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ビジネスモデルの未来

シンギュラリティにより、人間とロボットが相互に励まし合い、高め合う時代がやってくる(後編)

株式会社マイクロアド 渡辺健太郎

前編に続き、株式会社マイクロアドの代表を務める渡辺健太郎氏にシンギュラリティの到来により迎える未来社会の輪郭を伺うインタビューの続編。激動の時代を生き抜くためにはどんな考えを持ち、どのように行動していくべきなのか? そのヒントを探っていきたい。

人間はついに「労働」から解放される衝撃的な時代を迎える

――前回(人間をAIが超えるシンギュラリティから逆算したビジネス思考とは:前編)のお話にあがった未来社会を実現するには、テクノロジーの壁がかなり高いと思うのですが、御社のエンジニアの皆さんは、AI(人工知能)やディープラーニングに精通していらっしゃるのでしょうか。

データサイエンスやディープラーニングの技術は誕生して間もないため、社内にも、また世の中にも研究者としてやってきた人間はほとんどいないんですね。正直、自分たちがやりきれるかどうかもわからない段階です。すると、未経験であることが当たり前なので、今後、どういう素養が必要なのかを可視化して提示していこうと考えています。

――AIやディープラーニングは古くから研究されているとはいえ、ようやく市場の広がりが見えてきたばかりのテクノロジーですから、どういうキャリアを歩んでいいかもわからないですよね。

そもそもキャリアという概念がなくなるので大丈夫です(笑)。AIやディープラーニングの進化により、人間は今のように働かなくてよくなってしまうわけですから。

でも、そうした状況を悲観するのではなく、主体的に楽しんでいける方がいいな、と思うんです。仕事を奪われるという立場ではなく、人間の生活や仕事を任せられるロボットを作れる立場にいられることがおもしろいんじゃないかと。人間がこの世に生まれてきたことが幸せなことなら、そうした営みに携われることも幸せなことではないでしょうか。働かなくていい時代は、人類の歴史が始まって以来の快挙なんですから。

ロボットと人間の関係性は、ドラえもんとのび太のように親交を深める

――御社が運営されているメディア『Catalyst』でも、ソフトバンクの人型ロボットPepper(ペッパー)の感情機能の研究をされている光吉俊二さんをはじめ、多くの最先端テクノロジーの研究者と対談されていますが、多くの方たちとお話しされたなかで会社の方向性にインパクトを与えるようなことはありましたか。

皆さん、別々の立場で同じことをおっしゃっていますね。時間軸もほとんど一緒です。シンギュラリティがもたらす未来像については、確信しているものがあります。2025年以降、そういった社会が訪れるのであれば、それまでに前倒しで全部自動化を進めないといけないと感じるようになりました。

――そうした未来像から逆算するなかで、事業や技術力の成長は想定通りに進んでいますでしょうか。

技術力を定量的に評価するのは難しいのですが、扱っているデータ量では日本有数だと自負しています。あとは、そこにテクノロジーをどう掛け算していくかなんですが、それもちょっとした変化だったりするんです。たとえば、一人の天才がすべてを変えてしまうのかもしれない。こうした技術革新は日々の積み重ねでじわじわ起きるものではなく、それこそディープラーニングが画像解析領域に残したインパクトのように、あるとき急に生じるものなので、厳密なスケジュールを引くというのは難しかったりします。

――まだ実用化まではされていないですが、ビッグデータというキーワードの先に量子コンピューティングがあると思います。これが実用化されたら、また世の中は劇的に変わりそうですよね。

シンギュラリティを提唱したレイ・カーツワイルは、人類は6段階の進化を遂げると言っています。今はまだ4段階目で、シンギュラリティによって5段階目に到達するそうです。5段階目は何かというとロボットと人間が相互に高め合う時代。ただ、そこまでは理解できるんですけども、6段階目は宇宙と調和すると予言しています(笑)。

こんな話をすると頭がおかしいと思われるかもしれませんが、まずはシンギュラリティを超えるところからですね。6段階目に行くにはロボットと人間が高め合わないといけない。その先に行くには人間だけでは到達できず、ロボットの力が必要となるので、まずは5段階目に行けるように、今がんばると。それがわれわれの置かれている立場ですね。

――アメリカではターミネーターをはじめ、ロボットは人間と対立するものとして扱われますが、日本では鉄腕アトムやドラえもんなど、友だちとして扱われますよね。そのため、日本人の方がAIを作るのに向いているのではないかという話もありますが、渡辺さんはどのように感じていますか。

たしかにおっしゃるお話には妥当性があって、それは宗教観の違いだと思うんです。キリスト教やイスラム教の原理主義は進化という概念を認めないので、「ポケモンGO」はもちろん、ロボットの存在すら本質的には認められないんです。基本的には「神がいるから人間がいる」という考え。だから、「異物」としてのターミネーターというストーリーが生まれるんだと思います。社会的なコンセンサスをとるのが難しい。そういう面では、ロボットの価値観を認められる日本は優位な立場にいるのかもしれません。

――たしかに日本では、もしもドラえもんという存在が急に出てきても違和感はなさそうですよね。

アメリカで最新テクノロジーを主導するマーク・ザッカーバーグやイーロン・マスクは子ども時代から良質なSF小説を読んでいたそうです。日本人は漫画によってそうしたファンタジーになじんでいる一面があるので、実はアメリカの先端的な人々と驚くほど似たような進化を遂げていると感じています。そういう意味では未来のテクノロジーを事前に学習していて、そのリスクも理解しているわけです。

ロボットが人間を助けるという自己犠牲的なストーリーにもなじみがあるのですが、これはまさに自動運転の車に搭載する倫理観とも一致しているんですね。目の前に妊婦と老人がいて、どちらかにハンドルを切らないといけないときに、どう判断するべきかという、哲学にも近い考え方が必要になってくる。これらが古くて新しいテーマとして再浮上している感もありますよね。

多岐にわたりアンテナを張り巡らせる渡辺氏の情報源とは?

――それともうひとつお聞きしたいのが、インターネットやモバイルの登場により人間が「空間」から解放されたことは大きいと思うのですが、「時間」からの解放については今後どのようになるとお考えでしょうか?

シンギュラリティ的なお話をしますと、人間はいずれ死ななくなったり、老化しなくなったりと、健康寿命が爆発的に伸びると考えられています。そうなると、もちろん人生観そのものも変わると思うんですね。現在のライフプランは、80~90歳くらいで死ぬことを前提に考えられていますが、その時間軸が変わってくる。ですから、80歳を過ぎて「パン屋を始めてみよう」なんて人がごく普通に出てくる、とか。

――すると、人間は時間を感知する気持ちや心をより大切にするようになるのかもしれませんね。

そうですね、よりいっそう大切にするという考え方もありますし、科学的に脳の機能がかなり解明されてきているので、今までの考え方がガラッと変わる可能性もあります。たとえば、物事に集中する「ゾーン」という時間概念も現在は解明されつつあるようです。

1つおもしろい話があって、エクストリームスポーツはものすごい進化を遂げているスポーツで、20年前には非常に危険だと言われていたような難度の高いトリックが、今ではすごく簡単なトリックとして扱われています。人間の基本的な身体能力はそれほど上がっていないはずなのに不思議だと思いませんか? 実はこれは脳の進化だと言われています。脳には可塑性があることが解明されていて、それを鍛えることで頭をよくしたりもできるそうなんです。人間の心や脳もすごい進化を遂げています。

ですから、子どもを学習塾に通わせて、暗記で脳を鍛えるのはすごく非効率なのかもしれません。暗記で脳を鍛えるのではなくて、機能そのものを上げた方が汎用性も高くなりますし、そもそも人間は暗記でロボットには勝てませんから。

――これまでのお話を聞いて、渡辺さんの情報アンテナの角度はどこに向いていらっしゃるのだろうとすごく興味を持ちました。一体どういうところから情報収集しているのでしょうか?

大半は人に会う、そして本を読むということからですね。半年前に「シンギュラリティ」という概念はほとんど誰も知らなかったと思うんですが、孫正義さんが言い始めたことで急にビジネスマンは知らないといけないワードになった。今は本当にアップデートが速いから、去年まで概論だったものが、今年には事例として出始め、「え、本当に!?」という衝撃的な話が増えていますね。

直近だと、スーパーコンピューターの会社で社長を務めている齊藤元章さんが執筆された『エクサスケールの衝撃』という本は、タイトル通り衝撃的な内容でした。ギガ、テラ、ペタの上に来るエクサという演算処理能力を持つスーパーコンピューターによりプレ・シンギュラリティが実現されるというお話です。このスーパーコンピューターを用いることで2年の歳月を費やしていたゲノム解析が1日で終わってしまう。それにより、さまざまな病気がどんなタンパク質の変異で起きているのかがわかるようになるので、病気そのものがなくなるんじゃないかと言われています。

――最後に、そのような時代が到来するにあたり、御社ですでに研究・開発し始めている技術やビジネスの種があればお教えいただけますか。

ディープラーニングはすでに各方面で導入が始まっていますし、当社でもテスト的に効果が出ることは確認できています。ようやく明確に来たる未来とその時間軸が見えてきたので、今はそこから逆算をしてロードマップを引いているところです。将来的に人間が働かなくなる時代が来るとはいえ、まだそれは少し先です。それまでに世の中に何かしらの爪痕を残せる仕事ができたら、最高に楽しいでしょうね。

――本日はありがとうございました。

■プロフィール
株式会社マイクロアド
https://www.microad.co.jp/
代表取締役 渡辺健太郎

1974年宮城県出身。1999年株式会社サイバーエージェント入社。同年大阪支社を立ち上げ支社長に就任。2005年から「Ameba」開始に伴い事業責任者に就任。2006年に株式会社サイバーエージェント取締役に就任後、 2007年株式会社マイクロアドを設立。2011年、日本でRTB配信の可能なDSP “MicroAd BLADE”の提供を開始し、主要なアドエクスチェンジやSSPを統合。2008年の香港現地法人を皮切りに現在までにアジア12か国で事業を展開。日本国内とAPAC全域で12,000社以上の広告主に支持される。2016年4月には、“空間が巨大なディスプレイになる”「Sky Magic」を舞浜アンフィシアターにて発表。

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