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バイオテクノロジーの未来

ライフサイエンスの現場にイノベーションを。画像解析技術との融合がもたらす未知の可能性

エルピクセル株式会社

膨れ上がる画像解析などのデータ処理を効率化

ビッグデータ時代の到来により、医療や製薬、農業などの分野でも画像解析などのデータ処理量が膨大になっている。データ処理は研究現場で対応しきれないほどの量となり、ライフサイエンスの知識とは別に、画像解析スキルが広く求められるようになっていった。だが、研究者に課すには、時間も経験値も足りない。

それを解決すべく、研究者の個々のニーズに合ったシステムを開発しているベンチャー企業がエルピクセル株式会社だ。ライフサイエンス領域に特化した画像解析ソフトウエアやシステムの研究開発を強みとする同社は、2014年3月に、東京大学内の研究室から誕生。当初から、コンサルテーションや企画、開発、運用、セキュリティーまでをワンストップで提供する独自のサービスを展開している。

現在力を入れているのは自社製品だ。「人工知能を活用した医療診断支援ソフトウエア」や「人工知能とクラウドを活用したライフサイエンス画像解析プラットフォーム」、「論文画像不正検出ソフトウエア」などがある。ノンストレスな画像解析を追求し、チャンスロスやミスを防ぐことに貢献。他の追随を許さないイノベーションを打ち立てた。

ライフサイエンスと画像解析の双方に精通する強みを発揮

「論文の9割に画像が用いられていますが、大学の授業で画像処理スキルを学んだ研究者は3%しかいません。弊社の強みは、社員が研究者であると同時に、先端技術を積極的に取り入れて研究の効率化を最大限サポートできる高精度スキルを持ち合わせていることです。ライフサイエンス分野は大きく分けて医療、製薬、農業などがありますが、医療については特にスピード感を持って取り組んでいます」。そう語るのは、島原佑基代表取締役だ。

医療現場では、CTやMRI、顕微鏡、内視鏡などの医療機器による画像データが10年で100倍もの勢いで膨れ上がっているという。放射線診断医(読影医)の仕事量は3倍増えたものの、人員は増えるどころか減少している。

この現状を危惧し、国立がん研究センターなどの医療機関とともに開発を進めているのが画像解析によるがん診断支援ソフトウエアだ。「マウスを用いた非臨床試験では、すでに2011年に99.6%の分類が可能になっています。現在、臨床データを活用した研究開発を実施していますが、医師同等もしくはそれ以上の精度の高い診断が現実味を帯びてきています。近い将来には保険適用レベルにしたいと考えています」と、AIによるがん判定で、医療の高水準化を加速させている。

エルピクセルが手がける領域は主力の医療分野から、製薬、農業などにも広がりを見せている。「アナログをテジタルへ、手作業を自動化し、人に代わってAIが検知することでチャンスロスを減らせる」と島原氏は説く。例えば農業では、ドローンを用いた農場管理で、病気の早期発見や雑草の自動除去、農作物別の画像解析の実現が可能だ。

また、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が主導するImPACT(革新的研究開発推進プログラム)において、「細胞の検索エンジン」の開発に向けたプロジェクトリーダーを担うなど、ライフサイエンス研究における画像解析のパイオニアとしての頭角を現す。

さらに画像解析スキル向上への教育活動での貢献も目覚ましい。2015年には全国約60の大学をアドビシステムズと共に回り、ライフサイエンス研究者約3,300人に対して画像処理方法についての講義を実施。「活動を通して見えてきたのは、9割の研究者が画像解析スキルの必要性を感じつつも、授業で学ぶ人はわずか3%しかいないという状況でした」。今秋にはeラーニング教材をリリース予定など、画像解析の裾野を広げ、研究の促進、効率化に尽力している。

研究室とも企業とも異なる職場スタイル

このように数ある東大発ベンチャーの中でも、着実に成長し続けるエルピクセル。現在、社員は12名、インターンなどの非常勤も合わせると24名。2016年6月にフロア面積を倍に拡張し、2017年度末には30名前後への増員を図る。

「同じスキルの人員を増やすのではなく、生物、医学、物理、薬学などの研究分野、画像処理の専門領域で何かしらとがっている人材を求めています。個々のとがった部分を発揮できるチームを編成し、興味のあるプロジェクトに取り組むスタイルです。

個別に研究することも可能で、行き詰まったときに多方面の専門家とコミュニケーションできる環境も整えています。従来の研究室とも企業とも違う、自由な雰囲気で、お酒を交えながらの活発なフリートークでアイデアが生まれることもあります。産学連携という堅いイメージが全くないのも、弊社の特徴といえます」と島原氏。

さらに事業を拡大し、今後はクラウドとAIを活用した自社開発・販売に重点を置いて、数年後には事業売上の9割を占めるようにしたいと抱負を語る。国内に限らず、世界をリードするパイオニアとして、エルピクセルの躍進は止まらない。

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