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ビジネスモデルの未来

「恋愛」と「家族」、時を経ても変わらぬ価値が新たなサービスを生む

株式会社TIMERS

「人と人のつながり」をビジネスの軸とした稀有なスタートアップ

AIへの期待と脅威が象徴するように、現在ほどテクノロジーが社会や人々の暮らしに変革をもたらしている時代はない。企業の命運も、テクノロジーが左右する時代になりつつある。また、新たなテクノロジーの台頭によって、従来では考えられなかった新たなビジネスモデルも続々と生まれている。こうした時代に「古き良きを新しく。時代を越えた価値を創造する」という、一見IT企業らしからぬビジョンを掲げているスタートアップがある。恵比寿に拠点を構える株式会社TIMERSだ。

博報堂出身でデザイナーでもある高橋才将CEO、同じく博報堂で新規事業開発に携わっていた田和晃一郎 COO、そしてDeNAで開発マネジメントをしていた椎名アマドCTOの3名によって2012年に設立された。「僕らが起業時によく話しあっていたのは『次に何が流行るか』『何が儲かるか』ではなく、『どんな時代になっても変わらない、人間にとって普遍的な価値を大切にしたビジネスをしたい』ということでした」と、椎名氏は述懐する。

そして彼らがビジネスのテーマに選んだのが「恋愛」と「家族」だった。いつの時代も、世界中のどんな場所でも、人々の幸せの本質的な部分を担うもの。そんな人間にとって根源的な価値を、最新テクノロジーで時代に応じた新しいかたちに変えていく。まさにTIMERSのビジョンに沿ったテーマだと言える。

たとえば2012年6月にリリースした「Pairy」は、恋人同士で使うカップル専用アプリだ。二人の思い出の写真やデートスポットを共有したり、チャットを楽しんだりと、二人だけの世界をより深く、盛り上げるためのツールだ。SNSがより多くの人とオープンにつながるために使われていた時代に、その真逆を行くクローズドなSNSサービスは新鮮だった。マスコミでも大きくとりあげられ、一気に人気アプリとなった。2年後の2014年5月にリリースした「Famm(ファム)」は、子育て中の家族向けアプリだ。アップするだけで月日ごとに写真を自動的に整理してくれ、子供の年齢も表示してくれる。もちろん夫婦同士、両親などとの写真の共有も簡単にできる。

「当時、社員誰にも子供がいなかったので『Famm』の開発にあたっては沢山のママにヒアリングをしました。そして多くのママから『子供の写真はたくさん撮るけれど、忙しくて整理する時間がない』という声を耳にしたんです。だからこのアプリでは、とにかく誰でも簡単に、時間をかけずに使えることを目指し、機能はできる限り絞りました」

二つのアプリは、極力シンプルなかたちでリリースした後、今日まで少しずつ機能を充実させてきた。「Pairy」にはフォトブックを簡単につくれる機能が追加され、映画やレンタカーなどを特典価格で利用できるクーポンの提供も行っている。「Famm」もリリース後、フォトカレンダーをつくって両親などに送れるサービスが加わった。今後もユーザーの声などを聞きながら、少しずつ機能やサービスを拡張していくという。

「ただ我々は、新たな機能の追加にはとても慎重です。機能を増やすのは簡単ですが、それによってユーザーが混乱したり、アプリとしてのエッジが失われてしまったりする可能性がある。機能追加をすべきかどうかは、常に社内で徹底的に議論しています」

ユーザーが実世界で幸せな時間を過ごせるように

「僕らは、ユーザーがアプリに没入する時間をいたずらに増やすことは目指していません。これらのアプリはフォトカレンダーやフォトブック、クーポンなど、オフラインのサービスに力を入れている。大切なのは、ユーザーが実世界のなかで大切な人との絆を深め、幸せな時間を過ごし、豊かな思い出をつくること。僕らはテクノロジーを使うことで、そのサポートをしたいのです」

「Pairy」も「Famm」も、類似のアプリが次々現れるなか、多くのユーザーから根強く愛用されている。アプリレビューでも数多くの高い評価を得ていることも、こうしたブレないスタンスにあるのだろう。例えば「写真のアップロード時間を極限まで早くする」といった、地味ながらユーザーにとって最も大事な部分に徹底的に力を注いできた成果が、今実を結んでいるともいえる。

「うちは代表がデザイナーであることもあり、UIやUXには徹底的にこだわります。インスタグラムやフェイスブックなど、世界規模で多くのユーザーに愛されているアプリを常に研究し、良い所は参考にし、足りないと感じれば新しさを追求し続けてきた。画像レコメンド機能の精度も常に高め続けたいと思っています。意識されることは少ないかもしれませんが、アプリを支える技術レベルはかなり高いという自負もあります」

エンジニアが最高のサービスを追求できるよう、環境づくりもぬかりない。同社では、サーバーなどのインフラは極力、自動化、省コスト化し、AWSやGCP、Firebaseなどのクラウド系サービス、BaaSなどを早くから積極的に導入してきた。技術、デザインに対する感度は非常に高い。

「メンバーによく言うのは、〝巨人の肩にのって戦おう〟ということです。他社のサービスや技術でカバーできるところは極力おまかせし、自分たちは自分たちにしかできない大事なところに集中すべきだと思うのです」

スマホやアプリ、SNSへのこだわりはない

椎名氏は、もともとDeNAでモバイルゲームプラットフォームの開発マネジメントに携わっていた。「Pairy」の構想を温めていた高橋氏と田和氏からの技術的な相談にのっているうちに、彼らのビジョンに共感し、ともに会社を設立することにした。当時、DeNAは絶頂期ともいえる時期だったそうだが、本人は淡々としている。

「もともと独立志向が強かったので、自分としては自然な流れでした。DeNAの仕事は楽しかったし、とても恵まれた環境でした。でも、その先にどんな困難が待っていても、例えどんなに過酷な環境でも、絶対に成し遂げたい。そんな信念をもてたのは、TIMERSの仕事のほうだったんです」

当初、「Pairy」はほとんど一人で開発を開始したが、少しずつ開発メンバーも増え、現在は15人のエンジニアを率いるまでに組織が拡大。会社もビジネスもようやく土台ができあがり、これから大きく飛躍する段階に入った。こういうステージの企業だからこそ経験できることは計り知れない、と椎名氏は言う。

「システムに必ずバグがあるように、どんな会社にも様々な問題点があります。急成長を遂げている会社ならなおさらです。でも、そのような問題を前向きにとらえ、一つずつ改善し、より良い会社にしていく。そんな体験をワクワク感じられる人にとって、うちは最高の環境だと思います。よく目にする言葉かもしれませんが、TIMERSは今がまさに第二創業期。今、我々の仲間になってくれた方は、後から振り返って『あの会社は自分が大きくした』と胸を張って言えるはずです(笑)」

今後、AI やクラウド技術、デバイスなどはさらに進化し、今では想像できないサービスも生まれることは間違いない。しかし、TIMERSのビジョンが揺らぐことは「ありえません」と椎名氏は断言する。

「テクノロジーの進歩は驚くほど早い。10年前にはほぼ普及していなかったスマートフォンが、今ではプライベートでもビジネスでも不可欠なデバイスとなっていますが、これもいずれは時代遅れになるでしょう。僕たち自身、実はスマートフォンやアプリ、SNSといったものに対するそれほどのこだわりはありません。今、たまたまこれらが有効なツールだから使っているだけです。でもユーザー同士の結びつき、絆はこれからもずっと変わらない。なかでも恋愛と家族は、人間にとって一番大切で強い絆です。そこをしっかり見すえ、お客様により高い価値を提供することを考え続けていく。そこをブレずにやりきることが、自分たちの存在価値であり、使命だと考えています」

激動の時代に、企業は生き残りをかけた熾烈な競争を繰り広げている。今後、どのようなビジネスモデルが現れ、成功するかは、誰にもわからない。ただ、そのような時代に新たな活路を開くのは、時代を超えた価値を愚直に追求する、TIMERSのような会社なのかもしれない。

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