氏の言葉からも、YouTuberによるプロモーション効果の大きさがうかがい知れる。

視聴者は10代20代が中心で、所属クリエイターのチャンネル登録者数(YouTube上で、所属クリエイターのチャンネルをお気に入りに登録している人数)は合計で2,200万人。月間総合再生数は13億回以上に及び、一人当たり1日約7.5分見ている計算となる。テレビと異なり能動的に視聴しているメディアのため、紹介された商品やゲームに対して興味を抱きやすく、商品の売り上げ増やスマホアプリのダウンロード数向上などに結びつきやすいのだ。

企業とのタイアップ動画においても単なる商品紹介にとどまらず、「HIKAKIN氏が氷風呂の中でアイスを食べる」「木下ゆうか氏がうどんチェーン店の全メニューを食べる」など、YouTuberのキャラクターを生かしたコンテンツとなっているため、興味や親近感を抱きやすいのも利点だろう。

今後の展望を担うのは次世代のクリエイター

近年アメリカでは、動画コンテンツのマルチプラットフォーム化が活発になってきているという。オンライン動画はスマートフォンの普及と通信速度の向上により、一気に身近なものとなった。「いまはまさに個人がいろいろなプラットフォームに動画を投稿している時期で、それがどう普及し、変化していくかという過渡期だと感じています」と、渡辺氏は語る。

人口数の違いがあるとはいえ、YouTuberのような動画クリエイターの数も、動画自体の投稿数も、欧米と比べると日本は到底及ばない。しかしそれは逆に「ビジネスの可能性」を示唆している。2015年、UUUMでは成長途上にあるクリエイターをサポートする「クリエイターポータル」を立ち上げた。

ここではよりよい動画を制作するためのノウハウや分析ツール、無料楽曲、素材集ソフトなどを提供。著作権法や収益システムについての研修会も定期的に開催している。さらに同年、デジタルコンテンツの人材養成スクール・大学・大学院を運営するデジタルハリウッド株式会社とも業務提携。次世代の動画クリエイターの育成を支援する試みを積極的に行っている。

「これまで動画のエンターテインメントは、テレビと映画しかありませんでした。そこにインターネットが登場してオンライン上に無数の選択肢が生まれ、『自分で探すのに加えて、友人や知り合いがシェアしていたから見る』『この人が好きだから見る』といったかたちで、メディアの消費の仕方も変化し始めています。たとえプラットフォームが変わったとしても、個人でファンを抱えて動画を発信するクリエイターは強いですし、視聴者が将来クリエイターになることも大いにありうると考えています」という渡辺氏の言葉を受けて、高田氏はこう続けた。「クリエイター自身に価値を置く人がいる。その存在にこそ、ビジネスポテンシャルが潜んでいるのだと感じています」

「セカイにコドモゴコロを」。UUUMが掲げるこの言葉は、個性を輝かせるステージまでの道のりを照らし、次の時代を動かす原動力となっていくのだろう。

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