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「ジョブズが起こした革新の反作用に向き合うべき」。Datorama Japanが主張する、マーケターの変化に必要な3つのアクション

DatoramaJapan株式会社

「日本国内のマーケターの多くが、適切な戦略を立てた上で必要なデータに向き合うということができていない。この課題の本質は、分析業務以外の時間、つまり準備などに時間を割きすぎていたり、分析して得たインサイトを共有することが難しいためです。企業としてのKGIを見据えつつ、より多くの時間を実践や学習に費やすことができなければ、グローバルのマーケターに後れをとるばかりでしょう」

こう主張するのは、米国Datorama Inc.(デートラマ)の日本支社であるDatorama Japanの布施一樹代表取締役だ。米国で大学院を卒業し、外資系企業へ就職。MediaMind(現・Sizmek)のカントリーマネジャーを務めた後、現職に就いた布施氏。デジタルマーケティング領域で13年もの月日を過ごした彼は今、日本企業のマーケティング革新に向けて日々活動を続けている。その根底にあるのは、常に世界最高水準のマーケターたちを相手にしているからこそ感じる、日本のマーケターに対する強い危機感だ。

現代日本のマーケティング課題をストレートにひもとく布施氏。その言葉の裏側には、今まさに、世界と伍(ご)するマーケターが向き合うべき課題が詰まっていた。

Datoramaが展開するマーケティング・インテリジェンスとは?

Datorama Inc.はイスラエル発のスタートアップ企業だ。創業者はラン・サリグ氏、エフィ・コーエン氏、カトリン・リバン氏の3名。その後、米国市場へ拠点を移し、現在は世界各国で16拠点を展開。世界唯一のマーケティング・インテリジェンスである「Datorama」を提供している。日本法人であるDatorama Japanは2015年6月に設立、14名という少数精鋭の体制だ。

2016年9月には米国VCのライトスピード・ベンチャー・パートナーズからシリーズCラウンドとして、3,200万ドルを調達。Googleの元CEOであるエリック・シュミット氏が出資するイノベーション・エンデヴァーズなどからも資金を集めており、米国だけでなく、世界中から熱い視線を集めている企業の1つだ。

同社の社名でありサービス名でもある「Datorama」は、「Data」という言葉に、展望や眺望といった意味が含まれる「Panorama」を組み合わせた造語だ。「データを俯瞰(ふかん)する」という意味が込められているという。「Datorama」は企業内でバラバラになっているマーケティング施策のデータの一元管理を可能としている。端的に言えば「マーケターやボードメンバーの意思決定を強力にサポートするダッシュボード」だ。従来はExcelなどの手作業で行われていたレポーティングも、この「Datorama」を活用することで、大幅な効率化を図ることができるという。事実、世界ではすでに2,000社強が導入しており、日本国内でも株式会社電通や株式会社電通デジタル、株式会社博報堂DYデジタル、ネスレ日本株式会社など数多くの企業が導入している。

では、なぜ今「Datorama」のようなマーケティング・インテリジェンス(Marketing Intelligence)が多くの企業から注目されているのか。その背景には、マーケティング業界のソリューションが爆発的に増加したことがあげられるという。布施氏によれば、「2011年時点ではマーケティング業界におけるITソリューションは150種類ほどでした。しかし、2017年現在、この数は5,000種類を優に突破しています」とのこと。

マーケターは数多くのソリューションやテクノロジーを駆使し、最高のパフォーマンス実現に向けて日々努力を続けている。当然、それらの施策一つ一つに対して、投資に対する利益が妥当なものかを判断する必要も出てくる。だが、一つ一つのプラットフォームからデータをインポートし、レポーティング資料へ落とし込むには多くの時間と労力を必要とする。膨大な情報を収集し、加工し、分析し、提言まで持ち込む……この時間を短縮して、マーケティングに従事する人々の多くに本来行うべき業務の時間を取り戻すのが「Datorama」の役割だという。

それでは、本題に入ろう。布施氏が提言する、マーケターの変化に必要なアクションは次の3つだ。

【1】80%を占める分析以外の業務時間をゼロにし、時間の使い方を変える

米国のデータサイエンティスト協会に所属するデータサイエンティストたちに調査をした結果、彼らの業務時間のうち、実に80%の時間がデータの抽出やクレンジング、モデリングなど、分析以外に充てられていることが分かりました。つまり、データサイエンティストの本分である「分析」にフォーカスできている時間が、たったの20%しかないわけです。一般的に高給取りと言われるデータサイエンティストですが、そのコアバリューを発揮するまでに多大な労力を費やしてしまっている。これはとてつもなく大きな課題です。

こうした人材を本業に集中できるようにすることが「Datorama」というダッシュボードソリューションの役割です。「何を可視化すべきか」「どうデータをクレンジングすべきか」「意思決定に必要な情報、不要な情報は何か」を、データの利用用途や閲覧する役職別に切り分け、分析や意思決定の直前まで、すべて人間の手を介さず提供できるようにしています。正規化されたデータの抽出は、すでにマーケティング・インテリジェンスを使用することで人の手を介さずとも実現でき、一気に可処分時間が増えることになります。

こうなると、次は「この後、何をすれば良いのか分からなくなる」という声が出てきます。これまでの業務フローから大きく変化するわけですから、そうした声があがることも当然でしょう。しかし、目の前の業務に忙殺されず、やるべきことが何かを見定める……これこそがデータを活用するマーケターとしての「レベル1」ではないでしょうか。使えるようになった時間でやるべきことを考えることが大切です。マネージャーなどの役職者であればメンバーの業務時間がクレンジングなどの作業から解放されたことで、「節約した時間に何を担当するのか」をしっかりとガイドする必要があるでしょう。「考える」という本質的な業務に時間を費やせるようになることで、ようやく次の段階に向かえるようになるのです。

まずはサービスの成熟度に応じた分析や最適なマーケティング施策を考える時間に充てましょう。徹底的に、です。企業としてのKGIを達成するために本当に必要なものに向き合って戦略を立てることです。“KKD(勘・根性・度胸)”なんて言葉がかつて存在しましたが、今の時代、データに基づいて仮説を立て、そこから施策を生み出した方が圧倒的に価値ある意思決定ができることは明白です。AIや機械学習がより活用されていく時代の中で、われわれは日々を送っています。マーケターの働き方もテクノロジーの進化につれて変化するべきです。

【2】テクノロジーが進化してもマーケティングの本質は不変

マーケターとして市場を作る、シェアを獲得するために生活者を知る。そういったマーケティング活動の目的はテクノロジーが進化した今でも変わっていません。ただ、デジタルメディアやデバイスが発展・進化するほどに生活者を知ることが難しくなっています。

言い換えれば「マーケターが机上で想像している生活者が実際の生活者ではない」とも言えるでしょう。以前は、何かメッセージを届けるためにマスマーケティングを活用すれば一定の成果を上げることができました。しかし、今は「期待以上のレスポンスが取れない」「売り上げが伸びない」「シェアが取れない」といった声をよく聞きます。この大きな変化を引き起こしたのはスマートフォン、さらに言えばiPhoneの登場にあると言えます。デジタルマーケティングのゲームチェンジは、この世界中を魅了した端末の誕生と同じタイミングによって引き起こされたのです。

以前は、PC上でのユーザー行動をCookieで追うことができましたが、iPhoneおよびスマートフォンの台頭により生活者とネットの関係は、PCからスマートフォンに変化しました。その時点でユーザー情報が分断されています。そもそも、iPhoneはCookieが無効になっていて、トラッキングができません。ユーザーサイドはどんどん便利になっていますが、ユーザー行動が把握しづらくなるという、マーケターにとっての反作用も起こっているわけです。

テクノロジーの進化に伴うユーザーの変化・進化にマーケターは置いていかれないようにしなければいけません。例えば、数十年前まではクルマは一種の成功のシンボルでした。しかし、現在はどうでしょうか。「若者のクルマ離れ」が盛んに叫ばれているように、クルマを持つことがステータスの時代ではなくなりつつあります。過去の方法論が通用しなくなるサイクルがどんどん短くなる今、ユーザーに振り向いてもらう前に、まず「忘れられないためにどうするのか?」を考えるような時代に到達しているのです。

ユーザーに提供されるソリューションは、今なお急激な進化を続けています。スマートフォンアプリがその代表格ですが、ユーザーもより便利になると知っているから、次々に新しいものを選び、また不要なものは捨てていきます。ユーザー側のスイッチングコストは非常に低いため、データは断続的になり、散り散りになったデータから生活者の心理を読み解くことはより難しくなるでしょう。マーケターは、この困難なハードルを越えなければいけません。

従来、マーケターは「われわれが市場を作っている」という視点もあったと思います。しかし、これからのマーケターは自分たちのできること・できないことに気付くことが大切です。これは、できていること・できていないことを知るという点にもつながります。そのためにも、セールスとマーティングを統合した情報が不可欠だと言えるでしょう。限られた予算の中、社内に蓄積されているデータはすべて使わなければ、大きな損失が発生します。実際、テクノロジーの進化に伴いユーザーをトラッキングする手段は増えていますが、どういう形で使っていくのか? この視点をあらためて捉え直すことが生活者を知る第一歩につながるのかもしれません。データは生活者を知るためのアンテナ。その先の戦略は機械ではなく、人間が決めるのですから。

【3】マーケティング戦略を語れる人材へ

私はデジタルマーティングの領域に13年間身を置き、グローバルなマーケターと会話をする機会も多くあります。彼らは英語で書かれた最新のレポートに常に目を通し、テクノロジーも理解しつつ、さらにマーケティング戦略はどうあるべきかについて議論しています。しかし、日本のマーケターに対して「御社のマーケティング戦略、分析戦略とは何でしょう?」と質問すると、その場ですぐに答えられる人はごく少数でした。

よく市場価値向上の例えで、「100人の中で1番を目指し、それを2つ以上作りなさい」という話がありますが、世界のマーケターに目を向ければ、「100人中1番」と呼べるものを、2つ、3つ持っている人たちがゴロゴロいるわけです。こうした目線で見てみると、私は日本のマーケターは本質的に強いマーケターではなく、日本に特化したマーケターになっているのではないかという危機感を抱いています。

日本市場はとても特殊であり、競争環境がそもそも違います。言語バリアはもちろんのこと、あらゆる業種で大きなシェアを獲得している国内企業やブランドが存在しており、海外企業からの参入を難しくしています。しかし、労働人口の減少など、シュリンクし続けている国内市場を見ても分かる通り、これからは多くのビジネスが、世界を相手に勝たなくては生き残れない時代がやってきます。そのためには、マーケター自身がグローバルで通用する人材に進化しなければいけません。テクノロジーの進化によって働き方が大きくシフトせざるを得ない中、私はマーケター自身がマーケティング戦略を語れる人材にならなくてはいけないと考えています。

市場を形成し、顧客のことを考えるのはもちろん大事です。ただ、コーポレートとしての戦略でどのように実現していくのか? この分析戦略はまだお持ちでない企業の方が多いのです。プロセスをエンジニアリングし、その先の戦略を作り上げる。これが今後のマーケターに必要なアクションだと私は考えます。

AIはアシスタント。マーケターが価値を生み出せ

布施氏は「テクノロジーは進化している」というフレーズを何度も強調していた。2017年2月には、Amazonの音声認識アシスタント「Alexa」が同社の「Datorama」と連携し、音声認識でデータが表示される時代が来ている。プレゼンテーションの場ですら、AIが顧客からの問いに対して回答することが可能になっているのだ。ただし、あくまでもデータという裏付けがあってのことである。

では人間が果たすべきマーケターの仕事がAIにすべて置き換えられるのかと言われると、そうではないと布施氏は力強く言う。現時点でデジタルマーケティングにおける意思決定は人間の役割であり、「AIをアシスタントに据えた働き方を取り入れることで、マーケターはもっと進化できる」と断言する。

2018年、Datoramaは、トレジャーデータ株式会社と株式会社zero to oneが共同で行うデジタルマーケティングのオンライン教材の開発に参画する予定だ。マーケターの進化に力を注ぎ、世界に伍するマーケターを育成、輩出することで日本をより力強い国にする。日本を、世界を見据える布施氏の目は真剣そのものだ。

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