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4年間で観客動員数165%の大幅増を実現した、横浜DeNAベイスターズの挑戦

株式会社横浜DeNAベイスターズ

スピーディーにPDCAを回し、多様化するニーズに対応

横浜DeNAベイスターズの誕生から4年。2015年シーズンの終了後に発表された興行データによると、年間観客動員数は181万3,800人を達成。これはDeNA参入前の2011年と比べると、実に165%増という驚異的な数字だ。さらに、1試合あたりの平均動員数や大入り回数、チケット完売となった試合数、座席の稼働率など、横浜DeNAベイスターズが「人を呼べる球団」であることを表す数字は軒並み好調。特に興味深いのは、これらの数字が、チームの戦績とは関係なく伸びている点だ。

「チームが勝ったら客足が伸びて売り上げも上がり、負けると下がる。そんな状況では球団経営が成り立ちません。勝負事ですから、勝つこともあれば負けることもある。だからこそ、たとえチームが負けても、来てよかった、楽しかったと思っていただけるような取り組みに力を入れています」と語るのは、広報・PR部の河村康博氏だ。

チームの勝ち負けに依存しない集客力を獲得できたのは、地道で確実なマーケティングを球団運営において実施し、ターゲットを定め、それに合った戦略をスピーディーに繰り返してきた成果だ。

とはいえ、実はDeNA参入当時、観客の性別や年齢、来場回数や来場理由など、マーケティングに必要な「どんな人が来ているのか」に関するデータはほとんど残っていなかったという。そのため、最初の1年間はデータの収集・分析が最優先課題となった。そうして導き出されたのは「30代を中心とした、20代後半~40代の働く男性層」が多く足を運んでいるという事実。そこで、彼らを「アクティブサラリーマン」と名付けてターゲットと定め、さまざまな取り組みを実施した。

「アクティブサラリーマン」が生み出した、観客の多様性

「『アクティブサラリーマン』とは、新入社員に比べて仕事やお金に少し余裕があり、家族や恋人、同僚との過ごし方に敏感な人たちです。世の中の動きに関する情報収集力に長け、やりたいことを憧れだけで終わらせず、やり切る行動力を持っている人でもあります。彼らは野球観戦の際に、同僚や、子供を含む家族、野球にあまり興味のない恋人といった周りの人たちを“誘って”訪れていることもわかったため、彼らが周りの人を誘いやすいイベントやサービスを提供してきました」

例えば、同僚とお酒を飲みながら観戦を楽しめる、ビールサーバーがついた「スカイバーカウンター」、小さな子供がいる家族向けの、靴を脱いで座れる「リビングBOXシート」はアクティブサラリーマン戦略の代表格だ。また、参入後初のシーズンから実施してきたイベント「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」なども毎年趣向を変えている。そしてこうしたチケットの売れ行きはいずれも好調に推移しているという。

また、「アクティブサラリーマン」に誘われてきたファミリー層や女性層といった新しい観客も増えた。当然、その楽しみ方やニーズも多様化しているという。

「野球というスポーツは試合時間が長いこともあり、数時間ずっと座って試合の行方に注目するだけではない、多様な楽しみ方を提供できなければなりません。恋人とのデートで、テーマパークではなく野球観戦を選ぶ。同僚とビールを飲むのに、居酒屋ではなく球場へ足を運ぶ。試合における競合は他のチームであっても、野球観戦という視点でとらえると、ライバルは遊園地や映画館など、他のエンターテインメント全般といえます」

球団と球場の経営一体化で、さらに求められるスピード感

場内演出、流す音楽へのこだわり、また魅力的なグッズの製作や、ライフスタイルショップ「+B(プラス・ビー)」の誕生など、これまでに打ってきた施策は膨大だ。「多様化するニーズに対応してきた結果が、動員数増や満足度向上に結びついている感覚がある」という河村氏。2014年からは「I☆(LOVE)YOKOHAMA」というキャッチフレーズのもとに、より地域に根ざした球団としての取り組みも始め、目に見える部分での改革も進んでいる。

地域と一体となったそうした取り組みも評価された結果、2016年1月には横浜スタジアムのTOB(株式公開買い付け)が成立。球団と球場との一体化経営が実現する運びとなった。さまざまな戦略の根幹にある、「野球をきっかけに集まった人たちの間にコミュニケーションが生まれ、育まれる場所に」という「コミュニティボールパーク」化構想を、今後一層発展させていく弾みがついた形だ。

球団経営というと特殊な世界だと思われがちだが、球場に集う人々の間にコミュニケーションを生む仕掛け作りには、「野球経験や知識の有無、横浜との関わりなどはあまり関係ない」と河村氏は語る。「これまで野球に触れてこなかった人、逆にとても野球が好きな人。どちらの考えや感覚も大切だと考えています」。多様化するニーズには、多様なスタッフの力で対応していくというわけだ。

「横浜DeNAベイスターズは、戦略を立ててそれを実行し、フィードバックして次の機会に生かすサイクルのスピードには自信を持っています。今後も、『コミュニティボールパーク』化構想に基づくさまざまな改革を、スピード感をもって実施していきます」

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