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ビジネスモデルの未来

Web上で心の通った接客を。リアルタイム解析ツール「KARTE」の可能性

株式会社プレイド

「人と人」。忘れがちな商売の基本を取り戻す、革命的プロダクト

インターネットが私たちの生活に根付き始めてから20年近く。「ネットショッピングはもうライフスタイルの一部」という方も少なくないだろう。総務省が「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究(平成27年版)」において、ネットショッピングの利用率を調べたところ、「利用する」と回答したのは72.2%。驚くべきは、20代以下や30代の利用率が70%弱にとどまったのに対し、40代、50代、そして60代以上の利用率が70%を超えた点だ。

「実店舗より安い」「品ぞろえが豊富」「時間が節約できる」「外出しなくてもよい」など、ネットショッピングのメリットはさまざまだ。一方で、デメリットも存在する。ネット上ではコミュニケーションが少ない。ネットショップをはじめ、さまざまな仮想上のWebサービスで今強く必要とされているものの1つが「接客」だ。

実店舗で何か商品を購入したり検討したりする際には、接客サービスが付いてくる。インターネットは情報の双方向化を実現したが、ネットショッピングに関しては店舗の品ぞろえや価格、キャンペーン情報をWebサイト上やメーリングリストなどで一方的に発信するだけで、相互なコミュニケーションはほとんど存在していなかった。

リアル(現実)と同じように人間的な「接客」が実現できれば、購入を検討しているユーザーの背中を押すことができ、画一化された表現やサービスに陥っているWebコミュニケーションが氾濫するなかで他社との差別化につながる「個性」も生み出せる。ネットショッピングは非常に便利だが、効率化とともに「人と人」という商売の基本をおろそかにしてしまっていたのかもしれない。

そうした現状にいち早く気付き、ユーザー一人一人に合った接客をリアルタイムにできるツールを開発した、注目のスタートアップがある。あらゆるサイトでリアルタイムなWeb接客を可能にするWeb接客プラットフォーム「KARTE(カルテ)」を開発した株式会社プレイドだ。

CTOとの運命的な出会いが、
機械学習×マーケティングという価値を創造

「KARTE」では、訪問回数や購入履歴、閲覧履歴、流入元、SNS情報、利用デバイスなど、あらゆる情報をユーザーごとに可視化し、それらを自由に組み合わせてコンタクトを取りたいターゲットを瞬時に絞り込むことができる。それによりWeb上で効果的な接客を行うことができるのが、「KARTE」の最大の魅力となっている。従来のWebマーケティングが全体最適だったのに対し、「KARTE」を活用することで個別最適を追求できるようになるのだ。

この「KARTE」開発を着想する土台となったのは、倉橋健太代表取締役が新卒入社した楽天株式会社で積んだ「楽天市場」のWebディレクション経験。フィーチャーフォンからスマートデバイスへの移行が進むなど、Webマーケティングの大転換期にさまざまな経験を積んだという。何万人もいるお客様の購入情報や行動情報を活用して、いかに売り上げを上げていくか。日々試行錯誤を繰り返してきた経験が「KARTE」の原点となっている。

「最初から今の『KARTE』のようなサービスを作ろうとは思っていなかったんです」と、倉橋氏は語る。起業することはかねてから考えていたという倉橋氏だが、具体的なアイデアなどは特に持ち合わせていなかった。「独立したのは28歳。まずは食べていくためにソーシャルアプリの開発やECサイトのコンサルティングなどから始めました」

その後、「自分が食べたいものをソーシャル上で探せるようなサービスがあれば」と考え、実名制の飲食店検索Q&Aサービス「foodstoQ」をリリース。店舗検索メインではなく、人と人を結びつけることで、おススメのお店が見つけられるというものだったが、軌道に乗せられず、あえなくクローズすることに。「この結果は残念でしたが、振り返ってみれば、目指していた世界観の根っこは一緒だと思います。当時からWebの情報を正しくユーザーに向けよう、と考えていたんでしょうね」

「すべてリセットしてやり直そう」。そう再出発を志した折に倉橋氏が出会ったのが、現在CTOを務める柴山直樹氏だった。柴山氏は当時、東京大学の博士課程で機械学習や統計を研究していたが、実地の経験を積みたいという欲求に強く駆られていた。そんな柴山氏と倉橋氏は出会ってすぐに「まるで幼なじみだったのでは」と思えるほどに意気投合したという。二人で議論を重ねていくうち、見えてきたのは「Web上における個客体験の構築」というテーマだった。

「着想から『KARTE』のリリースまで、2年という期間を要しました。プロダクトを作り直すことは何度もありましたが、方向性は常に一貫していましたね。ECは本来生活を便利にしてくれるはずなのに、情報過多になっていたり、ユーザーフレンドリーでない部分が大きすぎて、逆に不便になっていたりする部分があったんです。そこに商機を見いだしました」

現在では800社以上が導入。のべ2,000人が運用するWeb接客サービス

彼らが「KARTE」を作る上で重視したのは大きく分けて3つ。とりわけ特徴的なのが、個客の可視化だ。

「今も数多くのアクセス解析ツールは存在します。それらは現在Webサイトを見ている人数は分かりますが、どういう人たちが来てくれているのかまで見えていなかった。私はこれを『顔がない状態』と呼んでいますが、来訪してくれた方の情報がより精緻に取得、蓄積できていれば、その方にあった接客ができる。相手の顔がはっきり見えるようになり、サービスと利用者の距離が縮まることで、実店舗と変わらないWeb接客が可能になると考えています」

「何度訪問してくれているか」「会員登録は完了しているか」「過去に購入経験はあるか」「流入経路はどこか」など、膨大な情報をタグ化し、それらの情報をビジュアライズすることで、「KARTE」は誰でも簡単に、直感的に情報を分析できるようになっている。

リアルタイム性にもこだわっている。実店舗でもWeb上でも接客のタイミングは非常に重要で、1秒2秒で心理状況は大きく変化してしまうという。ゼロコンマ1秒単位でサイト内の動きを把握できるよう、システムはスクラッチで開発した。

さらに「KARTE」では収集できる情報に関しても、どんな情報でもインプットでき、またアウトプットにつなげられるように構成されている。LINEやFacebookなどでのタイムライン広告やバナー広告などに加え、サイトを再訪してくれた方に特別クーポンを付与したり、チャットでのお問い合わせフォームを個別に表示したりと、ユーザーアプローチのパターンも数多く用意している。

「すべての訪問者にチャットのウインドウを見せるのは押し付けがましくなりますが、今まさに購入を悩んでいるお客様の背中を一押しするには有効な手段になりえます。もし洋服を購入するのであれば、その方が過去に購入したサイズが分かっていれば、『以前購入いただいた商品とほぼ同じサイズ感で着られます』などというアドバイスができるようになるんです」

こうしたアイデアが功を奏し「KARTE」は現在、ECショップだけでなく、不動産や銀行といった業界でも数多く利用され、サービス開始から1年で800社以上が導入。のべ2,000人が運用するサービスにまで成長した。月間の解析売り上げ金額も150億円(2016年2月時点)にまで伸長。「今後はWeb接客を通じて、あらゆるサービスの体験価値を向上させたい」と、倉橋氏は語る。

「今後はオンラインとオフラインをしっかりつなぎあわせ、オンラインの強みであるデータ性、オフラインの強みであるリアルな接客の双方でシナジーを生み出せるサービスとして『KARTE』をさらに進化させたいと考えています。接客のすべてを自動化することはできません。必ず人のチカラが必要になる場面が出てくる。『KARTE』はその手助けができるサービスであればいいと考えています」

サービスの提供者がより手軽に、より確実に個客体験を高めていける「KARTE」は、拡大を続けるWebビジネスすべての未来を明るくともすツールとなるに違いない。

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