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ビジネスモデルの未来

デジタルコミュニケーションが顧客体験まで創造する時代へ(後編)

電通アイソバー株式会社 得丸英俊・飯田昭雄/リープマインド株式会社 松田総一

前回に続き、コミュニケーション×ディープラーニングを軸として新たな試みに挑戦するプロジェクト「KUMU」のキーパーソン3名に未来の広告の在り方や、これからのデジタルコミュニケーションの変化について話をうかがったインタビューの続編。(前編:コミュニケーション×ディープラーニングが生み出す未来価値とは

後編では、必要とされる人材像や求められる技術など、この領域で働きたい人なら知っておきたい情報まで話が及んだ。

■電通アイソバー株式会社 代表取締役社長CEO 得丸英俊氏(写真左)
■電通アイソバー株式会社 アートバイヤー 飯田昭雄氏(写真中央)
■リープマインド株式会社 代表取締役CEO 松田総一氏(写真右)

新しい技術を追求し続け「情報を届けるだけ」から脱したい

――テクノロジーが発達するに伴い、広告を媒介としたコミュニケーションの形も大きく変わってきています。インターネット上の行動履歴をもとにカスタマイズされた広告が配信されるのはその一例かと思いますが、電通アイソバーが考えるコミュニケーションの未来とはどのようなものでしょうか。

飯田:僕らはその先に行きたいんですよね。ちょっと前までの広告といえば、あるメディアの上にクリエイティブを載せて、お客様にお届けして終わり、という側面も一部ありました。しかし、現在はクリエイティブを見た後にターゲットが実際に行動しているかどうかまでウォッチするようになっている。ですが、それでも不十分だと思うのです。

われわれがその企業の商品やブランドと接触しているのは、当然広告を見ているときだけではありません。むしろ、それより後の方が長いわけです。普段使っているMacの調子が悪くなればアップルストアに持ち込み、スタッフの方たちに解決してもらう。その時の印象がすごくよかったら「ああ、やっぱりMacにしてよかったな」ときっと思うでしょう。そういった顧客体験やアフターサービスまで、マーケティング活動の中に含まれているわけです。

私たちは、これをAIやBOTなど、テクノロジーを用いて再現できないかと考えています。「あの時、これを選んでよかった」と思わせるような顧客体験をデジタルなコミュニケーションの中でも提供したい。私たちの仕事の領域は、デジタルによって境界線がどんどんなくなってきています。そこをチャンスと見るか、ピンチと見るかで見解は分かれますけれども、僕は可能性を感じていて、これまでに培ってきた経験や知見がもっと応用できるのでは、と考えています。

――BOTやLINEを使ったコミュニケーションは、電通アイソバーが現在提供している代表的なサービスだと思いますが、そういったものをどうやって活用していくかは、デジタルエージェンシーごとに変わっていくのでしょうか。

飯田:その可能性はありますね。LINEやFacebookは巨大なプラットホームですが、企業やブランドのニーズや、その先にあるお客様のニーズをくみ取って、どういう見せ方をすべきか、どんな機能を持つべきかという仕組みづくりは、私たちの知見が生かせるところですから。

得丸:そのため、われわれは新しいテクノロジーの使い方を常に頭をフル回転して考えなければならないんです。そういう意味では、いろいろな技術を理解している社員をどんどん増やしていかなければならないですし、そういう人たち同士が一緒に仕事をすることで、新しいシナジーやアイデアが生まれてくると思っています。

松田:電通アイソバーなど、力ある企業が新しいものを積極的に取り入れようとする考えを持ってくれると、僕らのような研究開発型の組織も報われます。どんなに優れたテクノロジーを生み出せたとしても、社会に還元できないと意味がありませんから。僕らが研究したものを世の中に出す際のハブになってくれるエージェンシーがあると非常に心強いですね。

飯田:元々エージェンシーの役割を振り返ってみると、まずは「よい商品ができたのだけど、これをどうやって売ったらいいだろう」という人たちの相談相手、パートナーとして始まったわけです。マーケティング上の課題をデジタルコミュニケーションで解決しましょう、と。それが次第に新技術や先端的なサービスまでキャッチアップして、その使い方を考えるところまでが事業の範囲に含まれるようになってきたと思います。

人工知能や機械学習が普及する中でも活躍できる人材像とは

――新しい何かに挑戦し続ける電通アイソバーが人材を採用する際に重視している点はどんなところになるのでしょうか。

得丸:新しいテクノロジーは自分で深く掘り下げて探索していかないとキャッチアップできない面もありますから、「新しいモノ好き」であることは大事ですね。世間の変化を肌で感じながら「次はどうなるんだろう」と常にワクワクできる、変化を楽しめる方が向いていると思います。このワクワク感は必ず人に波及するからです。「こんな面白いテクノロジーがあって、こうすると新しい価値が生まれると思う」と、素直に口に出せることも1つの武器です。

それから、僕らはよく「T型の人材」と呼んでいますが、得意とする専門分野は持ちつつも、幅広い分野の知見を少しずつでも持っている方は非常に強いですね。

――ありがとうございます。最後に、皆さんそれぞれ人工知能やディープラーニングといった技術がもたらす未来の社会にどんなイメージをお持ちでしょうか?

松田:機械と人間の境目が曖昧になり、無意識でネットワークにつながることができる世界になると思っています。そうなると、機械が自ら学習し、判断できるようになる機械学習はかなり大事な技術になってくるはずです。

これまでの人間の生産活動は、まさに「働かざる者食うべからず」で、ほとんどを生きるために費やしてきました。生産活動を皆で分担する社会が構築され、その結果、個々が持っている能力が生かせない役割も担わなくてはならなかったわけです。

しかし、機械学習などの新しいテクノロジーが広まることで、人間は生産活動に追われる呪縛から解放されるかもしれない。一人一人が持つポテンシャルを存分に発揮できる社会が待っていると思います。

得丸:僕も松田さんと同意見ですね。世界中の人がもっと幸せになれると考えています。最近は、ベーシックインカムを含め、ロボットに仕事を任せてその上で人間は何をやるべきかという議論が本格的にされるようになってきました。「人工知能が仕事を奪う」とも一部で言われていますが、いざそうなれば人間にしかできない新しい仕事が創出されるはずです。

産業革命が生産をドラスティックに変えたことで、世界は急速に発展し始めたわけですが、今の成長スピードをさらに加速させてくれるのが、人工知能やディープラーニング、IoTといったテクノロジーの存在だと考えています。電通アイソバーはそうしたテクノロジーを駆使して、世の中に新しい価値や可能性を提示する集団でありたいですし、それを通じて世の中がもっと明るく、そして皆が少しずつ幸せになってくれたらいいなと、心の底から願っています。

■プロフィール
・電通アイソバー株式会社
http://www.dentsuisobar.com/
代表取締役社長CEO 得丸英俊

電通営業局勤務中の1990年代半ばから、デジタルコンテンツ、インターネットを活用したマーケティング領域へ。当時は、Macを駆使して、企画からデザイン、コーディングまで一人でこなすこともあったという。電通グループのベンチャーキャピタルや外資インタラクティブエージェンシーとの合併事業、ISIDデロイトなどの役員を歴任し、現在は電通アイソバーの代表取締役社長を務める。

・電通アイソバー株式会社
アートバイヤー 飯田昭雄

多摩美術大学建築学科卒業後、編集者からキャリアをスタートし、1990年代半ばにはキャラクターブームの火付け役として数々の書籍をプロデュース。2002年にはA Bathing ApeのNIGO(R)とインテリアデザイナーの片山正道氏とともにBAPE GALLERY を立ち上げ、キュレーターとして活躍。Wieden+Kennedy Tokyoを経て、2012 年に電通アイソバーに入社。広告から社会貢献活動まで横断的に関わる。

・リープマインド株式会社
http://leapmind.io/
代表取締役CEO 松田総一

「テクノロジーで、社会を一歩先に進める」ことを目標に、ディープラーニングを使った詳細物体認識の研究を行う。人と機械の境界線をなめらかにしていくために、ディープラーニングの力を社会に浸透させていくリープマインドを経営する。特に計算量圧縮や分散インテリジェンスなどにフォーカスした研究に定評がある。

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