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ビジネスモデルの未来

契約のテクノロジー化で、日本のビジネスのあり方を変える

弁護士ドットコム株式会社

欧米諸国を追随する日本発LegalTech企業

今、金融や医療、法務といった保守的で規制の多かった分野にテクノロジーによる変革が起き始めている。その先駆けとも呼べるのが金融領域における「FinTech」だ。そしてこのFinTechと同様に、医療、そして法務の世界でも、今後大きなムーブメントが起きることが、確実視されている。

訴訟大国のアメリカでは早くから弁護士関連のWebサービスが充実し、弁護士による起業もトレンドになっており「LegalTech」と呼ばれる市場が形成されつつある。その可能性をいち早く世界に知らしめたのは、2015年にイギリスで誕生し、翌年にはアメリカにも持ち込まれた無料AI ボット「DoNotPay」だろう。19歳の大学生が作り上げたこのサービスは、不当な駐車違反を受けたことを相談すると、AI弁護士ボットからチャット形式でアドバイスを受けられるというもの。2016年3月時点で16万件もの違反切符を取り消したというニュースは、世界中に驚きを持って伝えられた。

そうしたLegalTech先進国に追随し、さらには独自の進化を遂げようとしている日本企業もある。そのようなLegalTechスタートアップに参入する弁護士経験者なども少しずつだが、着実に増えつつあるという。国内LegalTechのなかでもトップランナー的存在が、2014年に東証マザーズに上場を果たした弁護士ドットコム株式会社だ。

Web上で契約を完結させるクラウドサイン

弁護士ドットコムは、2005年に国内初の法律相談ポータルサイトとして始まった。創業者で弁護士の元榮太一郎代表取締役会長は、大学時代に交通事故を起こしたとき、一般の人が弁護士を探す手段がないことを痛感した。「専門家の知恵を誰もが気軽に利用できる社会にしたい」というのが創業の理由だ。

2017年6月現在、弁護士ドットコムは登録弁護士13,000人超、月間サイト訪問者900万人超という日本最大級の法律相談ポータルサイトになっている。さらに同社は今、メディア運営企業から、最先端技術で社会の仕組みを変革するテクノロジー企業へと変貌を遂げつつある。その象徴といえるのが、2015年にリリースした日本初のWeb完結型契約サービス「クラウドサイン」だ。

「これまで紙の製本と印鑑、そして郵送、返送が必要となっていた契約書の締結から保管・管理までをクラウド上で行えるサービスです。従来数日間かかっていた契約締結がものの数分で終了し、即日取引を始めることも可能になります」と、同社の弁護士でもある橘大地クラウドサイン事業部長は語る。

企業間取引がこれだけ迅速化すれば、社会的、経済的インパクトは計り知れないものがある。業務効率が飛躍的に高まることはもちろん、事務作業や郵送、収入印紙などにかかるコストも大きく削減できる。リリース後1年半で、すでに野村證券株式会社や株式会社クレディセゾン、株式会社インテリジェンスなどの大手企業を含めた8,000社が導入しているという点からも事業会社からの大きな期待が見て取れる。そして、クラウドサインを導入する企業の傾向に「ユニークな点が見られる」と橘氏は続ける。

「通常、この手の新しいITサービスはベンチャー企業から先に導入が進み、その後じわじわと大手企業へ浸透していくことが一般的です。しかしクラウドサインの場合、大手企業から先に『導入したい』という声があがったのです。これは大手企業のほうが業務における契約数が多く、クラウドサインを導入するメリットが大きかったためでしょう。また弊社が弁護士によって創業された会社であり、長年、弁護士のポータルサイトを運営してきたことも、このサービスが大手企業から信頼される大きな要因となっていると思われます」

2017年8月からはクラウドサインでの契約と同時に決済もできる日本初のサービスを開始する予定だ。今後は契約だけではなく、それに基づいての支払いや、業務を行う執行の部分への対応も進めていくという。

契約書作成や交渉の段階では、AIを活用したサービスも構想している。すでにIBM社のワトソンを活用し、企業の法務相談の回答や契約内容の審査を自動で行ったり、契約書をチェックして法的リスクを判定するサービスも開発中だ。

「法務や契約の分野はアナログの部分が多いだけに、イノベーションの余地も大きなものがあります。私どもは今後、さまざまな最先端技術を使って、企業の法務担当や弁護士が個人の経験とノウハウで行ってきたことを自動化していきたいと考えています」

借金の取り立ても自動化される時代へ

さらにユニークなのがブロックチェーン技術を活用した取り組みだ。ブロックチェーン上での取引ルールをプログラムで定義できるスマートコントラクト技術を使い、契約に基づく所有権の移転をITで管理するという試みがあるという。具体的には、スマートフォンを鍵として代用するスマートロックなどが登場しているが、この鍵の「権利」を本来の持ち主から貸主に自動的に譲渡する、といった技術だ。

例えば現在、知人にお金を貸したものの返済期日までに戻ってこなかったとする。ここで貸したお金を回収しようとすると、長期間の交渉や多額の弁護士費用が必要となり、回収できる額よりも弁護士への依頼費用のほうが多くかかり赤字になってしまうこともあるため、結果的に泣き寝入りをしているケースも少なくない。だが、弁護士ドットコムが構想しているこのサービスが実現すれば、貸したお金を返してもらえないとき、相手の銀行口座の残高をAPI連携で取り込み、預金が残っているのであればそこから返還され、預金が足りなければ担保となっている不動産の所有権や車のスマートロックの所有権がそのまま貸主に移転されたりするようになる。

将来的に不動産や自動車などはIoT化が進み、鍵などもデジタルに変わっていくことが確実視されているため、こうしたテクノロジーの進化は踏み倒しを抑制する効果があると期待される。同社の市橋立執行役員CTOは次のように語る。

「弁護士業界には『2割司法』という言葉があります。これはトラブルに巻き込まれた人のうち、2割しか弁護士に相談しておらず、8割の人は泣き寝入りをするなど、法的に適切な対応ができず損をしているということを言い表しています。われわれは、テクノロジーの力でそのような人たちの手助けをしたいのです。AIを使ったチャットボットによって、誰でも気軽に法律相談ができ、ユーザーがかかえる問題を解決するための法的支援をするようなサービスの開発も進めています」

世のなかにないサービスをゼロから生み出す

最先端テクノロジーによって日本の法慣習やビジネスのあり方を大きく変えようとしている弁護士ドットコム。こうしたサービスの多くは内製で作られ、会社は技術集団としての側面をより色濃くしているという。現在、社内のエンジニアは約20名だが、5年後までには100名に増やしたいというのが市橋氏の考えだ。

「AIやブロックチェーンなど、最先端の技術を活用しながら、まだ世のなかにないプロダクトやサービスをゼロから生み出し、世のなかを変えていきます。このような体験ができる弊社は、エンジニアにとってとてもやりがいのある環境だと思います」

同社では近年、人気の高まっているReactやwebpackも早い段階で採用するなど、新しい技術も積極的に取り入れている。またクラウドサインは、2009年にGoogleが発表したGo言語によって開発されているという。

「クラウドサインでは、セキュリティもパフォーマンスも非常にレベルの高いものが求められます。もともと弁護士ドットコムではPHPを使用していましたが、サービスが大規模になってくると不満が出てきました。そこでより堅固な言語で開発しようといくつかの言語を試し、検討を重ねた結果、Go言語を採用することにしたのです」

LegalTechの市場は現在のアメリカだけで5,000億円といわれている。アメリカでは現在も続々と新しいサービスが登場し、マーケットは拡大し続けている。いっぽう日本のビジネス社会は、いまだ紙の契約書と印鑑が多用されている。しかし、そんな日本だからこそ、テクノロジーで社会を変えたいと思う人にとっては、弁護士ドットコムの取り組みは重要だと言えるのかもしれない。

「高い技術力をもっているだけでは、宝の持ち腐れになってしまいます。大切なのは、その高い技術力をどこで生かすのか、ということ。ユーザーの立場になってサービス開発できる環境、そして何より社会的に必要とされているサービスに携わることで得られる体験は非常に大きいです。社会的弱者や知識のない人が損をする世の中を変えたい。困っているユーザーを助けたい。そんな志向性を持った方に来ていただきたいですね」

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