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ビジネスモデルの未来

お別れの悲しみを「感謝」に変える、エンディング市場の可能性

株式会社みんれび

不明瞭、非効率な業界にインターネットの力で光を当てる

定額のお布施で僧侶の手配ができる「お坊さん便」。Amazonに登場したことからも話題になったこのサービスを提供しているのが、株式会社みんれびだ。「みんなの」「レビュー」の略称から成る社名のとおり、もともとは2009年にさまざまなジャンルについて幅広いユーザーの声を拾い上げようと、クチコミレビューによるコミュニケーションメディアをバーティカルに立ち上げてきた同社。そのなかで、もっとも反響があったのが「葬儀レビ」だった。

葬儀について精通している一般人はほぼ存在しない。「どこに頼めばいいのか分からない」「料金差は何によるのか」といった疑問が多いのも当然といえる。「なかでも葬儀料金についてはサービスを提供する側とサービスを受ける側に大きな感覚のギャップがあり、ここを正すことに意義を感じました」と芦沢雅治代表取締役(トップ写真左)は言う。

このような情報の非対称性の是正は多くのスタートアップにとってビジネスの取っ掛かりになる。金融、医療、法律における「○○Tech」と呼称される領域の多くは、まさにこの情報の非対称性に目をつけたサービスが多い。葬儀業界は相場感が分かりにくいだけでなく、いまだにファックスを中心としたアナログな運用手法がとられていることも多く、インターネットを活用した情報の透明化も遅々として進んでいなかったという。

2017年7月現在、みんれびは葬儀業界にフォーカスした「葬儀レビ」のサービス運営に集中している。葬儀業者は全国6,000~7,000存在しており、そのうち500社ほどと提携するまでに成長した。葬儀の内容は似ているようでも、葬儀代についてはばらつきがあるなど、不明瞭な実態を踏まえ、2013年からは自ら立ち上げた「シンプルなお葬式」ブランドで内容を明らかにしたパッケージプランの提供を開始。同サイトには「通夜を行わない告別式だけ」や「通常の3倍以上の生花で見送る」といったプランが並び、「分割払い可」の文字も目に留まる。また日本全国には寺社の数は7万、僧侶は20万人存在するとも言われるが、「お坊さん便」では8種の宗派で約700人の僧侶と契約し、土日を中心に大きな反響があるという。

「格安葬儀プランをご提供していますが、私たちが目指しているのは価格破壊ではなく、サービスの受け手も提供側もハッピーになることです」と芦沢氏は言う。葬儀場の稼働率は3割と言われており、遊休施設化する施設も多くあるなど現場は厳しい状態だ。みんれびでは、サービスを提供する側にも、みんれびと連携することで得られるメリットをきちんと作ることを大切にしているという。

「価格構造を明確にして、需要と供給をマッチさせるように努力しています。さらに24時間365日対応可能なコールセンターを自前で持ち、お客様の気持ちに寄り添いながら相談をお受けしています。また、問題意識を持つ葬儀社やお坊様とも一緒に業界の課題解決に取り組むなど、インターネットを通じたお申し込みだけでなく、電話などによる直接的なご相談も重要視しています」と芦沢氏は力強く語る。

実際に社内に目を向けると、従業員の約半数がWebエンジニアやWebディレクター、マーケティングと言った、インターネット産業出身の人材が多い。彼らが日々、テクノロジーで業界構造をより良くしていくことを議論、実行しているのだ。

結婚式のようにお別れの形もバリエーション豊かになり得る

数百年という長い時間をかけて形作られてきた葬儀事情だが、「お別れの形はもっといろいろあっていい」というのがみんれびの考えだ。「シンプルなお葬式」で定番といえるパッケージ商品を提供する一方で、菩提寺を持たなくても送ることのできる海洋散骨や宇宙葬のサービスも行っている。背景には、遠く離れた故郷の墓に入るのを避けたいという思いや、都心では墓地の購入が難しく、遺骨を自宅に置いたままといった状況がある。墓地という場所にとらわれることなく、海や空など、故人の思いも踏まえて選択肢はもっとあっていいはずだ。

たとえばみんれびが提供する「宇宙葬Sorae」はアメリカの宇宙ベンチャーであるエリジウム・スペース社と提携。彼らがNASAから委託を受けて得たロケット内のスペースに、遺骨の一部を封じたカプセルを納めて宇宙に打ち上げる。そのカプセルは3ヵ月から数年をかけて地球を周回して、やがて大気圏に突入し、流れ星に姿を変えるが、その間ずっと専用アプリで位置確認を続けられるという仕組みだ。特定の宗教観に縛られず、またロマンを感じられるプランとして特徴的だ。

日本の葬儀スタイルは仏式が97%を占める。冠婚葬祭の別の領域、たとえば結婚式に目を移せば、旧来の神前式から教会式、ガーデンパーティー、さらに新郎新婦だけでのフォトウエディングまでバリエーションが生まれている。同様に、葬儀もさまざまなスタイルが生まれても不思議はない。実際、ウエディング市場のこうした活性化もこの20年ほどのことだという。ここ数年で屋内墓地(自動搬送式の納骨堂)や、遠方地にある墓を近くに引っ越しさせる「墓じまい」「改葬」といったものも登場しつつある。葬儀スタイルだけでなく、エンディングマーケット全体が最適化され、変化し続けていくのは時代の流れなのだ。

海外投資家や行政からも。エンディングマーケットへの熱い期待

みんれびでは最近、ミッションを「お別れの悲しみを感謝に変える」としている。送る人たちが悲しみに暮れるだけでなく、明るく見送れるスタイルや本人の生前の趣味嗜好を反映した内容を提案し、葬儀も感謝の表出方法の一つと考えているからだ。また、みんれびが介在することで、喪主や遺族がわずらわしい手続きに時間を掛け過ぎることなく、故人を偲ぶことに専念でき、心残りなく送ってもらうことが大切だと考えているからだと言う。

「みんれびを通じて良い葬儀を執り行うことができた、と思ってもらえれば」と語るのは、2015年から同社に参画している山田一慶取締役CFO(トップ写真右)。日本GE株式会社を経て、ソフトバンクモバイル株式会社では孫正義社長特命チームの財務担当としてPepperのロボット事業の立ち上げにも関わった経歴を持つ。その山田氏によれば、みんれびによる旧来の葬儀マーケットへの変革に対して特に興味を示しているのが「海外投資家」なのだという。

日本ほど急速に高齢化に向かう社会はこれまでになく、2025年には多死社会を迎えるとも言われている。その日本に追随するように、アジアも欧米も超高齢社会、そして多死社会に突入してくる。日本は医療・福祉課題の先進国だ。若者3.5人で1人の高齢者を支えていく社会をどう乗り越えていくのかが問われる一方で1,600兆円もの個人金融資産の85%を所有するのは50~70代であり、支える側の30代が持つ資産は4%に過ぎないといったアンバランスな現実もある。

「そんななかで、ライフイベントとしての葬儀にインターネットを通じたマーケティングチャネルを創出した、当社みんれびのアイデアや行動力が評価されています」と山田氏。プレゼンテーションの場では、葬儀市場2兆円に墓地、墓石、供花、弔電など関連市場2兆円の計4兆円に及ぶマーケットサイズのみならず、保険や相続、医療・介護といった周辺市場へのアプローチにも関心が及んだと言う。

期待は行政からもかけられる。たとえば、地域の社会資源をネットワークする福祉活動の拠点である社会福祉協議会からも、彼らが管掌している介護施設などと連携した動きができないか、相談が持ち掛けられている。みんれびが提供してきたものが、社会的にも必要とされ、評価されてきているのだ。

みんれびは、2017年2月に五反田にある広いワンフロアにオフィス移転をし、更に事業と組織を拡大している真っ最中。同社が掲げるミッションに共感し、葬儀業界に対して課題感を持つ人材、そしてテクノロジーを用いてより良いサービスを創り上げたいと考えている人材を求めている。「価格の明瞭化の次には、業界全体の仕組みの非効率の透明化と是正に着手し、そしてわれわれが解決できる領域をもう一段広げていきたいのです」と山田氏が言うように、世の中の動きや、その中で業界のあるべき姿を想像し、みんれびとしてどうあるべきか、そしてそれらをどのようにWebサービスで提供していくかと言う思考性が求められる。またそれだけでなく、社会意義の観点からはユーザーの状況を理解し、寄り添っていけるスタンスと言った、両面がエンディングマーケットを牽引していく上では求められているのだ。

「まだまだエンディングマーケットは非効率な部分や改善できる部分が多くあります。それは予算決めだけでなく、当日の設営や撤去なども含めてです。これらの断片的、アナログ的なつながりをまず、インターネットの力で束ねていきたい。さらにユーザーに寄り添った形で、たとえばワンストップで提供できるようなプラットフォームを作りたいのです」

芦沢氏の言葉には強い力が宿っている。まだ世界のどの国も経験したことのない大きな社会課題に対して、インターネット企業であるみんれびの挑戦はさらに続いていく。

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