探そう、まだ見ぬ未来を。

ビジネスモデルの未来

データを「膨張」「圧縮」し、未来を先読むテクノロジスト

DATUM STUDIO株式会社

ビジネス現場で役立つデータ分析を目指す

ITやビジネス業界で、2011年ごろからホットワードとなった「ビッグデータ」。このビッグデータを適切に活用できれば、企業活動の合理化と正確な意思決定が可能となり、利益に直結するというのが、ビジネスにおける常識となりつつある。そのビッグデータ統計・分析のスペシャリストとして、さまざまな企業が抱える課題を解決へ導き、急速に成長を遂げているスタートアップがDATUM STUDIO株式会社だ。

DATUM STUDIOの設立は2014年8月。創業からわずかな短間で、業種・業界に縛られることなく、多種多様な大手企業数十社と取引を実現。確かな成果を残すことで信頼を得ている。その理由の一つが、予測精度の高いデータ分析力だ。

「私たちが目指しているのは、ビジネス現場で実際に役立つデータ分析です。多くの企業では、パッケージングされた既存の解析ツールにデータを入力して予測を導く方法が主流になっていますが、私たちは、その真逆をいくイメージ。お客様の要望や課題に対し、データ分析処理に特化したR言語などを用いて、これまでにないビジネス用アルゴリズムを作成します。いうなれば、お客様ごとにオーダーメードのモデルを作っているわけです。独自のノウハウとテクニックで、目的を果たす予測結果を納品しています」と酒巻隆治代表取締役は説明する。

その実力は、各方面で実証されている。例えば、あるテレビ局から依頼されたイベント集客につながる広告予測では、客層がいつ、どの媒体やメディアがきっかけとなってイベントに来場したかを分析。テレビCMや番組内での告知、バナー広告、SNS、雑誌、中づり広告など、さまざまな要素に対して、投資対効果の分析を行った。

その結果、予測と実測の波がほぼ一致。「雑誌のツアー特集に本イベントが取り上げられて効果が出るのは、イベント実施2カ月前まで。そこから先は広告を打っても反響は乏しい」と予測していたが、実際に一つ一つの予測が精緻なデータとなってあらわれていた。

オーダーメードのアルゴリズムで要望や課題に対応

DATUM STUDIOは、創業メンバーである酒巻氏と里洋平取締役によって設立された企業だ。その設立のきっかけは、二人が以前勤務していた株式会社ドリコム時代にさかのぼる。

「『ビジネス活用事例で学ぶデータサイエンス入門』(ソフトバンククリエイティブ)という共著本を執筆したのがきっかけでした。それまで業務を一緒に行うことはほぼなかったのですが、共著がきっかけで意気投合。また、書籍もそれなりに売れて、私たちのノウハウを求めるニーズがあることを実感し、互いに起業に至りました」と里氏は振り返る。

酒巻氏は慶應義塾大学環境情報学部で学び、同大学院で人工知能を専攻。その後、東京大学大学院で人間環境学の博士号を取得。人間が環境に残す各種行動と購買ログの解析を得意としている。一方の里氏は、R言語の東京コミュニティーTokyo.Rの主催者としても活動する、ビッグデータ領域の第一人者として知られる存在だ。

これまで培ってきたそれぞれの知識と技術を生かし、現在のデータ分析のスタイルを築き上げた。酒巻氏は、「使えるデータ分析を行えなくては意味がない。役立たなければ捨てていただいていい」と断言する。では、使えるデータ分析とは何か。それはやはり、要望や課題に対して予測をピンポイントで導き出せる、独自のアルゴリズムの作成がカギになるという。

「私たちの会社では、従業員みんなでやり方を考えます。例えば、平均値を出すこと1つをとってもデータが膨大すぎると、既存の方法では商品の動きや集客に結びつかない予測結果になることもあります。その場合は、全体のバランスを見てデータを小さくしたり、逆に小さければ大きくする工夫を行います。また、1,000万件のデータの計算に1週間かかるならば、計算効率を上げるためにサンプリングを行って、1週間かかる作業を見直し、おびただしい数のトライができるように工夫します。こういったデータを『膨張』させたり『圧縮』させたりできる独自のノウハウとテクニックが、私たちの最大の強みです」

エンジニアリングと合わせて試される企画力

酒巻氏は、アルゴリズムの作成で、最初に行うべきことは「仮説を立てること」だと語る。

「とある消費財の販売数を予測するアルゴリズムを作るとしましょう。商品の売価や競合商品の存在などは必要な要素としてパッと思い浮かびますが、それ以外にも私たちの想像だけでは至らない要素も必ず存在するわけです。例えば、『雨の日に仕入れると商品が動きやすい』ということもあるでしょう。そうした話をお客様から聞けたならば、私たちは天気データをアルゴリズムに組み込みます。お客様にヒアリングして、知恵をお借りしながら仮説を積み重ね、一緒にアルゴリズムを作っていくのです。そういった意味では、当社が手掛ける仕事は、プログラムコードを書く能力や知識だけではなく、企画力も試されると思っています。また、ビッグデータは、新たな知見としてビジネスやサービスに生かす人の動きを対象にしたデータ分析ですので、そこに人間的感覚や体温を添えてモデルを作ることが重要です」

現在、DATUM STUDIOの従業員数は39名(2016年2月1日時点)。設立から2年弱で多くの仲間を採用するに至っているが、加入するメンバーの前職はエンジニアだけに限らず、さまざまな数字に触れてきたマーケティング職も多いという。さらにユニークなのが、DATUM STUDIOでは、それぞれのスタッフにわざと経験のない仕事を業務として任せることで、スタッフの能力を伸ばす育成を行っているのも注目すべき点だ。

「今までコードを書いたことのない人がコーディングできるようになり、大勢の前で話す機会のなかった人がお客様の前で堂々とプレゼンできるようになる。エンジニアやマーケッターといった職種の壁をこえて、どちらの能力も求められるのが、これからのビッグデータ分析に携わる人たちの宿命です。私たちはまだまだ小さな会社だからこそ、他にはない若く、斬新なアイデアがなくては生き残れません。だからこそ、スタッフ全員がスペシャリストとして活躍できる土壌を作ることを大切にしています。その先に、DATUM STUDIOがより良い未来へ近づくデータ分析を提供できる会社になれたら良い。そんな未来を楽しみながら予想しています」

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