探そう、まだ見ぬ未来を。

ビジネスモデルの未来

ソーシャルビデオをテレビに次ぐ発明に。業界の雄が集まる大人ベンチャー「Candee」の挑戦

株式会社Candee

メディア、広告、タレントマネジメントの3事業を推進

印刷技術が発展したことで新聞や書籍が生まれ、電波が音声や映像に変換できるようになったことでラジオ、テレビが生まれてきたように、過去、テクノロジーの変化によって新しいメディアが誕生してきた。そして近年、インターネットを活用したメディアも次々と生まれてきている。電子書籍をはじめ、インターネットラジオやリアルタイムでの動画配信サービスなどがその一例だ。

これまで、動画はテレビや映画など、ごく限られたプラットフォームでしか享受できなかった娯楽だった。それが、さまざまな技術発達により、さまざまなデバイスで、いつでも好きな時に閲覧できるようになっている。「私たちはテレビの次を見据えた、インターネット時代だからこその映像メディアを作っていきたいと考えて会社を立ち上げました」と、語るのは株式会社Candee代表取締役副社長 CCO(Chief Content Officer)の新井拓郎氏だ。

Candeeの社名は、「Culture AND Entertainment, Experience!」の頭文字。新しい時代のカルチャーと、スターの創造をミッションに掲げる、モバイル動画を主体としたベンチャー企業だ。「われわれの目指す事業領域をひとことで言うと、総合メディア企業だと思います。メディア、広告、タレントマネジメントという3つの事業を垂直統合することで業界のバリューチェーンを変えていきます」と新井氏は自信をのぞかせる。Candeeが今、目指すのは「ソーシャルビデオ革命」だという。過去のコンテンツイノベーションの歴史を踏まえ、ソーシャルビデオという新しいコンテンツ体験を浸透させること。かつてテレビが時代を席巻したように、ソーシャルビデオでも同じような衝撃を与えることを目指すのだという。

新井氏はソーシャルゲームで起こってきたような「コンテンツイノベーションにおける3つの階段」を、スマートフォン時代の動画においても登っていくことになるだろうと指摘する。3つの階段とはつまり、「移植」「アマチュアによる制作」「プロによる制作」を指している。例えば、スマホが登場して間もないころには、コンシューマーゲームの一部をそのままスマホに移植するといったゲームが主流だった。そこから個人のクリエーターが自主制作したゲームを公開し、低予算で作られたゲームのなかからスマホらしいユニークなものが多くの人に遊ばれるという時代に突入。だが現在、個人制作のゲームアプリの存在感は年々薄れつつある。代わりに台頭しているのが、ゲーム制作会社やプロフェッショナルなクリエーターが集結して作ったアプリタイトルだ。

「かつては『低単価でゲームが作れる』『大手企業でなくても一獲千金を狙える』ということで玉石混交のゲームマーケットが形成されていました。しかし、『パズル&ドラゴンズ』や『モンスターストライク』といったスマホならではのハイクオリティなゲームが登場して以来、そうした低単価なゲームや個人制作のゲームの多くは駆逐されてしまった。言い換えれば、その道のプロフェッショナルたちがスマホに最適化されたコンテンツを作って今のマーケットを形成している、ということです」

ここで鍵となるのはお金をかけた、時間をかけたということではなく、「最適化されたプロクオリティ」という点だ。スマートデバイスという限られたスペース内での見せ方やユーザビリティ、インターネットを活用したソーシャルという仕組みをうまく取り入れたことで、ゲームはスマートデバイスでしか提供できない体験を提供し続け、業界全体でも圧倒的に売り上げを伸ばしている。これと同じ流れが映像の世界でも起きる、とCandeeは考えている。

Candeeがユニークなのは、事業領域が映像制作にとどまらず「メディア事業」「広告事業」「タレントマネジメント事業」と幅広いことだ。これまでの芸能ビジネスでは、これらの事業が、テレビ局や制作会社、芸能プロダクションといった形で独立していたが、Candeeはこれらをひとつに集約して推進させようとしている。

「3つの事業のトライアングルでテレビや映画の世界は成功してきました。ソーシャルメディアの発展にもこれらの機能は不可欠ですが、その一部だけ切り取っても非効率ですし、新しいビジネスは生まれない。私たちはベンチャーですが、3社同時に立ち上げたような感覚ですね」と新井氏は笑う。

ソーシャルライブコマース「Live Shop!」の可能性

Candeeでは、スマートデバイスにフィットするコンテンツを検証するため、さまざまなタイプのコンテンツフォーマットを企画制作し、ノウハウを積み上げている。鍛治良紀執行役員は「まだ誰も知らない成功パターンを探る段階にある」と言う。

「特定のジャンルに絞らずコンテンツを作ってきたのは、圧倒的に打席に立つ必要があると思ったから。そして、2016年12月までに累計16億円の資金調達を実施したことも含めて、僕たちのやりたいことができる環境が整ってきました。いよいよ自社プラットフォームを立ち上げよう、というのが、2017年の今です」

「スマホファースト」「ソーシャル」「インタラクティブ」の3つのキーワードを軸としてソーシャルビデオ革命を推進しているCandee。その口火を切る形で2017年6月にリリースしたのが、ライブ配信中に商品を購入できるソーシャルライブコマース「Live Shop!(ライブショップ)」アプリだ。「Live Shop!」は、モデルやインフルエンサーといった出演者が流行のファッションやメイクなどを女性のユーザーに向けてライブ配信で紹介するというもの。気に入ったアイテムがあればユーザーはその場で即購入することができる。

「なぜ、女性向けのコンテンツなのかというと、ソーシャルビデオではコミュニティを構築できるかどうかが大事だからです。僕らのソーシャルビデオプラットフォーム構想を大きく広げていくためにも男性を中心としたコミュニティから攻めるのではなく、難しいと思われる女性を中心としたコミュニティから攻めようと決めました。それに、ファッションやライフスタイルはカルチャーと密接に絡んできた歴史がある。僕らには新しい時代のカルチャーと、スターを創造したいという思いがあるのです」

「Live Shop!」では配信中に視聴者がコメントしたり、出演者とコミュニケーションを取ったりできるインタラクティブなコミュニケーションを実現している。個人配信ではできないような構成・企画で、クオリティの高いプログラムを届けているのだ。

「自撮りや、自宅での配信ならではの良さもありますが、私たちはコンテンツを通じたハイクオリティなユーザー体験をしてもらうことに重きをおいています。ライブ配信を通じて出演者に共感したり、動画を見続けてもらうための仕掛けを施したりすることで生まれる顧客エンゲージメントがあることがわかってきました。また、出演される方も、簡易なセットで撮影するより、ハイエンドなコンテンツを用意している方がやはり喜ばれます」

1つの成功体験が生まれるとアパレルブランドや化粧品メーカーからの問い合わせもやってくる。ソーシャルメディアは自発的に「コンテンツを楽しみたい」と思って視聴するユーザーが大半を占めているため、企業側も一緒に何か仕掛けたいという思いが生まれるのだという。しかし、「Candeeが描くビジョンは各企業とのコラボレーションだけではない」と鍛治氏は言う。

「例えば、『Live Shop!』出演者で、『彼女が番組内で着装している商品は注目を集め、バズを生む』という結果が出たとします。そうなればCandee自らが彼女とオリジナルの限定アイテムを作るというのも選択肢の一つとなってきます。ユーザーのニーズを捉える商品を展開することが『その場限りの、個数も限定されたオリジナルの商品をその場で買えた』というユーザーの良質な体験になります。また、映像制作だけでなくタレントマネジメント事業の強みを生かした出演者の成功体験として次のステージや、彼ら、彼女らのやりたいこともフォローできる体制があり、その一つとしてプラベートブランドを立ち上げる構想もあるのですが、最近は社内で服の生地の話をしたりしていて、なにをやっているのかわからなくなりますね」と笑う。

登りたい山は決まっている。しかし、登り方は決まっていない

経済産業省が2017年4月に2016年の日本のEC市場に関する調査を発表している。アパレル産業のネットと実店舗の全商取引は13兆9,954億円。そのうちECサイトは1兆5,297億円。実はECは10.93%と少ない。新井氏はこれを「ECが伸びないのは欲しいものを買う以外の『体験』がないからではないか」と指摘する。既存のECにはなかった消費体験を提供していくことで、ECの可能性を引き出すことができるのではないかと考えている。

「僕たちはタレントマネジメント機能を持つ企業として、次世代を担うモデルやインフルエンサーを育てなければいけません。彼ら、彼女らを育てる場として良いコンテンツを作る。そのコンテンツを作った先のビジネススキームの一つがアパレルですが、売れたらOKではありません。メディアを成長させ、その結果として広告がビジネスになる。アパレルブランドが立ち上がり、売り上げが生まれ、新たなファンが増える。その新しいファンと一緒に、次のインフルエンサーを見つけ、育てていくという、ファンと一体化したビジネスメイキングを意識しています。人気が出たインフルエンサーに依存し、エンゲージメントが下がり続けるリスクを抱えたマーケティングを展開するのではなく、ファンも増え続け、インフルエンサーも喜べるような仕組みを開発したいですね」

この分野においては、まだ明確な成功パターンというものが存在しない。だからこそ、既存の手法や常識に縛られないことが重要だと新井氏は考えている。「制作のプロデューサーやディレクターの横にエンジニアが座っている。多分、こんな環境は他社にはないと思います」と、鍛治氏も笑う。制作だけ、エンジニアリングだけではなく、自身の仕事内容や役割を拡張し続けることが求められる環境だが、それを楽しめる人間であればどこまでもキャリアを広げていけるチャンスがあるという。

「Candeeのメンバーはみんな、ゴールイメージが共有できています。登りたい山はみんな、決まっている。でも、その山の登り方は個人にゆだねている。さまざまなタイプの方とお会いしていますが、自らすぐに歩き出せる人じゃないとちょっと厳しいかもしれません。登り方が間違っていた、というのは気にしません。僕らがやっているのは、今までなかったことでサバイブしていくことなので」と新井氏。

Candeeの強さは、そのビジョンに共感して集まってきた経営陣の経歴にもあらわれている。新井氏いわく「一人ひとりが自分の城を持って活躍できるレベル。今どき珍しいくらいに大人びたスタートアップです」とのこと。映像制作や芸能ビジネスの最先端に携わってきた、いわゆる業界の重鎮らが、自ら変革を起こそうと立ち上がり、業界をゼロから作り変えていこうとしている姿勢も興味深い点の一つだ。

現在の通信規格「4G」にかわり、2020年には「5G」が商用化され、従来のテレビ以上にインターネットを通じた映像配信の方がより鮮明に、かつインタラクティブに楽しめる時代がやってくることが確実視されている今、ゲーム業界に続く勝ち筋を見いだせるかがCandeeの挑戦となる。新しい時代を見据えて登ろうとする山はとても険しいようだが、登りつめた先にある、眼下に広がる光景は壮大なことだろう。

powered by BIZREAC

現在募集中の職種

本記事でご紹介した企業では次の職種を募集しております。
詳細は会員制転職サイト「ビズリーチ」をご確認ください。

LATEST POST