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ビジネスモデルの未来

印刷業界を変革したラクスルが トラック物流業界の構造改革に挑む

ラクスル株式会社

物流サービス「ハコベル」を立ち上げた狙い

ネット印刷サービス「ラクスル」で、印刷業界に破壊的ともいえるイノベーションを巻き起こしたラクスル株式会社。同社が2015年12月、オフィス移転とともに新たな事業を開始した。それが物流サービス「ハコベル」だ。

「ハコベル」のコンセプトは、一言で表せば「Uberの物流サービス版」だ。印刷機の非稼働時間を有効利用することで、格安で高品質、かつ短納期での印刷物提供を可能にした「ラクスル」と同様、運送会社のトラックの非稼働時間を活用している。「PC・スマホから3分で注文完了」「最短1時間で集荷」「注文前に見積価格が分かる」など、旧態依然としていたトラック物流業界に画期的な仕組みを導入したサービスである。

「印刷業界もトラック物流業界も、中小企業はいかに無駄な時間を減らし、業務効率を高められるかが大きな経営課題としてありました。インターネットの力で印刷業界を変革した私たちにとって、同様の悩みを抱えるトラック物流業界を見て見ぬふりはできなかった。そして、この物流サービスへの挑戦は、私たちが『ネット印刷サービスの会社』から、中小企業にとって不可欠な『ビジネスプラットフォーマー』になれるかどうかの試金石だと考えています」。そう語るのは、代表取締役の松本恭攝氏だ。

仕組みを変えれば、世界はもっとよくなる

古い構造が残る産業に新しい仕組みを構築し、ビジネス習慣までも刷新する。インターネットの力によってイノベーションを巻き起こしてきたラクスルが目指す未来。それは、日本の企業の約99%を占める中小企業に商売革命を起こし、日本経済を活性化すること。この一点に集約されている。

印刷業界とトラック物流業界は、いずれも大手企業数社だけで市場シェアの大半を占める寡占状態が続いており、残りのパイを何万という中小企業や個人事業主が取り合うという構造ができあがっていた。そのなかで、印刷業界の古い構造に風穴を開けたネット印刷サービス「ラクスル」の売り上げは3年間で21倍に伸長。この爆発的な成長を実現したラクスルが、印刷業界と同様の課題に悩むトラック物流業界に打って出たのは、ある意味必然ともいえるかもしれない。

同社取締役を務める永見世央氏は「『ラクスル』では安価、高品質、短納期という3つのメリットがありましたが、物流サービスだと、コスト面はやはり大手企業に比べて劣ってしまう。そこで『ハコベル』は集荷や配送のスピード感、利便性、荷物の大きさや重量に左右されない柔軟性で勝負するビジネスモデルにしました。大手企業と共存しながらも、中小企業に新たな市場を創出することが私たちの役目だと考えています」と力強く語る。

日本には挑戦的な起業家が少ない。だから、ラクスルが始める

既存の産業にシェアリングエコノミーの概念を組み入れ、変革をもたらし続けるラクスル。トラック物流業界の市場規模が約14兆円にのぼるという試算もあり、「ハコベル」の誕生は数兆円というスケールでトラック物流業界にインパクトを与える可能性も秘めている。そして、松本氏は「まだまだ日本、そして世界には課題を秘めた巨大市場が存在している。大切なのは、そこにチャレンジする一歩を踏み出せるかどうかです」と断言する。

「『このビジネスはいける。社会貢献につながる』という思いがあっても、解決すべき課題が山積しているのを見ると、そこで動きが止まってしまう人が多いのではないかと思います。海外に目を向ければ、欧米はもちろん、アジア諸国でもネット印刷サービスは続々と立ち上がっている。そうしたチャレンジマインド旺盛な起業家がどんどん現れて、お互いに切磋琢磨しあえる関係が作れれば、この市場はより良く変えていけると確信しています」

インターネットの登場により、個人の生活は劇的に改善された。地図や時刻表を持ち歩く必要はなくなり欲しい情報を欲しいときに検索できるようになった。しかし、多くの中小企業はまだまだインターネットの恩恵を享受しきれていないと松本氏は言う。誰もやらないなら、ラクスルがやる。その強い決意と共に、日本のベンチャー企業を代表する存在にまでなったラクスルは、その歩みをさらに速めようとしている。

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