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ビジネスモデルの未来

月3万円で過ごせる社会に。家入一真が熱望する未来のカタチ

株式会社CAMPFIRE 家入一真

「ネット界の風雲児」とも呼ばれる家入一真氏。その経歴はとにかく派手だ。

株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ株式会社)を福岡で起業し、29歳という史上最年少でJASDAQ上場。その後は同社代表取締役を退任し、シリアルアントレプレナー(連続起業家)として、2016年10月に15億円の資金調達を実施したBASE株式会社や、モノづくり集団「Liverty」など、さまざまな業種のベンチャー企業に参画。さらに「リバ邸」と呼ばれる若者たちの駆け込み寺(シェアハウス)を全国につくるといった活動も行っている。

これ以外にも東京都知事選への出馬と落選、クラウドファンディング型学費支援プラットホーム「studygift(スタディギフト)」の立ち上げとネット炎上など、家入氏に関する話題にはとにかく事欠かない。そしてその彼が2016年2月、株式会社CAMPFIREの代表取締役に再度就任した。同社は2011年1月に株式会社ハイパーインターネッツとして設立し、家入氏は代表取締役を務めていた。

「さまざまな会社を立ち上げてきましたが、今はCAMPFIREに集中しています」と語る家入氏に、数々の体験を通じた思いと、これから目指したい世界観について語ってもらった。

「資金集めの民主化」をCAMPFIREで実現したい

――これまでにも多くの会社をつくり、講演活動なども多くしていらっしゃる家入さんにとって、今、主軸となっている役割は何になるのでしょうか。

今は完全にCAMPFIREに100%力を注いでいます。BASEの創業に関わったり、2015年には株式会社キメラという会社を立ち上げたりしましたが、今はCAMPFIRE一本です。

――数ある会社、サービスの中からCAMPFIREを選んだということは、やはりそこに一番の可能性を感じているからですか。

そうです。これまで東京都知事選に出てみたり、駆け込み寺のような非営利のシェアハウスを全国につくろうとしてみたりしましたが、それらに全部共通するのは結局お金、経済の仕組みだと思っていて。

僕自身、福岡で起業する前は芸大に行きたかったけれども、お金がなくて断念せざるをえなかった過去がありますし、なぜか今の世の中では、アートや社会貢献は「もうからないモノ」にセグメントされていて、ビジネスや政治とは切り分けられた存在になっている。それを変えられるのがCAMPFIREだと思ってます。

個展を開きたいけどお金がないというアーティストとか、ちょっとスケールの大きな映画を撮りたいけれどもお金がない若手監督とか、そういう人たちに期待を込めたお金が集まってきて、新しい価値や可能性が広がっていく。若手の政治家にクラウドファンディングを通じて資金を提供することが、もっと一般的になったっていい。「声をあげたいけれども、先立つものがないから……」なんて思わなくても済む、そんな世界がつくりたいんです。都知事選に出馬して、いろいろな人たちの声を聞くうちに、そういう思いがまた強くなった部分もあります。

――ここ数年でクラウドファンディングという言葉が広く認知されるようになってきましたが、実際に変化を感じる瞬間はありますか。

資金集めのための選択肢の1つとして多少カジュアルに選ばれるようになってきたとは思いますが、一般に定着しているとはまだまだ、全然。大炎上してしまいましたが、僕自身はまだ「studygift」を諦めきれていないのが正直なところです。僕も新聞奨学生として新聞配達をしながら学校に通っていたのですけど、学びたいこと、やりたいことがあるのにお金がネックになって、というケースはこれからますます増えていくはず。そういう子たちに100万円をポンと出すことは無理でも、1人1万円で、それを100人分集めることならできるかもしれない。そこで一生懸命勉強して、いい成績を残した子が、出資した誰かの会社でバリバリ働くとか、そういう世界がつくりたい。

クラウドファンディングを活用しても目標金額に達しなかったらどうするとか、もし炎上したらどうしようとか、何かしらのリスクは必ずついて回るけれども、それを怖がっていたら何もできないし、変わらない。企業や個人を問わず、もっとカジュアルにお金が集まって、動くような仕組みというか、「資金集めの民主化」みたいなことが今の日本でできたらいいなと思っています。

――「資金集めの民主化」というのは興味深い表現ですね。

昔の日本だと、無尽講(むじんこう)や模合(もあい)のように、まだまだそういう側面はあったと思うんですよね。「この前の台風で山田さん家の屋根が吹き飛んじゃったから、みんなでお金を出し合おう」みたいな……。過疎化とか核家族化とかいろいろあって社会構造が激変してしまったからこそ、現代の都市だとそういう関係づくりは難しくなってますが、これだけインターネットが普及したのなら、また新しい社会のカタチができるようになるはず。

今まさにはやりだしているシェアリングエコノミーだって、本質的には「支え合い」で成り立っているものです。使っていないクルマやスペースを貸し出すのも、食べきれないお米を隣の家に持っていくのと変わらない。金融分野でも、そういう発想があったっていいじゃないか!と思うわけです。

――今までのお話を聞いていると、やはり金融領域にどんどん着手していくようなイメージでしょうか。2015年にはキメラを設立し、人材領域にも踏み込んでいくように見えましたが、そちらはどうなのでしょう。

キメラという会社は、人生において大半の時間を費やしている「働く」ということを21世紀型にアップデートして、ライフスタイル、つまり人生を変えていくことを目指した会社で、アプローチこそ違えど、最終的なゴールはCAMPFIREと変わらないと捉えています。

「こうすれば効率的な働き方が実現できる」なんて書籍はいくらでも出ていますし、僕も何度も講演してきたわけですが、結局のところ、簡単に人の働き方は変えられない。それならその思想をツールに載せて、企業にじゃんじゃんインストールすればいいやと考えたわけですが……ぶっちゃけ、自分にはCAMPFIREのほうが向いているなあ、という感じです(笑)。

金融の仕組みをハックできれば、世界は楽しくなる

――今CAMPFIRE上で実現している仕組み以外にも、例えばこんなことができたら面白そうだ、と考えていらっしゃることはありますか。

現状、CAMPFIREを含めて、多くのクラウドファンディングは「購入型」といわれるものです。出資者はお金を払う代わりに、プロジェクトから何らかのリターンを得る。その多くは何かしらの体験だったり、クーポンだったり、新商品を優先的に受け取れる権利だったりするわけですが、ここに投資の概念を持ち込めたら面白そうですよね。個人が個人にお金を貸し出す。金利や条件は出資側がある程度決められて、みたいな。

ここは法律の規制などが厳しい領域なので、参入ハードルはかなり高いです。ただ、だからこそ、その仕組みをハッキングすることができれば、グッと世界は変わると思います。そもそも現行の法律もいろいろと矛盾をはらんでいますし。

お金に関するやり取りはデリケートなものですが、「ちょっと過保護じゃないかな」というのが、正直な印象です。金融領域の状況はどんどん変わってきているのに、規制でガチガチに縛られているから、日本という国ではどうしても新しいことがやりづらい。

――先日、ビットコインに代表される仮想通貨と日本円を交換する際に消費税を課されないように、つまり商品券などと同様に資産と評価されるようになりました。他にも、日本独自の仮想通貨をつくろうとしているスタートアップも登場してきています。こういう意欲的な企業の足かせにもなりえる話ですね。

ブロックチェーン技術を含め、どんどん金融を取り巻く環境は面白くなり、変化し続けているので、テクノロジーの発展にあわせて、それを運用する仕組みもハックしなくてはいけないな、と思うわけです。日本はテクノロジーがどれだけ進化しても、行政面で足止めを食らうことがまだまだ多い。優れた技術も一般化されないと、みんなは恩恵を受けられないし、無意味になってしまう。だから、そこを変えてみたい。

――「世の中の仕組みを変えたい」といった今のお話を聞いていると、都知事選に出馬したときの経験が生かされているような印象を受けます。

ちょっと恥ずかしい話をしますけれども、社会を良くするということを、僕たちの世代が真剣に考えていかないとまずいと考えています。僕たちが老後を過ごすことになるこの国をどういうふうにしたいのか、そこを考えていかないと、生きるのもしんどくなるというか。

別に取り組み方はどうでもいいと思うんですよね。世の中を少しでも良くするために政治の道を志しても、ビジネスで変えようとしても、NPOでやっていこうとしても、何でもいい。僕個人の話でいうと、もともと夢や希望、野心みたいなものが希薄なので「自分はこうなりたい」というのはあまりないですが、ただこうすべきだよな、ということは考えながら、いろいろやっています。やっているつもり、です(笑)。

お金を稼がなくても過ごせる社会をつくらないと

そうだ。他にもやりたいこと、ありました。生活費が月3万円で収まるシェアハウスをつくりたいんですよ。僕が始めた「リバ邸」も目指しているコンセプトは一緒です。

――3万円、ですか?

そう、3万円で衣食住全部まかなえるような家、シェアハウスですね。築何十年っていうボロボロの家に住まわされるわけでもなく、おいしい食事もとれて、それなりにおしゃれもできるような。

――もし実現できたら素晴らしいと思いますが……実現できるものでしょうか。

人間の暮らしを良くするには2つのアプローチがあって、1つはお金を稼ぐこと。そしてもう1つは生活費を下げることだと考えています。クラウドソーシングが普及してきましたけれども、月30万円稼げる人はごく一部。でも、それは異常値で、注目すべきは月3万円とか5万円稼げる人は大きく増えたこと。そして、その金額だけで生きていける人が生まれたら、本当の意味でワークスタイルやキャリアに多様性が生まれてくるはずなんです。お金がかかる趣味もないし、娯楽にも興味ない人は週に1日だけ働いて、十分納得できるレベルの生活を送れる、といった具合です。

大手企業も副業を認めるような流れになりつつありますし、週休3日制の導入を検討するような動きも出てきました。でも、必ずしも全ての人たちがその恩恵にあずかれるわけじゃない。ベーシックインカムじゃないですが、新しいセーフティーネットをつくっていかないと相当厳しい。でも、それを政府だけに求めるのもお門違いです。ただでさえ国の税収は減り続けていくので、新たなセーフティーネットの構築を、民間企業やNPOが行政と一体となって進めていかないと。

――本当にできたらものすごくすてきなことだと思いますが、その理想を企業としてやり切るには多くの仲間が必要になりそうですね。

CAMPFIREの手数料を20%から5%に一気に引き下げたりもしましたし、正直ボロもうけしている会社ではないので、わざわざウチに来てくれる人は「本当にウチで良いのかな?」って思ったりしますよ(笑)。

それでも、CAMPFIREに来てくれる仲間は確かにいます。実際に今働いてくれてるエンジニアも「何かやりたい人に対してお金を集めて実現させていけるサービスに共感したから」と言ってくれたりしますし。でも、僕自身が「CAMPFIREというサービスは社会に影響を与えているんだ!」と声高に言うのが苦手なんですよね。全社員でやるミーティングのあいさつですら頭真っ白になって何も言えなくなっちゃう。あれこれ考えている間に時間が過ぎて、タイムキーパーに鐘鳴らされるし……。

――何だかものすごく親近感を覚える話です(笑)。

単なる「ネット弁慶」なだけですよ、僕は(笑)。「みんな俺についてこい!」なんてリーダーシップは絶対に発揮できないタイプ。飲み会でも3人以上になると黙っちゃう。でも、1対1でなら何を考えているかを話せる。そういう意味では、僕は「概念になりたい」とずっと思ってます。

オフィスにいると誰かにすぐ話しかけられるので、いつもその辺のカフェに逃げてるんですよ。外でPCを開いて、Slackとか使って発言を追いかけたり、ちゃちゃを入れたりする。そうすると、オフィスにはいないけれど、インターネット上にはいるよね、みたいな、攻殻機動隊っぽくなるじゃないですか。あとは「アイツいつもツイートしてるな」とか(笑)。そういうことを僕はやり続けていたいんですが、それだと組織はなかなか大きくならないので、もっと出しゃばらないと駄目かもしれませんね。もっと頑張ります。エンジニアを始め、いろいろなポジションで募集してますので、ぜひ応募してください。

――本日はありがとうございました。

■プロフィール
株式会社CAMPFIRE
https://camp-fire.jp/
代表取締役 家入一真

1978年、福岡県出身。学生時代、いじめがきっかけでひきこもりに。就職後も対人関係に悩み「誰も会わずに仕事がしたい」と起業を決意。自宅でレンタルサーバーサービス「ロリポップ!」を提供開始。株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ)を創業後、2008年、当時最年少でジャスダック市場へ上場。退任後は「CAMPFIRE」「BASE」などのウェブサービスを立ち上げ、取締役に就任。渋谷「ON THE CORNER」などのカフェ運営も。悩める若者の立場に立ち、現代の駆け込み寺「リバ邸」などを精力的に展開。2014年東京都知事選挙に出馬し、主要候補に次ぎ88,936票を得る。著書に『さよならインターネット』(中公新書ラクレ)、『新装版こんな僕でも社長になれた』(イースト・プレス)、『お金が教えてくれること』(大和書房)、『もっと自由に働きたい』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

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