探そう、まだ見ぬ未来を。

ビジネスモデルの未来

広告ビジネスの雄は、未来予測を実現し、人々の暮らしそのものを再デザインする企業へ

株式会社マイクロアド

既存のビジネスモデルがテクノロジーによって駆逐され、新たなビジネスが創出される。人工知能やロボットなどに関するテクノロジーが急激な進化を遂げるなかで、ここ数年はそうしたセンセーショナルな話題も多く耳にするようになっている。それをポジティブな変化として捉えるのか、「人間の仕事が奪われる」とネガティブに捉えるのかは立場や思想によって異なるが、こと株式会社マイクロアドの渡辺健太郎氏は「ただひたすら楽しみだ」という。

約1年前、BizReach Frontierがインタビューした際にも「人間と人工知能が対等なパートナーとして、お互いを励まし合い、慰め合う時代がやってくる」といった未来を語っていた渡辺氏。その渡辺氏率いるマイクロアドが今回、新たなマーケティング基盤構築サービス「UNIVERSE(ユニバース)」の提供を開始したと聞き、あらためてインタビューを実施。渡辺氏が1年前に語っていた未来予測が、もう既に現実のものに変わりつつあるという現場の声をお伝えしていく。

「UNIVERSE」を通じて、マイクロアドは広告ビジネスのジレンマを解消する

――今回、またお時間をいただき、ありがとうございます。今回、提供が開始された「UNIVERSE」についてお話を聞ければと思いますが、まずは従来のDMP(Data Management Platform)とは何が違うのか、という点からお教えいただけますか。

「UNIVERSE」と従来のDMPとは、そもそも発想の起点が違うと考えています。DMPは世界にどのようなターゲットがいて、彼らにどういう情報を届けるのが効率的かを追求するものですが、年齢や性別、地域に加えて、ターゲットがAmazonや楽天といったECサイトでどういう商品を購入したのかという一元的な情報を収集・分析しているにすぎません。それに対して、「UNIVERSE」は多次元データベースという考え方をもとにしています。

人間には当然、多面性があります。日々同一のルーティンをこなしているだけではないですし、考えていることや立ち寄るお店、遭遇するイベントも異なります。そうしたリアルな行動を、より多層的に収集するため、次元数が増えれば増えるほど、該当ターゲットがどんな人物なのかという輪郭が浮かび上がる。そして増え続けるデータを単一IDで統合し、分析することで多次元データベースのハブとなる。これが「UNIVERSE」の目指す世界観ですね。

――インターネット上に存在するデジタルなデータに加えて、アナログなデータも収集、結びつけることで生まれる新たなビジネスチャンスには、例えばどのようなものがあるのでしょうか。

一番分かりやすいのは、これまで表面化していなかった相関関係が可視化できるようになるということではないでしょうか。例えば、不動産を購入しようと考えている若い夫婦がいたとします。これまでは「マンション 購入」や「東急東横線 一戸建て」といったキーワードで検索されたり、不動産関連の広告がクリックされたりしてからがDMPの本領発揮となっていました。しかし、その夫婦が半年ほど前からマタニティーグッズを店舗に出向いて買い集めていることが分かればその夫婦は出産を控えており、ともすると「引っ越しも兼ねて新しい物件を購入する可能性が高いのでは?」という仮説が浮かび上がってきます。同様に「この商品を購入した人は、こういう情報を求めているのでは?」という仮説が今まで以上に多く、かつ確度も高い状態で見えてくるはずです。これだけ聞けば「誰だって分かることだ」と思われるかもしれませんが、今まではこの夫婦が実店舗にマタニティーグッズを購入しに外出していることはつかみきれなかった。頭では分かっていても、実現性が皆無だったわけです。

DMPを提供する立場としては恥ずかしい話ですが、これまでの「不動産広告をクリックしてくれたユーザーには、不動産広告を数多く露出しよう」という施策は、理想的なマーケティングとは遠くかけ離れていると言わざるを得ません。実際、僕ですらインターネット広告をうざったく感じる場面があるわけで(笑)。それはテクノロジーとしてさまざまな課題があったからですが、いよいよその理想形を現実にする舞台が整ってきた。だからこそ「UNIVERSE」の提供に踏み出したわけです。

――自分たちが気づかずに欲している情報を、テクノロジーが予測し、「UNIVERSE」が可能性の一つとして提示してくれる世界がやってくる。前回お話しいただいた未来予測の話にも通じるものがありますね。

そうですね。人間が何気なくやっている行動の一つ一つは法則性の薄い、ランダムなものだと思われがちですが、よくよく分析していくと自分たちですら意識していない相関性があると思います。

皆さんも経験があると思いますが、「今日のランチは何を食べようか」という思考は、まさにこれです。例えば、前の晩にインドから帰国したばかりであれば和食を欲しがるでしょう。前の晩にがっつり揚げ物を食べた人は、おそらく天丼を選択しないでしょう。現在はその人が海外に行っていたかをトラッキングする方法はいくらでもあります。SNSに海外の位置情報を添えて何らかの投稿をしていることから分かったり、自宅の鍵がスマートキーであれば長期間家を空けていることが分かったりします。スマートフォンでGPS機能を常時ONにしていればより確実ですね。

最近まで、これほどにパーソナライズな情報を収集することは技術的に困難でしたが、インターネットやIoTの普及・発達により、分厚いデータを収集することが可能となりました。マーケティングの世界では、ペルソナと呼ばれる仮想的なターゲットを設け、ペルソナに即した情報を発信するといった流れが一般的でしたが、このフローも間もなく駆逐されるでしょう。生活様式も消費行動も一人ひとりで違うことが如実にキャッチアップできるようになれば、広告ビジネスの運営者は総じて大転換を迫られることになりますから。

これからはますますビジネススキルの消費期限が短い時代に突入する

――今回の「UNIVERSE」提供にあわせたようなタイミングで、マイクロアドのコーポレートメッセージが「REDESIGNING THE FUTURE LIFE」と変わったことも興味深い点です。広告配信プラットフォームの運営会社とは思えない、大きなテーマですよね。

ここには、ビジネスそのものがかつてのやり方では通用しなくなる、という一種の危機感も含まれています。会社のあり方、マネジメントの手法、さらにシンプルにいえば特定のスキルで食べていける時間が極度に短くなっている。これは社会構造の変化が激しくなっていることに起因すると考えています。

かつて、大人たちは相対的に偉い存在だとされてきましたし、それを社会全体が当たり前だと考えていました。その根底にあるのは、大人たちが情報を独占していたからです。いろいろな知識を持っている、多様な経験を積んできたという社会構造があったから「大人たちは偉い」でした。しかし、今は誰もがインターネットを通じてあらゆる情報にアクセスできる権限を有していますし、若者や子どもの方が時間もあって柔軟に情報をキャッチアップできる。大人顔負けのスキルや着想を持つ若者たちが続々と現れているのは、そういう時代背景もあるからだと考えています。

デジタルの世界で大きなイノベーションが起きると、大人よりも若者が先にアジャストしてしまうし、イノベーションが起きるスパンもどんどん短くなっている。終身雇用はもちろん、企業という仕組みそのものが通用しなくなっている時代なのかもしれません。

――マイクロアドとしても、仕組みを見直そう、改善していこうという動きはあるのでしょうか。

そうですね。分かりやすい点では、来年度の営業職の新卒採用はゼロにしました。就職活動で出会った彼らが入社してくるまでには1年近くのタイムラグがあります。その間に彼らに任せられる仕事が大きく変わるか、あるいはなくなるかもしれない可能性が顕在化してきました。せっかくマイクロアドに入社してくれたのに「君たちに任せられる仕事はなくなってしまった」ではお互いに不幸です。これが正しい選択なのかどうかは、正直まだ分かりません。ただ、「去年もやってきたから今年もやろう」という惰性で続けることが一番危険なのは間違いありません。変化に対応し続けることをやめた時点で、もう社会の流れからは脱落してしまったことになるでしょう。

――サバイブするのが難しい時代に突入するということで、そうしたなかで身につけておくべきスキルや知識にはどのようなものがあるのでしょうか。

「何を学ぶべきか?」を聞く時点で非常にまずいかな、というのが正直な感想ですね(笑)。何を身につけておけば安泰なのか、という発想そのものが旧時代のものです。大切なのは変化に対応し続けていくことで、その時々で大切なことは変わってくる。「この人についていけば間違いない」では、その道が誤っていたときにどうしようもなくなる。フォロワーになるのではなく、自ら動き続けることが重要でしょう。自律的に考え、自立することでしか、これからの道は切り開けないはずです。

「定年後も働きたくない」は通用しない。定年という概念そのものが消えるかもしれないのだから

――常に新しいことに挑戦し続ける。その先にはどんな未来があると見ているのでしょうか。

とにかく僕は情報の非対称性によって成り立っていたビジネスや常識がどんどん是正されていくと考えています。ビットコインの急騰も情報の非対称性によって引き起こされている事象の一つです。誰もが適切な情報を知り、理解する時代が生まれれば、資本主義的な経済拡張がピークアウトするだろう、とも考えています。

――「資本主義的な経済拡張」とは?

端的にいえば、くだらない商品やサービスが是正される可能性がある、ということです。「これは間違いなくうそをついている」と分かりながら商品やサービスを購入する人はいないでしょう。しかしうそと知らずに購入してしまう人もいる。彼らがそうした被害にあってしまうのは、情報が正しく伝達されていないからです。低品質な商品であっても、うまくマーケティング施策を回せば在庫がはけ、利益を出せます。しかし、似たような別商品の方が魅力的だと分かれば、顧客はそちらに流れるでしょう。

現代はただでさえモノが多すぎます。そうした市場の取捨選択がよりスピーディーに行われ、最適化される時代がやってくる。僕はそう考えています。それは資本主義の終焉(しゅうえん)かもしれません。しかし何かが終わるくらいまで突き詰めて、初めて「進化」と呼べると思っているので、あまりネガティブな感情はありませんね。人類がそこまで到達すれば、新しいビジネスなり常識なりが生まれてくるはずですから。

――「従来のビジネスモデルが通用しなくなる」とはさまざまな場面で耳にしますが、社会人にとっても、企業にとっても大きな変革の決断が求められることになりそうですね。

一個人で見ても、あり方は大きく変わると思います。寿命が伸びることは既に確実視されていますし、年金問題などを加味すれば、日本にいる以上は70歳、80歳まで働くことも当たり前になるでしょう。今は人生80年といわれていますが、50歳を過ぎてようやく折り返しという時代に突入すれば、価値観も大きく変わります。

――私は沖縄県出身なのですが、実は沖縄は出生率と離婚率が全国トップという土地柄で、東京の人たちとは考え方が根本的に違うな、と感じる場面が多くあります。同じ時間を過ごすなかでもそれだけ価値観が違うのであれば、時間がたてばたつほど大きな変化になりそうだと感じます。

沖縄県は小さな島国で、近くに祖父母がいたり親戚がいたりすることで、たとえ子どもがいて離婚したとしても育てやすい環境があるのでしょう。もしくは、単純に東京にいる人たちが我慢しているだけなのかもしれない(笑)。

そういう観点から見ても、今のあり方が大きく崩れるのは避けようがないと思いますよね。ひ孫がいたとしても誰も驚かないし、再婚相手にはもう孫がいる、なんて時代もやってくるかもしれない。今の常識なんて、数年後には陳腐化しているかもしれない。昔から何度も言われ続けてきたことでしょうが、あらゆるムーブメントの消費サイクルが本当に短くなり続けている以上、そのスピードはますます速まっていると感じます。

――そうした時代のうねりの中核を担うのが、マイクロアドや「UNIVERSE」の存在なのかもしれませんね。

そうなればうれしいのですが(笑)。ただ、あらゆる物事が個別最適化される時代に突入することは間違いないですし、昨年(2016年)はフェイクニュースをはじめ、メディアや広告の信頼性が強く問われた1年だったと思います。でも、この流れは若者の間では既に常識となっていたわけですよね。彼らはGoogleの検索結果が信用できなかったり、価値を見いだせなかったりして、Instagramでよりリアルに見える情報を得る手法を手に入れた。当然ですが、彼らは一人ひとりの個性ある人間で、年齢や性別、居住地などでグループ化したマーケティング手法では心に響くものを感じられない世代です。だからこそ、多次元化されたデータが必要で、いち早くここに着手することが、これからの時代を生き抜くうえで必要であり、何よりワクワクするだろうと考えています。

もちろん、人間が持つ心や感情は非常に尊いものです。しかし、人間が人間を理解する以上に、機械が人間をより深く理解する時代もすぐ近くまできているかもしれません。当社に限っていえば、「広告の見せ方をどう変えれば効果を最大化できるか」を追求するフェーズから、「広告のあり方そのものをどう変えるべきか」を追求するフェーズに突入しています。人間にとってより価値のある情報の届け方とは何か。膨大に蓄積されたデータには事実しかありません。そこから世界が気づいていない相関性を見つけたり、世界をよりハッピーにする新しい発見があったりする。そんな仕事を「REDESIGNING THE FUTURE LIFE」という言葉にのせて、とことん追求していきたいなと思っています。

――本日も興味深い話を聞かせていただきました。ありがとうございました。

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