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サイズレコメンドエンジン「unisize」でECサイトに変革を

株式会社メイキップ

ラガーマンとして鍛えた「腿(もも)の太さ」がアイデアの源に

洋服を買おうと思い立ち、通勤電車の中でスマホを手に取り検索をかける。目当ての品は見つかったけれど、サイズ選びで行き詰まる。いつものブランドではMだけれど、このブランドでもMで大丈夫だろうか? 身幅、裄丈(ゆきたけ)……数字を見てもピンとこないし、メジャーなんて持ち歩いていない。諦めるか? 返品のリスクを覚悟しながら購入ボタンを押してしまうか?

実店舗で試着することなく、ECサイトで洋服を購入することが日常茶飯事になった今、誰しもこのような経験があるに違いない。この煩わしいサイズ問題に着目し、アパレル×ECサイトの世界に変革をもたらしたのが、株式会社メイキップの代表取締役CEO柄本真吾氏だ。

アパレル業界とは縁のない人生を歩んできたという柄本氏。「サイズ」をテーマに起業しようと決意したアイデアの源は、「自分の太腿」だったという。

「僕は学生時代にラグビーをやっていたので、筋肉がつき腿が太いんです。パンツ選びでは、昔から苦労してきました。通販には本当に手を出しづらい。それで、インターネットとアパレルをかけ合わせて、サイズ問題を解消できる仕組みをつくろう、と思うようになったのです。アパレル業界は、EC化率が現在の7~9%から、2020年には15%前後まで上がると予想されている成長市場。勝負するならここだ、と思いました」

サイズレコメンドエンジン「unisize」誕生

1年がかりでつくり上げたサイズレコメンドエンジン「unisize」。身長、体重、年齢、よく着るブランドのサイズ、「腕の長さ」や「胴の長さ」のような身体特徴など簡単なアンケートに答えると、これから購入しようとしている洋服の適正サイズを瞬時に判断してくれる。海外のサービスも含め、すでにサイズレコメンドエンジンはいくつか存在しているが、これほどユーザビリティの高いものはめずらしい。

「既存のサービスを使うには、メジャーで体や手持ちの洋服を計らなければなりません。でもECサイトでの買い物って、みんなスマホを使いますよね。手元にメジャーがないケースがほとんどだから、メジャーが必要なサービスはスマホ向きじゃないんですよ。僕らは、スマホユーザーにもどんどん使ってもらえるように、ユーザーが知り得る情報を元にしたアンケートだけで完結する仕組みをつくりました」

サイズレコメンドエンジンをつくり上げるには、ひとつ大きな問題があった。サイズ感や採寸方法に関するメーカーごとのばらつきだ。そこを統一しなければ、適正サイズをはじき出すことはできない。

「たとえばMサイズといっても、メーカーによって大きさはまちまちなんです。あるブランドのMをいつも着ているから、このブランドでもMだろう、という単純な判断はできません。最終的には、膨大な数の洋服を実際に自分たちで着てみて判断することになりました。そこはすべて人力です。さらにいえば、胸の部分を「身幅」と呼ぶメーカーもあれば「バスト」と呼ぶメーカーもある。表記も、体のサイズである「ヌード寸法」で示すメーカーもあれば、洋服の寸法である「仕上がり寸法」で示すメーカーもある。それらのばらつきをすべて統一しました。AIにもいえることですが、最初にルールを決めるのは人間です。その部分が大変ですね」

通販サイト「夢展望」での試験的な導入を経て、2016年2月に「unisize」はアパレルECサイトに提供するサービスとしてスタート。「導入社数は順調に伸びていて、2016年12月の決算のタイミングでは大手ファストファッション企業も含めて20社ほどになる予定です。通販サイト「夢展望」での導入実績では、unisize利用者のコンバージョンレートが2.5倍にアップし、平均購入単価は1.3倍増加、返品率は25%下がりました。それだけ、サイズ選びがネックになっていたユーザーが多かった、ということなんですよ」と、自信をのぞかせる柄本氏。2016年の8月には、これまでアパレルECサイトに提供していた「unisize」を搭載した一般消費者向けのウェブサイトを立ち上げた。コンセプトは「ほしい洋服をピンポイントで発見できる」ことだ。

「たとえば、自分が着るための紺色のVネックのセーターがほしいと思ったとき、世の中に存在するすべての紺色のVネックのセーターを自力で検索することはできません。でも、僕らはそれを可能にしたいんです。入手可能なすべての洋服を、選択肢としてもれなく陳列する。そして、ユーザーがセレクトするにあたって困らないように、正確な情報を提供する。その情報のひとつがサイズなんです」

「サイズレコメンドエンジンを使う」という文化をつくる

アパレル×ECサイトという分野において、新たな試みにチャレンジしている企業もある。サイズだけでなく、「購入する前に着用イメージを確認できるようにする」というサービスもそのひとつだ。

「たとえば、マネキンに自分の顔写真をコラージュして、着せ替え人形のように洋服を着せてみる……ということを試みた企業もあります。僕らも、ECサイト側からそういった高機能なサービスを求められたりしますよ。でも、仕組みが複雑になると使い勝手が悪くなって、ユーザーが離れていくこともあります。購入前にサイズや着用イメージを確認する、という文化がまだユーザー側に確立していませんから。なじみのないものは、なかなか使ってもらえませんよね」

「サイズレコメンドエンジンを使う」というユーザー側の文化を確かなものにするためには、少しでも多くのECサイトに「unisize」を導入してもらうことが急務だ。ECサイトにはサイズレコメンドがあって当然、という世界観をつくることが大切だと柄本氏は考えている。

「次のステップに進むためにも、今は新しい方向性にサービスを広げることは我慢して、企業側にもユーザー側にもサイズレコメンドの「浸透活動」をしているような段階です。2020年の上場を目指していますが、その時点では全体の半分くらいのECサイトに導入されていてほしいと思っています」

当然、「unisize」の導入率を上げるには、サイズレコメンドの精度向上が必須だ。ECサイトの世界では、ユーザーと店員の間でチャットができるサービスなども登場しつつある。サイト上で個々人に合わせて適正なサイズを判断する機会はますます増えるに違いない、と柄本氏は予想する。

「いまは洋服の仕上がり寸法やヌード寸法をかけ合わせて、より正確な値を出せるようにバージョンアップしています。つまり、あるブランドのMをよく着ていると言われたら、それがこれから買おうとしているブランドのどのサイズにあたるのかというマッチングをかける方法です。今後は、さらに、購入履歴を使って、過去に買った洋服とこれから買おうとしている洋服をマッチングさせる方法にも取り込んでいく予定です。精度を上げるには、終わりのない工夫と努力が必要ですね」

精度を上げる努力を重ねる傍らで、新たな分野の開拓も視野に入れている。現在は洋服のみだが、靴やバッグ、下着などにもサイズレコメンドの適応範囲を広げていきたいという構想は固まっている。さらに、「目に見えないもの」をどうレコメンドするかという点にも興味があるという。「僕は、何もないところから何かを生み出すことに昔から興味があって、不可能なことをどうやって実現させるのか、と考えることが大好きなんですよ」

困難な課題であっても、確かなニーズを感じているからこそ、やり遂げてみせる。柄本氏の強い意志が、ECサイトに対する私たちの常識をどのように変えていくのか、非常に楽しみだ。

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