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ビジネスモデルの未来

物は「所有」から「使用」へ。価値観の変化が後押ししたリユース市場開拓と、循環型社会への道

株式会社BuySell Technologies

「私たちは普段あまり意識していませんが、目の前にある物、身の回りにある物……、例えばスマートフォンや筆記用具、デスク、椅子、蛍光灯など、そのすべてがセカンダリーマーケット、つまり二次流通市場の商品となりえるものなんです」

こう語るのはネット型リユース事業を行い、出張買取サービス「スピード買取.jp」を運営する株式会社BuySell Technologies(以下、バイセル)の岩田匡平代表取締役社長兼CEO。同社は高価古物を専門とし、取り扱い商材の保有率が高い高年齢層向けにマーケティングを実施することで、既存の店頭買い取り業態とは一線を画した出張買い取りサービスで一気にその頭角を現した。

急成長を遂げているリユース系ビジネスだが、書籍や衣料品をはじめとした従来のリユース品の概念を覆す視点は、まさにセカンダリーマーケットの可能性を示しているといえるだろう。物品に対する価値観が「所有」から「使用」「シェア」へと変化しつつある現在、文化観・倫理観の側面からもセカンダリーマーケットを受け入れる土壌は確実に広がり始めている。

戦略的マーケティングで事業が加速度的に成長

古くは質店への質入れ、ひと昔前ならば買い取り店舗へ物を持ち込むという行為は、あまり他人に見られたくない、知られたくないものだったかもしれない。それが今や、開かれたインターネット上で個人間でのやり取りが行われるまでに変化した。

バイセルはインターネット上に窓口を持つ、無店舗のネット型リユース事業で、完全反響営業のスタイルをとる。完全反響営業の鍵はオンライン、オフライン両方の広告を駆使したクロスメディア戦略。そうした戦略的なマーケティングで事業を加速度的に成長させた。具体的には、主力商材である着物を保有する40代以上の女性をはじめ、高価古物を所有する高年齢層向けに、テレビCMなどのオフライン広告、リスティングやアフィリエイトなどのオンライン広告、SEOなどといった多角的なマーケティングを展開。その結果、2017年度には月間20,000件、年間200,000件を超える査定依頼を受けるまでになった。

主力商材である着物のポイントとして、「大きな市場であること」と「価格のボラティリティがあること」があげられる。
着物の小売市場は年間約2,800億円と減少傾向にあるが、タンスに眠る中古着物の総量は20兆円にもなり、大きな市場が広がっている。また、新品の着物を購入する際は数十万~数百万という価格であるにもかかわらず、セカンダリーマーケットに流通すると時には数万円にまで下がることも珍しくないという。数分の一、あるいは数十分の一まで価格が下落するこの現象を、「価格のボラティリティ」と表現する。ボラティリティとは、証券用語として使われる場合、価格の変動性を指すものだ。これまで着物には参考となる相場がなく、価格のボラティリティが大きかった。

「ボラティリティがあるということは市場が安定していないということ。お客様から買い取らせていただいた品を、手に取りやすい価格設定で二次流通市場に流通させると、それまで数十万~数百万という価格が一般的だった新品の市場の価格が、二次流通市場の価格に引っ張られていく。つまり、二次流通から着物という商材の価格レンジを決定していける可能性がある。ここに、着物の二次流通の面白さがあるのではと考えています」

「人」を軸としたビジネスが強みとなる理由

集客はクロスメディア戦略によるマーケティングで行うものの、ビジネスの軸となるのは実際の出張訪問買い取りに出向く査定員、つまり「人」であると岩田氏は語る。

「マーケティング的な視点で言うと、認知と成約はまったくの別物です。まずターゲットである高年齢層に響きやすいオフラインメディアで認知を図りました。それをきっかけにコールセンターへ電話をいただいて『これはいくらぐらいになる? 他の物も見てもらえる?』という話につながります。そこからが『人』を軸としているビジネスの強みです」

査定員がお客様を訪問できなければ、認知はされても成約には結びつかない。成約へのラストワンマイルを埋めるのは、あくまでも「人」。正確に真贋(しんがん)を見極めるスキルを持ち、コミュニケーションで信頼を得る。「もちろん、人を介さず人工知能(AI)による画像認識やチャットボットの導入などで効率化が可能な領域はあります。ただ、効率化が不可能なポイントも必ずあるので、リアルとテクノロジーを融合させ、どちらかに偏らせることはしない」と語る。

また、今後のバイセルについては、多くのプロジェクトが可能性を追求していくビジネスだと捉えている。求める人材としては「ありとあらゆる分野の傑出した人、僕よりも優秀な人」。さまざまなバックグラウンドを持つ人同士の「化学反応」や、一人一人が多様な視点を持つことを会社の強みにしたい考えだ。

循環型社会の実現を視野に入れつつ、日本国内のリユース事業に注力

「セカンダリーマーケットに対する心理的ハードルが大幅に下がっているとも感じています。物を『所有』することではなく、『使用』することに価値を見いだす考え方の浸透、使用しなくなった物はリユースに回すという行為の普及によって、循環型社会、サステナブルな世界観を作っていければと考えています」

ただ、事業のグローバル展開については冷静な姿勢だ。将来的に海外に進出する可能性もゼロではないが、先にも挙げた通りまだ日本のリユース系ビジネスには広大なブルーオーシャンが広がっている。「今すぐに海外に出ていく理由はありません。今は日本で取り組むべきことがまだまだある状態です」岩田氏の姿勢はブレない。

「私たちの目の前にある物、身の回りにある物すべてが、ほかの誰かの所有物となるセカンダリーマーケットの商材となりえる。市場が非常に大きく、価格にボラティリティがある。事業を進めるセオリーはここにあると思います。バイセルはそこにひたすらアプローチしていくだけです」

とにかく市場が大きいこと、実需としてのトレンドがあることを軸として、バイセルは自らが強みとしている高年齢層、高価格帯の商材のさらなる開拓を目指している。「スイートスポット」と呼ぶ、リユースのマーケットにおける狙い目はまだありそうだ。重機や農機具、法人を対象にしたオフィス製品などにも可能性を感じているという。こうした視点は、リユース事業の拡大を大いに予感させる。この仕事を始めてから、不思議な物に目が向くようになったという。「大学の研究室にあるような特定の目的にしか使用できない専門機材を、例えば他国で二次流通できないだろうかとか。市場は小さそうだけれど、道路のガードレールや信号なども気になってしまうんですよね」。身の回りの物すべてがセカンダリーマーケットに流れうるという考え方は、無限の可能性を示唆しているといえるだろう。

重要視しているのは、バイセルの手がける事業が社会貢献的なビジネスであるかどうかだ。売り上げや利益は「ハッピーの総量」。伸びた分だけ世の中に貢献し、付加価値を生んだと考える。働くことそのものや自分が存在する価値など、根本的な部分を見いだせたときに事業家としてのやりがいを感じられるという。

人と社会のサステナブルな開発・発展に貢献するというビジョンを持つバイセル。あらゆる資源と資本を循環させる貢献的事業の創出と、世界的なサステナビリティの推進に期待したい。

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