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ビジネスモデルの未来

大学生が創業した会社が、日本の教育現場を変えていく。エドテックのけん引役が考える、教育の未来予想図

スタディプラス株式会社

勉強仲間同士で励まし合う仕組みこそが、学習継続のセンターピン

今、教育現場で大きな変化が立て続けに起きている。センター試験廃止を筆頭とした高校・大学接続改革、小学校での外国語教育の義務化、世界基準のリーダー育成を目指したスーパーグローバルハイスクールの設立などといったトピックスも、大きな変化の一部にすぎない。こうした変化のうねりのなかで、期待を集めているのが、テクノロジーが教育分野に進出してくる動きだ。

「教育×ITのことをEducationのEdとTechnologyのTechで『EdTech(エドテック)』と呼びますが、エドテックという言葉が日本に入ってきたのはおそらく2011年くらい。その意味ではエドテックの先駆けとしてスタートし、今に至っている、というところです」

そう語るのは、スタディプラス株式会社廣瀬高志代表取締役だ。スタディプラスは2010年5月に創業したスタートアップ。主事業である学習管理プラットフォーム「Studyplus」は、わずか6年で260万人以上が利用するまでに成長している。

廣瀬氏は1987年の生まれ。慶應義塾大学法学部在学中にクラウドスタディを創業し、2013年5月にスタディプラスに社名を変更。会社設立時で23歳。現在でも30歳という若き起業家だ。「Studyplus」は、勉強の習慣を支援し、学習のモチベーションを高めることを目的としている。

「具体的には勉強の記録をつける機能がコアになっています。目標を立てると、進捗(しんちょく)率をグラフで可視化できるようになり、SNSの機能も備えています。友人や同じ塾に通う勉強仲間と互いに励まし合うことで、勉強を楽しく継続することができます」

このサービスを思いつき、事業化しようとした背景には、廣瀬氏の高校時代の原体験が影響しているという。東大にトップ合格をした先輩に対して、「どうすれば合格できますか」と聞いたところ、記録ノートをつけるべきだというアドバイスをもらったという。「驚いたのは問題を解くノートではなく、どの教材をどれくらい勉強したかの記録ノートだということでした。『面倒だな』と思いながらも毎日、記録し続けていると少しずつ効果を感じるようになってきたんです」

アドバイスを実践し続けていくことで、計画を立て、それに基づいた勉強ができるようになった。さらに、記録をつける行為が励みになり、勉強が楽しくなってきたという。そして思わぬ収穫として「どの参考書をどれくらいのペースで勉強すればどれくらいの学力になるのか」ということもわかるようになったと、廣瀬氏は言う。

「ただ、最初は勉強を続けること、そして記録し続けることに対する抵抗感や拒絶感がありました。結局のところ、勉強を続ける上で一番難しいのは記録することより、モチベーションを維持させることだと気づきました」

そこから廣瀬氏は学習の進捗管理をしてくれるだけでなく、モチベーションも維持してくれるサービスというヒントを得た。ちょうどスマートフォンが普及しはじめたタイミングでもあり、学習管理機能とスマートフォンをドッキングさせた。「studylog」というサービスをリリースしたが「これはぜんぜん、当たりませんでした」と、廣瀬氏は振り返る。

「studylog」はスタート時、TwitterやFacebookと連携はしていたが、SNSの機能は含まれていなかった。しかし、ユーザーからの声に「勉強を頑張っている人と交流したい」「どんな勉強をしているのかを知りたい」というのがあり、改めてSNS機能を実装した学習管理SNS「Studynote」としてリリース。これが大ヒットを記録した。この流れをくんで誕生したのが「Studyplus」だ。

「実は、勉強は励まし合うことが重要なんだとわかりました。SNS機能を発展させ、ユーザー同士でコミュニティーを作って交流できるようにもしています。例えば、同じ志望校の人同士でコミュニティーを作る。すると、わからない問題を投稿する人と、それに回答してくれる人が現れ、学習意欲が向上するという流れが生まれます。そういうユーザーの使い方を見ていると、必要な機能追加も分かってきます。ユーザー間のコミュニケーションのとり方を観察し、問題のキャプチャ画像をアップロードできるようにも改良すると、やはり反響が大きかったです。今でも常にユーザーの声をもとに改良を進めるという方針は変わりありません」

Studyplusで蓄積したデータを活用

(画像は、Studyplus for School導入事例の発表イベント(左からまちなか鳳雛塾アドバイザー熊野謙氏、廣瀬氏、デジタルハリウッド大学大学院教授・スタディプラス顧問佐藤昌宏氏)

「Studynote」のリリースから5年が経過し、ユーザー数を着実に伸ばしているなか、廣瀬氏は既に次の一手、二手を打ち始めている。

「最近では塾の先生にダッシュボード機能を提供する『Studyplus for School』というサービスをスタートさせています。塾の先生の課題は自分が受け持っている生徒がどのような教材で、どれくらい勉強しているのかを把握することにある。そこで『Studyplus for School』で『Studyplus』を使っている生徒の記録を先生が可視化できるようにしました」

面談などで生徒の学習状況を把握している塾は多いが、Studyplus for Schoolを活用すると、面談の時間を把握ではなく、具体的な学習指導に充てることができる。口頭でのやり取りに発生しがちな思い込みや認識のズレにも気づきやすくなった。

「塾の先生は生徒とは塾でしかコミュニケーションがはかれません。しかし、『Studyplus for School』であれば塾で会わなくともコミュニケーションが取れる。学習の質問に対してその場でレスを返すことができます。接する時間が短いからこそ、こうしたつながりが大きな効果を生みます」と廣瀬氏は自信をのぞかせる。

また、ここでもSNSの機能が活躍する。先生と生徒の縦のつながりも形成でき、先生が生徒を励ますことができるのだ。このようにして7年間かけて蓄積されたデータは、今後さまざまな形で活用できる可能性が広がっている。

「多くの学習塾は『模擬試験で何点取れば合格する』というデータは持っていますが、『どんな教材で、どんな勉強を何時間やれば、模擬試験で何点取れる』というデータは持っていません。その一次情報を持っていることが、私たちにとって大きな財産となっています」

さらに「Studyplus」で成績管理ができる機能も2016年に実装させた。これによって学習のプロセスと結果のデータの両方を得ることが可能となった。つまり「Studyplus」は、東大に合格した生徒が、どんな教材を利用し、どれだけ勉強したことで合格したかといった定量的なデータを保有していることになる。こうしたデータをもとに、廣瀬氏は今後人工知能(AI)も利用してビジネスへとつなげていくことを計画しているという。「行きたい学校に行くための適切な勉強方法を、個人の習熟度や得意な勉強スタイルなどにあわせて柔軟に提案できるようになるかもしれません」

日本の教育分野の発展のために

スタディプラスではStudyplusAPIを無料で公開しており、アプリを活用して勉強すると自動的にStudyplusに記録されるようにもしている。また、資格を取りたい大学生や社会人へもサービスを広げつつある。とはいえ、少子高齢化と言われている時代だ。Studyplusを強化し、高校生以外へも展開しているとはいえ、将来性はどうなのだろうか。

「もちろん、少子化に対する影響は否定できません。確かに教育産業を見ると横ばいか、減少傾向です。しかし、教育×ITのエドテックという領域での市場規模は拡大しています」

日本は、未来投資戦略2017を掲げ、人材の強化を図ろうとしており、国家戦略としてエドテックに取り組んでいる。一方で、日本は海外よりテクノロジーの活用が遅れているというのはよく聞く話だ。スタディプラスにはいち企業としてだけでなく、教育分野における国家戦略の一翼を担う期待も寄せられているといっても過言ではない。

そのため、スタディプラスは今後、さまざまな職種で人材を強化するのだという。事業成長を加速させるためのセールス、経営戦略を推進できるCFO候補などがその一例だ。「会社が大きくなるにつれ、ユーザーだけでなく、社会からの期待も大きくなっていると感じます。日本という国が教育にもっと本気で取り組める環境をつくるためには、私たち自身が上場という成果を残し、より社会にインパクトを与えられる仕組みづくりをしなくてはならない。さらなる飛躍の時期に来ていると感じています」

廣瀬氏の言葉には力強さが宿っている。まだ30代の創業者は、自身の体験から生まれた「勉強する楽しさ」を伝えるために、さらに挑戦を続けていく。

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