探そう、まだ見ぬ未来を。

人工知能の未来

IoT、ビッグデータ、人工知能の3つでマーケティングを極める

株式会社ABEJA

破壊的イノベーションを待ち続けるか、起こす側に回るか

株式会社ABEJA(アベジャ)が得意としているのは、インストアアナリティクスと呼ばれる領域だ。営業している店舗の来店者数や購買率などの店舗内データを、カメラを通じてリアルタイムで取得・解析。店舗ごとの課題を析出して、改善施策を提案するものである。ビッグデータをリアルタイムに解析できるのは、ABEJAの持つディープラーニング(深層学習/機械自体が自力で学習していくこと)テクノロジーが大きく寄与している。

「当社サービス『ABEJA Platform』は、インターネット回線さえあればすぐに導入でき、初期コストはゼロ。データ取得から施策の実施まで実現できるということで、コンビニエンスストアやアパレル、ドラッグストア、百貨店などで多く導入いただいています。しかし、私たちは既にもう一段階、先のビジネスを見始めていますよ」。そう語るのは、ABEJAの岡田陽介代表取締役CEOだ。

一店舗内の流通や導線の分析手法を磨いた先に見据えるのは、「街というインフラの最適化」だという。乗車率によって鉄道の運行車両数やダイヤがリアルタイムで変わる。街からは信号機が消え、時速100キロで自動運転の車が交差点を通過。ショッピングモールの品出しはすべてロボットが対応。需給バランスに応じてあらゆる商品の値段が1秒単位で切り替わる……。これらの世界は、技術的には決して不可能ではない段階まできており、5年先にはそんな風景が現実になると岡田氏は考えている。

「破壊的イノベーションが市場を席巻する時代が来るのを、ただ指をくわえて待つか、自ら起こす側に回るか。私たちは後者を選びます。テクノロジーベンチャーである以上、イノベーションを起こすことを目的の1つにしなくては意味がないし、面白くありませんから」

3つのテクノロジーを同時に追究し続ける

「今はIoTの時代です。インターネット上には既に情報があふれ、今後IoTが普及すれば、さらにデータ量は増え続ける。2020年までにはデータ量が現在の10倍以上にまでふくれあがるとも言われています。それだけ膨大なデータを人間が目視で確認し、作業することは非常に非効率的ですし、現実的ではありません。そこで人間をサポートするのが、人工知能です。ABEJAはIoT、ビッグデータ、人工知能の3つすべてのテクノロジーのベースを持っており、商用化・収益化にも成功しています」と岡田氏は自信をのぞかせる。

「IoTとビッグデータ」「ビッグデータと人工知能」といったように、3つのテクノロジーのうち2つを手がけている企業やサービスは多くあるものの、この3つを高次元で研究開発しているベンチャーは、日本国内だとABEJA以外にほぼ見当たらないという。

もちろん、これらのテクノロジーはインストアアナリティクス以外の領域にも転用可能だ。現在、情報処理段階で用いているディープラーニングは、遠からずトポロジカル・データ・アナリシス(TDA)というさらに優れた技術に取って代わられると、岡田氏は予想する。

「そうすれば今以上に大量のデータを、1万倍のスピードかつ1万分の1のコストで処理できるようになる。これは100年後の量子コンピューターの話ではなく、現在のコンピューターの形を維持したままでも十分に実現可能だと考えています。そうした時代のなかで、『自分たちはここまでやれた』という技術研究の爪痕を残せたらと思いますね」

日本と日本人の強みを生かして地球に貢献する

「社会問題の解決を目標にすることは、世界を変えること」。岡田氏のベンチャー哲学は、2012年に滞在したシリコンバレーで芽生えた。インターネット上ではGoogleやFacebookやバイドゥ(百度)に勝つことは難しいかもしれない。「それならば彼らが持っていないリアル空間のデータを扱おう」という着想から、流通小売業やメーカーのマーケティング、マネジメントに貢献するサービスが生まれたという。

「インターネットの世界で巨人に打ち勝つことを考えるより、日本が世界に勝てるところで勝負を仕掛ければいいのです。例えばIoTはプロダクト改善にたける日本人にぴったりですし、小売業のきめ細かく行き届いたサービスクオリティーも世界が認めるところ。日本でインストアアナリティクスの分野でトップを獲得できれば、自然と世界トップに立てるというのは明らかです。こうした日本のクオリティーを世界に発信することで、イノベーションを生み出していく余地はたくさんあるでしょう」

現在、ABEJAの社員数は30名に満たないものの、社員の国籍は7カ国に及ぶ。これは「イノベーションは常識を疑うところから始まる」という考えから、異文化を受け入れるダイバーシティが必要という観点で採用してきた結果だという。日本という国が持つ文化や考え方の特徴、そして強みを、こうしたさまざまな価値観に照らし合わせてみた結果、あるユニークなことに気づいたと岡田氏はいう。

「欧米諸国ではロボットは悪役として描かれることがほとんどですが、逆に日本でロボットは鉄腕アトムやドラえもんのように、人間を助けてくれる友達として愛される存在です。ロボットは利用するものではなく、共に生きていく存在。そんな発想が根付く日本だからこそ、優れたサービスや製品を、ABEJAから発信していきたいですね」

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