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ビジネスモデルの未来

目指すのはポップでカジュアルな民泊ビジネス

株式会社クルトン

民泊の現状がゆらゆらしているからこそ面白い

2016年5月に創業した株式会社クルトン。代表取締役の青山豪輝氏と、取締役副社長の森実勇樹氏の2人が事業の柱に掲げたのは民泊ビジネスだ。

現時点で「民泊」という言葉が内包しているのは、未知の可能性と現実的な不安と言っていい。爆買いが話題となった2015年の訪日外国人数は約1,970万人。対して同年の出国日本人数は約1,620万人で、それまで出国日本人数が優位だったのがついに逆転した。

それに伴い外国人旅行客を受け入れる宿泊施設の絶対数不足が浮き彫りになり、メディア露出が増えつつあったAirbnb(エアビーアンドビー)の存在などとあわせて一気に民泊への注目が集まった形だ。観光産業を発展させたい政府は、1952年に制定された旅行業法ではくくりきれない新しいビジネス形態に向けて規制緩和の実施を発表。その背景には、2020年に控えている東京オリンピック・パラリンピックの開催もある。

上記は民泊が持つ未知の可能性。一方の現実的な不安は、貸し手・借り手双方にある違法行為の横行だ。この件はメディアで何度も取り上げられている。新たな潮流が起こると警戒心が働くのは世の常なのか、民泊に関してもネガティブな側面が強調される傾向にあるが、一般住居がいきなり宿泊施設となり見慣れぬ人間が出入りすれば、周辺住民が住環境破壊を心配するのは察して余りあるところだ。

また、政府が実施するという規制緩和の検討速度も現場の変化に追いつかず、2017年3月に「住宅宿泊事業法案」の閣議決定がなされたばかり。また、旧来の法律で運営してきた旅行業界からの反発もあるという声もある。しかし、こうしたネガティブな要素が散見されるにもかかわらず、クルトンの2人からは微塵も悲壮感は感じられない。

「こういう状況だからこそ、民泊にチャレンジしたいなと思いました。現状、民泊がどうなるのかゆらゆらしていて分からない。そこに新しさと面白さがある。僕らは民泊のネガティブさを払拭して、ポップなエンターテインメントにしたい。そして、『クルトンを通すと難しそうな事柄がカジュアルになる』という会社になりたい。それを果たすのが僕らの使命であり、民泊ビジネスはその一歩という位置づけでいます」

そして彼らは、混沌とする現在の民泊ビジネスがまだ捉えきれていないターゲットを絞り出したという。

厳しい営業時代に培った起業への自信

クルトンが見据えた民泊の将来を紹介する前に、彼らの経緯を話しておきたい。現在30歳の青山氏と31歳の森実氏は、共に新卒採用された人材系企業の先輩後輩として出会った。森実氏が2008年、青山氏が2009年入社だ。その入社年を見ればわかるように、社会人になったばかりの彼らはいきなりリーマン・ショックの荒波に襲われた。

「聞いていた人材業界の華やかさは、まずありませんでした。どの企業もコスト削減で手一杯で、人を新たに採用する余裕なんてない。門前払いを食らうことなんてしょっちゅうでした。これが社会の厳しさなのか、と痛感しましたね。その後、どうにか苦しい時代を乗り越えたところで、今度は『人が全然足りない!』と一気に忙しくなりました。これはこれで、やっぱり大変でしたね(笑)」

そんな苦しい時代を経験した彼らに、いつ起業の意志が芽生えたかを尋ねると、青山氏は「会社を経営していた父親に、サラリーマンよりいいぞと洗脳されたんです。それで中学時代から将来は起業すると決めていました。でも、明確にやりたいことは全然なくて。面白いことが見つかったら起業するか、くらいの気持ちでいました」と言う。

対して森実氏の回答は「金持ちになりたかった」というものだ。「母が内職するのを見て育ったんです。大学進学も、国公立大学以外に進む道は考えられなかった。数百万円の奨学金はまだ返済しきれていません。前職でも高い給与はもらえていましたが、もっと上を目指したい気持ちがあったのも事実。だから青山と2015年の暮れに会い、起業の誘いを受けたときにはその場で即答しました。僕も、多少のリスクを取ってでも新しいことに挑戦したかったから」

ここまでの話、若者がベンチャーに賭ける意欲としてはありきたりかもしれない。しかし彼らはいずれも結婚し子供がいる。その上で起業に踏み切ったのは若さが原動力だったにせよ、退路を断つ覚悟を決めて臨んだことに間違いはない。青山氏は言う。

「正直なところ、起業が最優先だったので何をするかは後で決めました。もちろん互いに必死でさまざまなアイデアを出し合って。民泊を選んだのは、ビジネスとして“スケールする”と確信できたから。それに僕ら、売り物さえあればどんな営業もできると思っているんです。それはリーマン・ショック後の、泥水を飲むような営業で鍛えられた自信ですね」

日本人を対象にした民泊という新マーケット獲得に向けて

民泊を事業の旗頭に掲げた彼らが最初に取り組んだのは、セミナーの開講だった。だが、クルトンが手がけるセミナーは、「民泊のメリットとデメリットは何か」「何をすれば現行の法律に抵触するのか」といった形式的なものではなく、実際に民泊を行っている物件を会場としている点が大きな特徴だ。クルトンの2人に加え、物件オーナーからも過去の体験談を語ってもらう形式にしており、参加者の評判も上々。セミナー後に回収したアンケートは、これまですべて「大変満足」以外の評価はないという。

「スピーカーの方には、『収支まで含めてリアルを伝えてほしい』と伝えています。貸し出している物件そのものは、決して特別な外観や内装ではありません。それでも、民泊を利用することで、多少くたびれた家でも民泊として再生できる事実に受講者の皆さんは毎回驚かれています」

また、セミナーを開催する中で、物件保有側と民泊ビジネスをしたい側との交流が皆無に近い現状を知ったという。そこでクルトンは、民泊を始めたい業者間の出会いを提供するポータルサイト「share ,be」を立ち上げた。2017年4月にはインターネットポータル大手のエキサイト株式会社と業務提携し、「エキサイト民泊」をリリース。民泊業界の羅針盤となるようなメディアを目指す。

しかしSNSによる民泊事業には、すでに有力な競合が多い。中でも2008年に設立されたアメリカ発のAirbnbは、世界191カ国、65,000以上の都市で展開され、日本国内でも契約物件数が40,000件を超えたという。無論、日本発のサービスも稼働している。そこにどう対抗していくか。その答えが、青山氏が口にしたポップなターゲットだ。「InstagramやTwitter上で『#民泊』と検索すると、女子高生らの投稿が大量にヒットするんです。そこには『民泊カワイイ』『面白い』といったコメントが目立ちます」

その背景にあるのは、「農業体験などをセットにした民泊利用の修学旅行が増えたから」だと青山氏は続ける。「若い世代は民泊に対して特別な感情は持っておらず、その体験をストレートに受け止め、将来的な民泊ユーザーに育ってくれます。僕らが狙っているのは、インバウンドと呼ばれる外国人観光客以上に、こうした国内旅行者です。民泊ビジネスをしたいけれど外国人ではなく日本人を泊めたい業者や、日本人向けの民泊なら泊まりたいユーザーが必ず増えてくるはずです」

民泊と言えば外国人向けというイメージがあるが、訪日外国人観光客がようやく2,000万人を突破したのに対し、国内旅行者は延べ6億人超とされる。対象となるユーザー数はもちろん、コミュニケーションや治安といった観点からも、国内旅行者に絞ったターゲティングは理にかなっているといえる。森実氏は力強く語る。

「僕たちの見込みでは、あと3年もたてば、民泊は確実なマーケットになっているはずです。ホテル、旅館、キャンプ……そこに民泊という選択肢が自然と加わる時代がやってくる。画一的な内装や宿泊プランが主体のホテルや旅館に、カジュアルでポップな宿泊スタイルを提供できる民泊が入ってくれば、業界全体も活性化されるはず。そんな未来が当たり前になるより先に、クルトンとしてやれることはなんでもやっていきたい。やることは、あくまで自分たちがワクワクすること、という条件付きですが」

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