探そう、まだ見ぬ未来を。

ビジネスモデルの未来

ブロックや天秤で理想の物件を探す未来

株式会社ネクスト リッテルラボラトリー

近未来を想像させる、ワクワクを生むプロダクト

株式会社ネクストは、総掲載物件数ナンバーワンの不動産・住宅情報サイトとして知られる「HOME’S(ホームズ)」の企画・運営で成長を続ける企業だ。そのネクストが大学発ベンチャーの株式会社リッテルを買収して話題を呼んだのは2011年春のこと。株式会社リッテルは東京大学情報基盤センター学術情報研究部門から誕生した、自然言語処理や情報ナビゲーションの先進技術の研究開発に取り組んできたベンチャーである。

株式会社リッテルのメンバーも参画して2011年4月にスタートしたのが、研究開発部門「リッテルラボラトリーユニット」。視覚障がい者向け不動産検索アプリや理想の住まいのイメージづくりを支援するアプリ「これからシアター」などを次々と開発していた。「面白くなければ技術革進じゃない」というビジョンのもと、技術の力によるワクワクする住まい探し、暮らしを豊かにする新たな仕組みづくりを目指している。

リッテルラボラトリーの代表作といえば、2014年から15年にかけて世界にお披露目した「GRID VRICK(グリッドブリック)」と「すごい天秤」だ。「GRID VRICK」は部屋づくりのシミュレーションシステムで、おもちゃのブロックでドア、壁、窓などを配置していくと、それをPC上に3Dで瞬時に再現、出来上がった仮想空間をヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift(オキュラスリフト)」を着用してウォークスルー体験するというもの。世界の不動産業界から注目されたこのプロダクトは、2016年4月より販売開始になるという。

「すごい天秤」は、19世紀末をイメージしたスチームパンク風デザインの真鍮製天秤を使って「住まい」という宝探しへ人々を誘う、夢のある検索ロボット。天秤の皿の片方に希望条件の分銅、もう片方に家賃の分銅を載せていき、うまく釣り合うとニキシー管に物件数、ディスプレイには物件情報が表示されるという仕組みだ。動きやシリンダーの音もリアルで、先端テクノロジーを駆使していることを感じさせない雰囲気を目指した。この「すごい天秤」はユニークなものづくりと社風で知られる面白法人カヤックとコラボレーションして生まれたプロダクトだ。

VRやタンジブルUIを住まい探し分野に

同社HOME’S事業本部事業戦略部リッテルラボラトリーユニットの秋山剛ユニット長は言う。「HOME’Sというすごく便利なサイトをもっと楽しいものにしたいと思ってつくったのが『すごい天秤』です。同じ間取りのマンションでも隣の部屋とは日照が微妙に違うように、住まいは大量生産されるものと異なり、一つとして同じものはありません。僕らは家探しに宝探し的なワクワク感を見いだし、プロダクトに盛り込みました」

このような考えを持つに至ったのは国際事業部に在籍した経験が影響しているという。この時秋山氏は、不動産情報サイト HOME’SをASEAN(東南アジア諸国連合)の国々に輸出しようと試みたものの、困難を極めた。不動産に対する文化やインフラも違えば、法律、商習慣もまるで違う環境だったためだ。「不動産ポータル」という存在が確立されていない、未成熟なマーケットも多かったという。

そこであらためて「家探しの本質って何だろう」と自問し、Webサイトで情報提供するだけではいけないと感じるようになったという秋山氏。HOME’Sに新しいユーザーエクスペリエンス(UX)を付加し、ユーザーが楽しみながら家を探し、満足がいく結果を得るにはどうしたらいいかを考えぬく日々が始まった。

「僕はITプランナーですが、ほかのメンバーは研究者やエンジニアです。みんなで話し合いながら『どんな価値を提供していくのか』を考えるところから始めました」。そうしてつくったもののなかで、最初にメディアに取り上げられたのは「Room VR」だ。オキュラスリフトを着用して、3Dで描写された物件の屋内をウォークスルーできるデバイスは、公開した2014年当時はまだ珍しく、一気に注目を浴びたという。

また、「形のない情報に触れられるようにした、タンジブル・ユーザー・インターフェース(タンジブルUI)の考え方を用いて、家探しできる機能をつくってみたらどうなるのか」という秋山氏の提案から「Tangible UI Property Search(タンジブルUI不動産検索)」が誕生。この2つを原型に、先の「GRID VRICK」と「すごい天秤」が誕生する。

日本人的な発想が差別化につながる

「不動産領域に限れば、VR(バーチャルリアリティー)とタンジブルUIは、僕らはちょっとだけ先行しています。海外の同業者からは『日本ではみんなこんなものを使って不動産を探しているのか』なんて言われたこともありますよ。こういう発想をするのは日本人しかいないのでしょう」と秋山氏。

テクノロジーは、高度化するにつれ人間に対するインターフェースが注目される。より直感的にITを利用したいという願望を物理的なものを介して実現すると、年齢や言語、ITリテラシーと関係なく、すんなり操作できるようになる。

実際にブロックで部屋を組み立てる「GRID VRICK」も、天秤に分銅を載せることでマッチする物件を探す「すごい天秤」も、極めて直感的で分かりやすいプロダクトだ。社内では汎用人工知能の研究も進めているが、不動産事業と結びつけるには費用対効果の面でまだ難しいと、秋山氏は冷静に状況を見据える。それでも研究を続けているのは、将来的にそこから新しい芽が出てくるかもしれないという思いがあるからだろう。

「『GRID VRICK』の考え方は、ブロックに付与する情報を変えるだけで、知育教材など、別業種で活用することも可能になります。『すごい天秤』も同様で、いくらでも応用が利きます。不動産を1つの軸としながらも、僕らが目指すのは日本人にしか発想できない、面白いプロダクトを生み出すこと。ユニークなものを追求し続けることで、世の中にインパクトを与えられたらいいですね」

(2016.03.17公開)

LATEST POST