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ビジネスモデルの未来

世界有数のスタートアップ大国・イスラエルに挑む日本人起業家

Aniwo Co., Ltd.

スタートアップと投資家・ユーザーを結ぶプラットフォーム

企業価値を評価する指標のひとつに、マーケットキャップ(株式時価総額)がある。2016年10月時点での日本企業のランキングを見ると、上位10社にはトヨタやNTT、JTや日本郵政といった老舗企業で占められており、唯一ソフトバンクが、比較的新しいビジネスモデルで成長した企業としてランクインしている。

一方で、グローバルでのマーケットキャップのランキングでは、エクソン・モービルやゼネラル・エレクトリック、バークシャー・ハサウェイといった歴史ある大企業を抑え、アップルやアルファベット(グーグル)、マイクロソフト、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムといった、近年になり新しいビジネスモデルで急成長した企業が5位までを独占している。

こうした状況において、「もっと多くの日本人が、スタートアップに興味を持って新しいチャレンジをしていかないと、グローバルでの日本企業のプレゼンスを高め、新しい価値を作っていくことができないのではないか?」と指摘するのが、Aniwo Co., Ltd.の代表取締役CEOである寺田彼日氏だ。

Aniwoの事業のコアとなるのは、スタートアップと投資家・ユーザーをつなぐ新しいイノベーションプラットフォーム「Million Times」の開発・運営。その仕組みは、スタートアップが「Million Times」にプレゼンテーションをアップロードし、それを投資家やユーザーが見にいくという方法でマッチングをしていくというものだ。

スタートアップはデータをアップロードするだけで、簡単に、しかも無料で、世界に向けて自らのプランやアイデアを公開できる。従来、投資家やユーザーに会うために必要だった膨大なタスクから解放されるのだ。一方で投資家やユーザーは、自分たちの求めるスタートアップ、志向する投資領域を容易に見つけられ、簡単にコンタクトを取ることができる。

毎年800~1,000社ものスタートアップが生まれる国・イスラエル

Aniwoは、設立者兼CEOである寺田氏が2014年10月に、「スタートアップ業務を効率化し、アクティブなプラットフォームの運営を通して、世界がイノベーションによってより良くなること」を目指し、イスラエルのテルアビブで設立した。それにしても、なぜイスラエルだったのか? 寺田氏は次のように話す。

「もともと小学生のころから、ぼんやりと将来は起業したいと考えていました。その上で、大学院在学中にトルコへ交換留学をしたり、就職後にデジタルマーケティング関連の仕事をしたりするなかで、『海外で起業するにはどこがいいのか?』を考えてきました。起業が盛んでエコシステムがあることで考えると、最初に挙げられるのがシリコンバレーです。しかしシリコンバレーには、すでに日本企業やスタートアップのコミュニティーがあり、そこに自分が乗り込んでいく必然性を感じませんでした。シリコンバレー以外ではどこがベストなのかを考えた上で、ルクセンブルクやトルコといった選択肢もあったのですが、さまざまな条件から絞り込んで、最終的にイスラエルを選んだのです」

寺田氏によれば、イスラエルでは毎年800~1,000社ものスタートアップが生まれており、対GDP比のスタートアップ投資額は米国を上回る世界第1位と、知られざるスタートアップ大国なのだという。

「国民の意識としても、スタートアップをするのが当たり前という感じですね。学生のころからグローバル企業のインターンシップで働いて、卒業後すぐに起業するということも普通にあります。また、イスラエルは国民皆兵制なのですが、これにより優秀なリーダーや先進的で実力のあるエンジニアが輩出されています。例えば、弊社のデザインを担当しているデザイナーは、イスラエル参謀本部諜報(ちょうほう)局で、アラブ諸国へのシギント(電子信号の傍受による諜報活動)を担当する8200部隊の出身者です。そのほかにも、エンジェル投資家(スタートアップを支援する個人投資家)が多く、起業家向けのイベントも数多く行われるなど、スタートアップ支援を国の政策として行っているのです」

そんなイスラエルで、今最も注目されているスタートアップの領域がサイバーセキュリティーだと寺田氏は語る。現在も多くの紛争を抱えるイスラエルは、情報機関の優秀さで世界屈指のレベルを誇る。ゆえに、現在の軍事情報戦で大きな意義を持つサイバーセキュリティーは、国家の安全の根幹に関わるものであり、そのコア技術を使って若い世代が次々とサイバーセキュリティー分野のスタートアップを立ち上げているのだという。

「加えて、世界のメガトレンドとして、自動運転やIoT、あるいは人工知能なども含めて、生活におけるあらゆる領域にインターネットが関わってくるなかで、情報を守るということは絶対に必要です。そこで、サイバーセキュリティーに関するイスラエルの先進的な技術やアイデアを生かしていこうという動きが盛んになっているのです」

京都大学と共同開発した人工知能エンジンで、さらなる成長を目指す

2015年にローンチした「Million Times」への登録数は現在約4,000社となり、スタートアップに関してはイスラエル全体のおよそ7割をカバー。このプラットフォームにより、イスラエルのスタートアップと日本をはじめとした世界の投資家やコラボレートを望む企業とのマッチングのきっかけを提供している。これまでに、スタートアップと投資家とのマッチングで出資を実現したのは10件以上、日本の大手企業とイスラエルのスタートアップとのコラボレートも着々と進んでいるという。

「今、課題として感じているのは、いまだに限られた情報しかない点。スタートアップと投資家や企業のマッチングにおいて、人が介する紹介でしか連携が生まれていないことです。しかし、そこに市場の動きや事実情報をもって意思決定ができるようになることで、これまで以上に選択肢が増え、かつ従来は見えてこなかったポテンシャルが見えてくるのではないのかと思うのです」

そこでAniwoはプラットフォーム上のデータベースを、機械学習などを通じて分析し、スコア化していく方針をとり、京都大学と新しい人工知能エンジンを共同で開発。そのコア技術を用いて、企業連携や投資を進められる新しいプラットフォームを作っていこうと考えているという。

加えて「Million Times」の特徴のひとつに、スタートアップや投資家、企業だけでなく、一般の人も無料登録でき、スタートアップのプレゼンを評価できる点がある。これについて寺田氏は、将来的にはこうした一般の人々も巻き込んだ、クラウドファンディングのような仕組みを作ることも検討中とのことだ。

イスラエルからビジネスのイノベーションを望む寺田氏は、グローバルのマーケットでいささかプレゼンスを低下させつつある日本の産業について、「大企業が変わることが必要」と強調する。これからの10年間で、グローバルでプレゼンスを発揮している日本の大企業が、イスラエルをはじめとした先進的なスタートアップとの連携を進め、それを形にしていかないと、国際的な競争に勝ち残っていくことは難しいのではないかと指摘する。

「さらにもうひとつ、若者がスタートアップに興味を持って、新しいチャレンジをしていく機会が増えていかないと、日本のビジネスに新しい価値観を作っていくことができません。挑戦していく若者を増やすためにも、国際的なインターンシップのような教育の体制や制度が必要でしょう」

イスラエルやアメリカでは、「一番優秀な人が起業する」という意識が、若者たちに強く根付いているという。Aniwoの今後の成長、そして寺田氏のさらなるチャレンジは、日本におけるマインド・イノベーションのロ-ルモデルのひとつだといえるだろう。

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