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ビジネスモデルの未来

SnSnap社が創出する心地いいO2Oマーケティング……読売ジャイアンツも導入する『イベント×テクノロジー』の未来とは

株式会社SnSnap

Instagramの台頭により、「インスタ映え」「フォトジェニック」など女性を中心に個人ブランディング熱が急速に高まっている。2017年7月ごろにSNSで話題をさらった「ナイトプール」は代表的な事例だと言えるだろう。こうした事象を見ても分かるようにイベントに参加することと、SNS上での発信はセットになったとも言える。一方で、イベント開催側にはそうしたユーザーたちが起こすSNS上での盛り上がりを計測する術が見つからないという課題が生まれていた。

リアルイベントの集客には成功しているが、「今回の来場者数はこうだった」、「グッズの売り上げはいくらだった」など、来場者の行動について現場で把握できるデータには限界がある。また、イベント参加者にハッシュタグを付けて拡散を誘導しても思い通りにいくものではない。

こうした背景のなか、O2Oマーケティング領域で注目を集めているのが株式会社SnSnapだ。彼らのSNSフォトプリントサービス「#SnSnap」は約2年間で約500以上のイベントへ導入されている。読売ジャイアンツやJリーグといったスポーツ業界をはじめ、GIVENCHY、KENZO、GIORGIO ARMANIなどアパレル・コスメ業界、はたまたロックバンド「GLAY」主催のハロウィーンイベントなど、イベントやパーティーの現場で頭角を現している。

同社が積み上げてきたこの華々しい実績の裏側にはどんなドラマがあったのか。CEO西垣雄太氏とCMO目良慶太氏は、時代を1歩先駆けることの重要さと、『イベント×テクノロジー』の未来を見ていた。

ユーザーとの接点を「点」ではなく「線」に変える

SNSフォトプリントサービス「#SnSnap」は、イベントやパーティー会場に訪れた来場者が、指定のハッシュタグを付けて写真をSNSに投稿すると、会場内に設置された専用機材から写真を印刷できるというもの。イベントや主催企業のオリジナルデザインのカードやステッカーなどユニークな記念品としてその日の思い出が手に入る。現在は、オリジナルフレームやスタンプ付きの動画撮影が可能な「#MirrorSnap」など全8種類のラインナップが提供されている。同サービスが誕生したきっかけについて西垣氏はこう語る。

「設立当初の2015年ごろは、海外でInstagramが飛躍しているのは耳に入っていましたが、日本ではこれからという時期でした。ただ「ハッシュタグを付けてSNSに写真を投稿してね!」とスタッフが呼びかけるのみの簡易的な施策を一部のブランドが始めていました。その時期に、とあるイベントでファッションスナップの写真を本人に渡しているところを見て、『SNSに投稿した写真がそのまま印刷できたら面白いのではないか』と思いました。またデータを取得して、効果測定を組み合わせて提供することに価値が生まれるのでは、と考えていました」

このアイデアを実現させたのがInstagramの公式API提供だ。SnSnap社はユーザーの投稿数・リーチ数・いいね数などイベントの盛り上がりを示すデータとして、専用機材を導入した企業や団体に対し提出している。

「ハッシュタグを付けて写真をSNSに投稿すると、その写真をカードとして持ち帰ることができます。これはミレニアル世代以降のユーザーにとって新しい体験になっています。また、カードの裏面もオリジナルデザインを印刷できるようにしたり、当たりくじを付けたりとイベントごとにユニークな施策になるようサービスを改善してきました。イベント運営企業と連携し、機材自体にも遊び心を盛り込むことでイベント参加者たちの自然なSNS投稿につながっています。こうしたサイクルができているため、当社にしか収集できないユーザデータが生まれています」と、目良氏は分析する。

同社の施策は海外でも受け入れられた。現在では、アジアだけでなく、アメリカやヨーロッパでも導入実績があるという。世界的にもデータ収集・提供を含めたフォトプリントサービスは存在していなかった。競合がいない状況のなか、アメーバ式に『#SnSnap』への関心は高まったという。また、同社では『#SnSnap』で蓄積した31億6,600万超のSNSアカウントデータをもとに、ターゲティング広告『REALAD』を2016年10月から展開している。今後もイベントへの導入が増えるたびに精度の高い広告がユーザーへ配信される仕組みだ。

リアルな場でユーザーとの接点を作る『#SnSnap』とその接点(データ)をWeb上で活用する『REALAD』による永続的なO2Oマーケティングについて、西垣氏は点ではなく、線でユーザーとのコミュニケーション戦略を考える必要性を説いている。

「弊社と年間で契約する企業も増えてきました。1つ例を挙げると、『ハロウィーンのイベントで何十万ものリーチを獲得できたから成功』という考え方ではなく、『ハロウィーンイベントで獲得できたユーザーを、次のクリスマスにどうつなげ、ファン化してもらうか?』という発想が大切だと考えています。そして、オフラインとオンラインを切り離さないことが、これからのマーケティングに重要なポイントとなるでしょう」

企業広告ではなく、身近な友達からの情報を重視する時代

『#SnSnap』を初導入したのは、海外の生活雑貨ブランド。O2Oマーケティングで新しい戦略を求めていた同ブランドは、いち早く『#SnSnap』に関心を向けた。西垣氏は当時をこう振り返る。

「名古屋店のオープニングイベントで、パーティーグッズと一緒に写った写真にハッシュタグを付けて投稿するという施策でした。『Instagram』は2015年にはすでに海外で価値を発揮していたのですが、日本はまだ『Twitter』がトレンドの中心という状況でした。『Instagram』で何か新しいことができないか?というニーズに応える形で1社目が決まりました」

日本で『Instagram』を用いた企画を欲していたブランドと、先駆的に『Instagram』のフィールドで攻めようとしていた『#SnSnap』。ファーストクライアントにしてベストカップルが誕生したと言っても過言ではないだろう。事実、この事例は多くのメディアで取り上げられ、同社には引き合いが相次いだという。

費用対効果を見たときに、店舗でイベントを実施するよりもWebに予算を投下した方が効率的という発想もある。だが、『#SnSnap』を活用することで、リアルイベントとWebを組み合わせた情報発信が可能になる。これは、リアルイベントの価値を高めることにつながっているという。そして、ユーザーの自発的な発信による影響について目良氏はこう補足する。

「SNSから情報を取得することが当たり前の時代になりました。そこで影響力があるのは、広告よりも友だちの投稿だと思います。ユーザーが楽しいと思った投稿により、店舗に行ってみたくなる。そうした次のアクションを起こすことができるのは大きな点でしょう」

O2Oマーケティングの重要性がより増す未来に

「SNSはどんどん変わってきているし、ユーザーも成長し、目が肥えてきています。『Instagram』が日本に来た当初、『Twitter』と使い分けている人なんていませんでしたよね。今はSNSによって特徴が出てきているからこそ、情報の質が大切になってくると思います。楽しいプライベートの話題が見たいのに、ビジネスライクな投稿の発信が多いと気分が盛り下がってしまう。誰でもメディアになれる時代に、正しいクリエーティブを届けられるよう整えていくのが我々の役割です」

O2Oマーケティングのこれからを西垣氏に問うと上記の答えが返ってきた。ユーザー自身も正しい情報を求める時代には、広告ではない本当の声にこそ価値があるという見方だ。では、テクノロジーの進化を受け、リアルイベントはどう変化してくのだろうか。西垣氏は体験の価値が上がり続けると予測する。

「音楽や動画はストリーミングを利用すれば、どこでもコンテンツに触れられるという世界観ですが、誰とどういう服を着て、何を飲みながら何を聞くのかって、ハイレゾでもVRでも、つまりどんなに技術が発達しても体験できないことです。個人的な意見ですが、今のスマホアプリよりも1990年代にゲームボーイの通信ケーブルを媒介していた頃のほうが、友達同士が集まるという点でよっぽどソーシャルだった印象があります。それだけリアルの体験というのは重要だということです。デジタルが進化すればするほど、リアルの価値も上がり続けると思います」

ソーシャルという言葉の意味を改めて調べると、「社会的・社交的」という言葉に行き当たる。西垣氏が提言したように、ただネットを介した薄いつながりではなく、本質的な人と人とのつながりがテクノロジーにも求められてくる。

現在、SnSnap社は3期目に入り、社員18名。役員、業務委託、インターン含めて40名という構成だ。Web系をルーツに持つメンバーが多いため、イベント運営の現場では悪戦苦闘を重ねてきた。しかし、大変なだけではない。「これまではずっと広告周りの仕事をしていたのですが、リアルなイベント現場で来場者たちが喜んだり驚いたりしている姿を見ると、これまでになかった充実感を感じました。最初は手伝うだけのつもりでしたが、いつの間にかどっぷりその魅力にはまってしまいましたね」と、目良氏は同社にジョインした理由を語る。

主戦場はインターネットとリアル。他社とは少々異なる事業がSnSnap社にはある。そして、常に世の中にないものを生み出す覚悟が同社にはある。すべては顧客とその先のエンドユーザーの満足のために。志を持った経営者とSnSnap社のメンバーにO2Oマーケティングの未来を期待したい。

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