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ビジネスモデルの未来

人間をAIが超えるシンギュラリティから逆算したビジネス思考とは(前編)

株式会社マイクロアド 渡辺健太郎

この数年で人間社会にはいまだかつてない大変革が起こり、現在では想像できない未来が訪れると言われている。そうした現状を冷静に分析し、AI(人工知能)やディープラーニングといった最新のテクノロジーを積極的に導入することで新しいビジョンを提示する企業が存在する。それは真剣勝負のビジネスでさえも楽しもうとする株式会社マイクロアド。主業務である広告配信サービスの展開に加え、新たにドローンビジネスに挑戦すると聞き、代表を務める渡辺健太郎氏に話を伺ったが、そこでは「シンギュラリティ(技術的特異点)」や友だちのような人間を助けてくれるロボット「ドラえもん」といった氏の関心の幅広さを示す多岐にわたるワードが飛び交い、非常に興味深いものとなった。今回は、テクノロジーが浸透した社会で描かれる壮大な未来図を、前編と後編に分けてお伝えしていきたい。

空間を情報化する「Sky Magic」が実現する社会とは?

――これまでの主業務であるインターネット広告以外に、近年では越境ECやインバウンドなど、さまざまな事業を立ち上げていらっしゃいますが、なかでもドローンを利用した空間を情報化する「Sky Magic」は斬新さを感じました。御社が新事業の中からドローンを選択した経緯を教えていただけますでしょうか。

インターネットの広告ビジネスは、パソコンからガラケー、そしてスマホと、デバイスとメディアがどんどん変化しています。では、「5年後はどうなるの?」と考えた際に、インターネットの世界はさらに拡張し、自動車をはじめとする「動くモノ」へとその対象を広げていきます。順番としては、自動運転よりもドローンが先に来るだろうということでドローンに着目しました。スマホと同じように、短期間で一気に普及していくと考えています。

――空間を情報化するとは聞きなれない言葉ですが、どのような内容のサービスなのでしょうか。

アイデアとしてはインターネットと接続したドローンにLEDライトを付け、オートメーションフライトで編隊飛行させ、同時にLEDの光をコントロールして、ディスプレイと同じ役割を果たすことができるというものです。RGBの粒子の集まりである従来のディスプレイは、それが何万個と集まることで映像を映すことができます。それと同じように、理論的にはあらゆる空間をドローンによるディスプレイで情報化させることができるというものです。

――現在、ドローンは測量や空撮で使用されるのが一般的ですが、ハード自体をメディア化することは可能なのでしょうか。

ドローンをビジネスに利用しようと考えたときに思い浮かんだのは、パソコンが登場したときのことでした。当初、多くの人はただのホビー機だと判断し、パソコンがインターネットとつながって情報メディアになると誰も理解できなかった。でも、その後、ウィンドウズが生まれ、ブラウザーができ、その中でYahoo!やGoogleなどの巨大メディアが誕生した。この出来事と同じことが起きると思うんですよ。ほとんどの人は、それがメディアになるかどうか、使えるかどうかも、わからないんです。スマホでさえiPhoneの初号機は「こんなの使えない」と言われていたわけですから。

――そんなサービスが実現されると、多くの活用の仕方が浮かんできますね。

これまで人間はインターネットと接続する際、ディスプレイを閲覧するためのデバイスという「場所」に縛られていたんです。そこから解放され、ディスプレイそのものの形すら自由になれば、ありとあらゆるシーンで使えるようになるわけです。それはすごく革命的なことだと思っています。

今ではスマホで音楽や書籍、映画など、膨大なデータを持ち運べるようになっていますが、考えてみれば「持ち運べる」という事実はそれだけとんでもない話なんです。「Sky Magic」も同様に、「ディスプレイがどこにでも現れます」という点で大きな魅力を備えていると思っています。

――実際に体験してみないとピンと来る人はいないかもしれませんね。

そうですね。たとえば、タイムマシンで10年前に戻って、全世界の人が「インスタグラム」というアプリを使って、いろんな写真を投稿しているんだよと説明しても意味がわからないと思うんです。そのアプリを通じて有名人が出てくると説明しても信じられないのではないでしょうか。同じように、これからもっと理解できない世界が来ると思うので、ピンと来ない人にはわからないかもしれませんね。

AIやディープラーニングが正確な未来予測を可能にする

――現在も御社では最新のテクノロジーと広告ビジネスを掛け合わせた事業を展開しています。既にゼロコンマ数秒で広告の売買が可能な世界観を構築されていますよね。たとえば、インターネットにAIやディープラーニングの技術を組み込むことで何が変わり、どんなところが便利になるとお考えでしょうか。

RTB(リアルタイムビディング)というのは、確かにゼロコンマ数秒で取引を完結することを実現していますが、あくまで「売買」なんですね。これをいくらで売る、いくらで買うという行為をオートメーション化したもの。では、そうした売買に対し、どういうKPI(Key Performance Indicators重要業績評価指標)を設定しようかというプランニングは、まだ人間が行っているんです。

この判断までオートメーション化されると、どういうことが起きるかというと、いきなり正解がわかる世界がやってきます。今までのマーケティングは過去のデータを見て、人間が仮説を立てて答えを検証していたわけですが、ディープラーニングやAIの世界は、人間にはよくわからないけれど「来月はこうなります」という答えが先に出てくるわけです。

――それは、まさに未来予測ができるようになるということでしょうか。

そうですね。僕らが身近に体感している未来予測は、天気予報だと思うんです。朝に「今日は午後から雨が降ります」と予報士が伝えると、「では、傘を持っていこう」とその判断を信じて対処するわけですね。天気図を読める人は、もしかしたら自身で確認するかもしれませんが、ほとんどの人がしていないわけです。つまり、メディアから流れる「天気の未来予測」のもと、朝に傘を持っていくという行動を決定しているわけですね。その範囲がもっと広がるというふうに考えると、わかりやすいかと思います。

――人間が目標を設定するまでもなく、すべて自動化される世界……そうした世界は、どれくらいの速度でやってきますか。

私はもっと時間がかかると思っていたんですが、トップの研究者の話を聞くと、だいぶ早いですね。2025年にはそうなると言われています。

――そうなると、あと10年弱しかないわけですね。

東京オリンピックくらいまでは、旧態然とした考えで「働くとは?」ということを議論していてもいいと思うのですが、そこから先の未来は変わってくるので、私たちは今から準備しておかないといけません。

たとえば、現在のデジタルマーケットではCPA(Cost Per Acquisition/顧客獲得単価)という指標を立てています。あれは人間が認識できるように設けられた不完全な指標なので、お話にならないものとなるのです。つまり、人間が介在しているために進化できないというわけです。やはり、人間の認知を超えていく必要が出てきてしまうわけです。

人間が仕事をできる期間は、あと9年ほどしかない!?

――「技術的失業」が専門分野の駒沢大学経済学部の井上智洋氏と対談した際に、人間とAIが高め合うという話をされていました。

たとえば、医療の分野で「優れた医師」の定義とは、より多くの症例を知っていることで統合的に正しい仮説を予測できる能力を有しているということでした。ところが、IBMの開発した人工知能「Watson」が診断を開始してからわずか10分ほどで難症例患者の正しい病名を見抜き、医師に治療法を指南した例もあります。

既にディープラーニングを搭載した巨大なデータベースに接続した人工知能の方が、多くの医師よりも優秀なんですね。がんに関する研究論文だけでも、世界中で2,000万件以上あると言われています。それらをすべて網羅し、理解し、適切な判断を下すことは、人間にはとてもできませんよ。

――では、人工知能による淘汰が進む時代に、マイクロアドはどのように対応をしていくのでしょうか。

人工知能やディープラーニングに任せられるところは、任せていけばいいと思っています。でも、人間の採用数を減らすとかそういう話ではありません。ロボットが仕事を回す時代になったときに、「では、何をするのか?」というものが見えてくると思うんです。

大昔は洗濯板で洗濯をしていた時代があったわけですよね。その時代の人に、ボタンを押すだけで乾燥までやってくれる全自動洗濯機というロボットができるんですよと話しても信じることはできないのではないでしょうか。もし、その話を信じたとして、「では、導入して何をしますか?」と聞いてもわからないと思うんです。

でも、その後、洗濯に費やしていた1日3時間程度の時間が他のことに使えるようになると、みんないろんなことをやりだしたわけですよね。そうした技術の進化の積み重ねが余暇を生み、新たな発想を育んで、今では「インスタグラム」でお気に入りの写真をアップロードできるようになった。同じように、新しい時間が生まれたら、また新しいことをやればいいんじゃないでしょうか。

まずは「人間の仕事を奪われるのではなく、やってもらう」というふうに主体的に考えてAI化をどんどん進め、そうなったときに「何をやるべきか」を判断すればいい。やってみないとわからないのであれば、ロボットに仕事をいち早く任せられた人が次に行けるのではないでしょうか。

――IBMのWatson開発に携わった主任研究員の方も「人工知能が人間の仕事を肩代わりしてくれる時代になると、サービス産業が増えるはず」という話をしていましたが、余暇が増えると新しいエンターテインメントが生まれるということもあり得そうですね。

そうなると思いますよ。増えた時間を利用して、たとえば、旅行へ出かける人が増える。そうなると、旅行産業は拡大すると思いますし、誰も行かない秘境のようなスポットがおもしろいという価値観も生まれると思います。

――いろいろなところでそういった影響が出てくると思うのですが、仕事以外にライフスタイルではどんな変化が生じるとお考えですか。

身近なところだと、ベッドタウンの必要がなくなると思いますね。自動運転の社会になると、移動自体から解放されるので、都市に通勤するためにコスパを考慮する必要がなくなる。さらに労働日数も減るので、ホテル暮らしと両立してもいいし、なんだったら家が2つあってもいいというふうに流動化してくると思います。

また、自動車で移動する際も自動運転になりますから、ドライバーコストは0になり、移動中にマッサージやネイルのようなサービスを受けられるようになるでしょう。もちろん、やってくれるのは機械です。今でもマッサージチェアとかありますよね。あれは言うなれば、ロボットじゃないですか。車とマッサージチェアは別物でしたが、それがどんどん組み合わさっていくはずです。

――仕事をやりたくても、やれない時代が来るのでしょうか。

もうそんなに時間は残されていないでしょう。「そういえば、昔、仕事ってけっこうやっていたね」みたいな時代にいつかなると思います(笑)。「海外から1,000万人の移民を連れてくるなら、1,000万台の産業用ロボットを作った方がいい」という意見もありますし、そんな時代になれば少子化で騒いでいることも無意味な話になります。ロボットが仕事をしている風景が当たり前になる時代も、もうすぐそこまで来ていると感じます。

<後編に続く>

■プロフィール
株式会社マイクロアド
https://www.microad.co.jp/
代表取締役 渡辺健太郎

1974年宮城県出身。1999年株式会社サイバーエージェント入社。同年大阪支社を立ち上げ支社長に就任。2005年から「Ameba」開始に伴い事業責任者に就任。2006年に株式会社サイバーエージェント取締役に就任後、 2007年株式会社マイクロアドを設立。2011年、日本でRTB配信の可能なDSP “MicroAd BLADE”の提供を開始し、主要なアドエクスチェンジやSSPを統合。2008年の香港現地法人を皮切りに現在までにアジア12か国で事業を展開。日本国内とAPAC全域で12,000社以上の広告主に支持される。2016年4月には、“空間が巨大なディスプレイになる”「Sky Magic」を舞浜アンフィシアターにて発表。

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